会社との間で処遇やハラスメント、その他の問題について、トラブルが発生した場合、どのように解決すればよいのでしょうか?
「会社相手にどうやって解決すればいいのかわからない…」
「揉めても何も解決できそうにない…」
「裁判になると時間もお金もかかりそう…」
などと考えて、結局、あきらめて退職を選ぶ人もいるでしょう。
会社との労働問題の解決について、従来は、労働組合の組合員になり、団体交渉の形で行われることが一般的でした。
しかし、労働組合の加入者の減少や意識の変化により、従業員が個別に会社と直接交渉するケースが増えています。
会社との労働問題・トラブルが生じたら、自分一人で思い悩まず、相談できるところを探しましょう。
会社との労働問題・トラブルの解決法
労働問題
職場でのトラブルは、解雇や雇い止め、配置転換、給与の引き下げ、セクハラ、パワハラなど、さまざまです。
当事者で問題を解決できなければ、社内に相談できる窓口があるか確認してみましょう。
相談窓口として設置されていなくても、人事や総務などがその役割をしている場合が多くあります。
社内での相談が難しい場合には、身近な社外の相談窓口を探してみましょう。
相談できるところ
- 社内の相談窓口
- 労働組合
- 都道府県労働局労働相談コーナー
- 弁護士 など
労働組合
労働組合は、労働者が主体となって、賃金や労働時間など労働条件の改善・向上を主な目的として組織された団体です。
労働組合に加入するかどうかは、原則として労働者の任意です。
日本では個別企業ごとにつくられる企業別労働組合が中心です。
それらの企業別組合が集まった産業別労働組合、産業別組合が集まった日本労働組合総連合会(連合)のような全国的中央組織があります。
また個人で加盟できる労働組合(ユニオン)もたくさんあります。
個人加盟の労働組合は、企業別労働組合では対応が難しい個別のトラブルの相談から解決まで幅広く対応しています。
団体交渉
労働組合が会社に対して要求を行う場が団体交渉です。
団体交渉で合意して、労働協約を結ぶと就業規則を上回る効力が生じます。
労働協約で合意した労働条件より労働契約の内容が下回った場合は、労働協約が優先されます。
団体交渉で要求が実現しなかった場合、労働組合はストライキなどの争議行為に訴えることができますが、実際には、団体交渉が決裂して、争議行為にまで発展するというようなことはあまり見られなくなっています。
会社がしてはならない不当労働行為
- 労働組合への加入、組合の結成、その他労働組合の正当な行為をしたことなどを理由に、その労働者を解雇したり、不利益な取り扱いをすること
- 労働組合に加入せず、または労働組合から脱退することを雇用条件とすること
- 正当な理由なく、団体交渉を拒否すること
- 労働組合の結成、運営に介入したり、労働組合に対して経理上の援助をすること
個別労働紛争
近年は労働組合の団体交渉によるものではなく、従業員と会社との直接交渉が増えています。
トラブルの解決手段としては、裁判がありますが、時間や費用がかかり、一般の従業員にとって、なかなか選択するのは難しい方法といえます。
そこで労働条件などに関する会社とのトラブルをスピーディに解決することを目的として、2001年に「個別労働紛争解決促進制度」が制定されました。
総合労働相談コーナー
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などに設置されている労働相談窓口です。
職場のトラブルに関する相談や解決のための情報提供を行っています。
解雇、雇い止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、ハラスメントなどのあらゆる分野の労働問題を対象として、専門の相談員が面談や電話で対応します。
会社とのトラブルを個別に解決したい、個別労働紛争制度を利用したい、という人は、まず相談窓口に連絡してみましょう。
都道府県労働局長による助言・指導
都道府県労働局が、個別労働紛争の当事者からの求めにより、紛争の問題点を指摘して、解決の方向性を示します。
助言・指導で解決しない場合は、あっせん制度に移行できます。
紛争調整委員会によるあっせん
労働問題の専門家で組織する紛争調整委員会が個別労働紛争当事者双方の主張を聞き、中立的立場から具体的な和解案をあっせんします。
裁判に比べて手続きが迅速です。
労働審判制度
労働審判制度とは、個々の従業員と会社との間に生じた労働関係のトラブルについて、地方裁判所の裁判官(労働審判官)と労働関係に関する専門家である審判員(労働審判員)で構成される労働審判委員会が中立的な立場から審理する制度です。
個別労働紛争をスピーディに解決するために導入され、この制度を利用する労働紛争が増えています。
労働審判委員会による調停が成立しない場合は、労働審判を結論として出します。
労働審判は原則3回以内で審理することになっていますので、裁判に比べて、時間や費用がかからずに済みます。
受諾
労働審判の内容に異議がない場合は、労働審判は裁判上の和解と同じ効力があり、紛争は解決します。
異議申立
労働審判の内容に不服がある場合は、告知を受けた日から2週間以内に、裁判所に異議申立を行い、訴訟に移行することができます。
労働基準監督署の調査
労働基準監督署には、従業員からの内部告発があったときなど、労働基準法の違法行為が疑われるときには事業所などを調査する権限があります。
調査の結果、法令違反が認められたときは是正勧告が出されます。
会社は是正期日までに改善のための必要な措置をとらなくてはなりません。
調査の例
- 就業規則、36協定
- 時間外労働や休日出勤の実態
- 割増賃金の支給、計算方法 など
定期監督
定期監督は、労働基準監督署が定期的な計画に基づいて実施するものです。
申告監督
申告監督は、社内外の従業員などからの告発や情報提供によって実施するものです。
勤務先の会社で労働条件などに問題があるということ判明しても、社内での解決が難しい場合、労働基準監督署に情報提供することは効果的な方法といえます。
近年は申告監督の調査が増加しています。
労働問題の専門家
会社とのトラブルを法的に解決したいのであれば、弁護士に相談することも選択肢のひとつです。
労働問題を扱う弁護士は全国にいますので、地域の相談窓口など身近に相談できるところへ連絡することをおすすめします。
法的解決の総合案内
国が設立した法的解決の総合案内所「法テラス」では、電話などによる無料相談を受け付けています。
利用者からの問い合わせ内容に応じて、法制度に関する情報と、相談機関・団体等(弁護士会、司法書士会、地方公共団体の相談窓口等)に関する情報を提供しています。
経済的に余裕のない人が法的トラブルにあったときには、無料で法律相談を行い、必要な場合は、費用の立替えをしています。
- トラブルを解決するための情報を知りたい人
- 無料の法律相談を受けたい人 など
まとめ
自分の能力を発揮して気持ちよく働き続けるために、会社とトラブルにならないことが一番であることは言うまでもありません。
それでも、トラブルが発生してしまっときに、泣き寝入りせずに交渉する方法があることを知っておくことは大切です。
労働組合がなかったり、労働組合に加入していなくても、個別に従業員が問題提起をすることはできるのです。



【参考】
・厚生労働省「個別労働紛争解決制度」
・各組織・団体ウェブサイト