ガス業界の事業は、電気事業とともに公共事業として守られてきました。
企業間競争はなく、安定した事業でしたが、ガス小売り自由化により業界構造が変化すると予想されています。
就活・転職で押さえておきたいガス業界の概要と動向についてご紹介します。
ガス業とは
ガス業とは、一般の需要に応じて、導管によりガスを供給する事業、一定数量以上の需要に応じて、導管によりガスの供給を行う事業、自らが維持し運用する一定規模以上の導管でガスの供給を行う事業のことです。
ガス事業では燃料ガスをガス導管を通じて供給しています。
液化天然ガス(LNG)の都市ガスと液化石油ガス(LPG)のLPガスがあります。
都市ガスは電気事業と同様に地域独占が認められてきましたが、電力小売り自由化に続き、小売り自由化が始まっています。
日本のエネルギー産業において、電気事業とガス事業は公益事業として安定供給を目指すため規制に守られてきましたが、その事業のあり方は、規制緩和、市場自由化の流れで大きく変化しています。
【ガス業】
- ガス会社
- ガス製造工場
- ガス供給所
(参考:総務省「日本標準産業分類」)
ガス会社
都市ガスは2017年から小売りが自由化され、新規参入が続いています。
新規参入はほぼ電力会社(旧一般電気事業者)で、サービスの差別化競争が激化しています。
ガス会社の多くも電気事業に参入しています。
東京ガス
東京都市部、関東圏の都市部を中心に都市ガスを供給しています。
また東北電力との合弁会社ジナジアパワーを通じて関東圏の大口需要家に電気を供給しています。
脱炭素化の技術開発などが進められています。
- 創立:1885年10月1日
- 本社:東京都
- 従業員数:16,697人
- 平均年齢:43歳
大阪ガス
大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山、三重に都市ガスを供給しています。
小売り全面自由化によって、関西電力との競争は激しさを増しています。
海外展開や多角化も進めています。
- 設立:1897年4月10日
- 本社:大阪府
- 従業員数:20,961人
- 平均年齢:44歳
東邦ガス
名古屋市を中心に愛知県、岐阜県、三重県を供給区域としています。
需要はトヨタ自動車をはじめとする工業用が圧倒的に多く、中部地方の産業を支えています。
- 設立:1922年6月26日
- 本社:愛知県
- 従業員数:6,180人
- 平均年齢:42歳
北海道ガス
北海道札幌市を中心に都市部を供給区域としています。
電気事業にも参入し、切り替えを増やしています。
- 設立:1911年7月12日
- 本社:北海道
- 従業員数:894人
京葉ガス
千葉県西部を供給区域として、首都圏では東京ガスに次ぐガス会社です。
総合エネルギー事業者を目指しています。
- 設立:1927年1月8日
- 本社:千葉県
- 従業員数:770人
大多喜ガス
K&Oエナジーグループ傘下のガス会社です。
関東天然瓦斯開発と経営統合し、千葉県下に安く都市ガスを提供しています。
- 設立:1956年8月13日
- 本社:千葉県
- 従業員数:274人
静岡ガス
静岡県の中東部、静岡市、富士市、富士宮市、沼津市、三島市などを供給区域としています。
電気事業にも参入し、拡大を目指しています。
- 設立:1910年4月16日
- 本社:静岡県
- 従業員数:1,443人
サーラエナジー
中部瓦斯とガステックサービスが合併。
愛知県と静岡県を拠点としています。
- 設立:1943年9月1日
- 本社:愛知県
- 従業員数:1,093人
広島ガス
広島市を中心に県内を供給区域とする都市ガス会社です。
中国地方では最初のガス事業者として、地域に密着した事業を行っています。
- 創立:1909年10月30日
- 本社:広島県
- 従業員数:681人
西部ガスホールディングス
福岡県、長崎県、熊本県に都市ガスを供給しています。
今後は電気事業の拡大も目指しています。
- 設立:1930年12月1日
- 本社:福岡県
- 従業員数:3,799人
- 平均年齢:42歳
LPガス会社
都市ガスは供給区域が限られていて、区域外ではLPガスが供給されています。
家庭用はプロパンが主体です。
LPガス事業の小売りには小規模事業者を中心に多くの販売店があります。
日本瓦斯
家庭用・業務用・工業用・農業用・自動車用のLPガス、都市ガスを供給しています。
- 設立:1955年7月29日
- 本社:東京都
- 従業員数:1,775人
ガス業の売上高
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | 東京瓦斯 | 2,145,197 |
2 | 大阪瓦斯 | 1,586,879 |
3 | 東邦瓦斯 | 515,313 |
4 | 西部ガスホールでイングス | 215,273 |
5 | 日本瓦斯 | 162,552 |
6 | 静岡ガス | 132,988 |
7 | 北海道瓦斯 | 126,957 |
8 | 京葉瓦斯 | 89,711 |
9 | 広島ガス | 76,802 |
10 | サーラエナジー | 73,111 |
11 | 北陸瓦斯 | 52,356 |
12 | 大多喜ガス | 51,098 |
13 | 東彩ガス | 39,014 |
14 | 武州瓦斯 | 34,560 |
15 | 四国ガス | 33,245 |
16 | 東部瓦斯 | 27,358 |
17 | 岡山ガス | 19,197 |
18 | 日本海ガス | 18,873 |
19 | 東海ガス | 15,114 |
20 | 長野都市ガス | 14,883 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
ガス業界の採用市場
各地域の大手ガス会社の就職は人気があります。
定期的に実施する新卒採用と異なり、中途採用は人員が不足したり、事業拡大をするタイミングで、即戦力が求められます。
自由化の販売競争が本格化し、専門性の高い営業職に活躍の場が広がっています。
ガス業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 40.6歳 (平均) |
所定内労働時間 | 157時間 | 155時間 | 155時間 |
残業 | 11時間 | 16時間 | 12時間 |
月収 | 242,800円 | 316,300円 | 413,000円 |
年間賞与等 | 732,700円 | 1,220,500円 | 1,721,200円 |
年収 | 3,646,300円 | 5,016,100円 | 6,677,200円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
まとめ
脱炭素化の取り組みや人口減少などエネルギー産業の将来には多くの課題があります。
都市ガス事業は比較的安定していますが、発電用需要の減少が懸念材料となっています。
【参考】
・資源エネルギー庁ウェブサイト
・一般社団法人日本ガス協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』