土木業界は社会資本を整備し、経済成長を支える重要な役割を担っています。
今後は、国土強靭化対策やインフラ設備の老朽化にともなう維持修繕工事で、安全・環境・維持管理などの大きな役割が期待されています。
転職・就職で押さえておきたい土木業界の動向、採用市場をご紹介します。
土木業界の最新動向(2024年)
土木業界
土木業は、土木工作物の完成を請け負ったり、自社で企画・指導・調整して建設します。
土木工事には、河川・海岸・治山施設工事、ダム工事、港湾施設工事、埋立工事、鉄道施設工事、地下鉄・地下工作物工事、橋梁工事、上下水道工事、道路工事などがあります。
土木業界は都市計画・防災・環境、電力・通信インフラ、高速道路、トンネルなどインフラ整備の多くを担い、経済成長を支えてきました。
公共工事の減少が震災復興や五輪関連の需要で状況は一変し、大型工事が増えました。
五輪の後も老朽インフラ更新やリニア中央新幹線、再開発など土木需要は続く見込みです。
公共事業の流れ
- 基本計画:構想・企画、各種調査
- 評価:費用対効果の分析、投資効果の検討
- 調査・設計:現況測量、地質調査、実施設計
- 用地取得:用地取得交渉、補償調査
- 積算:予定価格、入札金額の決定
- 工事施工・供用・保守管理:契約、施工管理、竣工検査、供用開始
ゼネコン
ゼネコン(総合建設会社)が手掛ける工事は土木、建築に大別されます。
日本の建設大手5社は「スーパーゼネコン」と呼ばれます。
首都圏を中心に高層ビル新築やインフラ改修需要が拡大していますが、建設技術者の不足が課題になっています。
海洋土木
建設会社のなかで、海洋土木工事を中心に行う会社のことをマリコン(マリンコンストラクター)といいます。
海洋土木には、港湾施設の建設、護岸・海底工事、浚渫・埋立、橋梁の建設、海上空港、海底トンネルの建設などがあります。
五洋建設
マリコン首位。
海外事業にも力を入れています。
- 設立:1950年4月28日
- 本社:東京都
- 売上高:5,022億円
- 従業員数:3,767人
- 平均年齢:42歳
東亜建設工業
マリコン大手。
東南アジアに積極展開しています。
- 設立:1920年1月23日
- 本社:東京都
- 売上高:2,135億円
- 従業員数:1,877人
- 平均年齢:45歳
東洋建設
マリコン大手。
東南アジアに強みがあります。
- 創立:1929年7月3日
- 本社:東京都
- 売上高:1,683億円
- 従業員数:1,603人
- 平均年齢:43歳
若築建設
マリコン中堅。
陸上土木も展開しています。
- 創立:1890年5月23日
- 本社:東京都
- 売上高:840億円
- 従業員数:850人
- 平均年齢:45歳
道路舗装
道路事業は10~20年後の交通量を予測し、それに見合った道路網の計画から始まります。
道路舗装にはアスファルト舗装とコンクリート舗装がありますが、現在は95%以上がアスファルト舗装です。
NIPPO
道路舗装最大手。
ENEOSホールディングス傘下の建設土木会社です。
- 設立:1934年2月2日
- 本社:東京都
- 売上高:4,375億円
- 従業員数:2,031人
前田道路
道路舗装大手。
前田建設系の道路舗装会社です。
- 創立:1930年7月19日
- 本社:東京都
- 売上高:2,288億円
- 従業員数:2,233人
- 平均年齢:41歳
日本道路
道路舗装大手。
清水建設系の道路舗装会社です。
- 設立:1929年3月10日
- 本社:東京都
- 売上高:1,553億円
- 従業員数:2,349人
- 平均年齢:42歳
鉄道工事
日本の新幹線開業を契機に鉄道輸送の効率の良さが世界でも評価されています。
鉄建
JR東日本が筆頭株主の建設会社。
鉄道周辺の土木建築、道路に強みがあります。
- 設立:1944年2月1日
- 本社:東京都
- 売上高:1,607億円
- 従業員数:1,963人
- 平均年齢:41歳
東鉄工業
JR東日本グループの建設会社。
鉄道関連のメンテナンス工事に強みがあります。
- 設立:1943年7月7日
- 本社:と
- 売上高:1,246億円
- 従業員数:1,883人
- 平均年齢:41歳
基礎工事
建造物の基礎をつくるための工事です。
特殊土木
- ライト工業:基礎・地盤改良など特殊土木専業
- 日特建設:ダムの基礎工事に実績
- 不動テトラ:地盤改良に強み
土木業界の採用市場
土木業界の技術者
公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者は「経営事項審査」を必ず受けなければなりません。
「経営事項審査」では技術力として、有資格者数が評価されます。
建設業者は受注に有利な資格取得を社員に奨励しています。
土木施工管理技士
土木施工管理技士は、土木工事において主任技術者、監理技術者として設計や施工計画などを作成して、工程管理や安全管理など現場を監督します。
建築施工管理技士
建築施工管理技士は、鉄筋工事や大工工事など建築工事の施工を計画を作成して、現場での工程管理や品質管理、安全管理などを指導監督します。
建設機械施工技士
建設機械施工技士は、各種建設機械を用いた施工において、運転・施工の業務、指導・監督的業務を行います。
技術士
技術士は、科学技術に関する高い専門的応用能力を必要とする業務を行います。
建設、上下水道、衛生工学、機械、農業、化学、生物、経営などの部門があります。
測量士
測量士は土木工事などを行うにあたって測量業務を行う技術者です。
資格がなければ測量業務を行うことはできません。
土木業界の求人・転職
土木業界では、人手不足の深刻化から生産性向上の取り組みや長時間労働の是正が始まっています。
業界全体として人材不足感は非常に高く、土木技術者の求人ニーズは引き続き高い水準です。
土木系の技能・技術には多くの資格と検定があります。
専門性やキャリアの方向性に応じてスキルアップしていくことをおすすめします。
建設業(総合工事)の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 46.2歳 (平均) |
所定内労働時間 | 169時間 | 168時間 | 169時間 |
残業 | 17時間 | 21時間 | 11時間 |
月収 | 267,100円 | 323,600円 | 381,700円 |
年間賞与等 | 424,900円 | 961,100円 | 1,126,500円 |
年収 | 3,630,100円 | 4,844,300円 | 5,706,900円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
土木業界の転職活動
エージェントサービスを利用すると、業界や職種に精通したコンサルタントのサポートを受けることができます。
非公開・独自案件の求人紹介だけでなく、書類作成や面接対策のアドバイスなどで選考通過率のアップが期待できます。
- キャリアの可能性を広げるコンサルティング
- 専門性の高いコンサルタント
- 企業との調整・交渉の代行 など
まとめ
土木業界では、人手不足が深刻化するなか、人材の確保や定着が課題になっています。
業界では週休2日制を導入する動きが広がるなど、働きやすい職場環境や待遇改善に取り組み、イメージアップを推進しています。
【参考】
・総務省ウェブサイト
・国土交通省ウェブサイト
・一般社団法人日本建設業連合会
・各企業公式サイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』