管理部門の中途採用では、基本的に資格の有無より経験・スキルが重視されます。
それでも実務経験とセットで有利になる資格があります。
特に未経験・キャリアチェンジの転職では力を発揮します。
管理部門で評価される資格をご紹介します。
管理部門で役立つ資格
日商簿記検定
日商簿記検定は経営管理に役立つ知識として、企業が応募者に最も求める資格のひとつです。
業種や規模を問わず必要な知識として、簿記検定合格者に対するニーズは根強く安定しています。
1級・2級・3級のほかに、入門レベルとして簿記初級・原価計算初級が設定されています。
キャリアでの活かし方
- 企業の経理・会計部門の就職・転職
- 利益率を重視する営業職としての就職・転職
- コスト管理を求められる管理職候補
- 取引先企業の経営状態を把握する幹部候補
1級
極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析ができるレベルです。
公認会計士、税理士など国家資格への登竜門で、合格すると税理士試験の受験資格が得られます。
2級
高度な商業簿記・工業簿記(初歩的な原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ、適切な処理や分析を行うために求められるレベルです。
経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つです。
企業の財務担当者には必須といえます。
3級
基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベルです。
業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身につけておくべき基本知識として、企業から評価される資格です。
受験資格
制限なし
試験日
- 統一試験:【1~3級】6月、11月【2・3級】翌年2月
- ネット試験:随時
試験地
- 統一試験:全国の商工会議所が指定する会場
- ネット試験:希望する試験センター
試験内容
- 1級:商業簿記・会計学、工業簿記・原価計算
- 2級:商業簿記、工業簿記
- 3級:商業簿記
合格率
- 1級:10%程度
- 2級:20~30%程度
- 3級:35%程度
合格基準
各級とも70%以上の得点率(1級はかつ各科目40%以上)
問い合わせ
日本商工会議所・各地商工会議所
転職・就職情報
実務に直結するので、日商簿記検定は企業、応募者ともに人気が高い資格です。
転職・就職に役立てたいのであれば3級以上、キャリアアップには2級以上の取得をおすすめします。
より実践的に武器にしたいのであれば、1級まで取得するとさらに有利。
実社会で幅広く応用することができます。
20代のビジネスパーソンであれば、日々の仕事で多かれ少なかれ必要性を感じる知識といえます。
希望のキャリアをサポートする最も確度の高いツールになるでしょう。
日商簿記3級のテキスト&問題集
TOEIC(R) L&Rテスト
TOEIC(R)L&Rテストは、英語で聞く・読む能力を測定する世界共通の判定試験です。
グローバル化が進み、ビジネス英語が求められるのは、外資系企業や世界中に拠点を持つグローバル企業だけではなくなりました。
業種・職種を問わず、採用などの基準として参考にする企業が多くなっています。
受験資格
制限なし
試験日
毎月1回(午前と午後の2回)
※10月は月2回実施
試験地
全国のエリアごとの試験会場
試験内容
マークシート方式
- リスニングセッション:約45分・100問
・写真描写問題
・応用問題
・会話問題
・説明文問題 - リーディングセッション:75分間・200問
・短文穴埋め問題
・長文穴埋め問題
・1つの文書/複数の文書
スコアのレベル
- 860以上
Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる - 730~860未満
どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている - 470~730未満
日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる - 220~470未満
通常会話で最低限のコミュニケーションができる - 220未満
コミュニケーションができるレベルに至っていない
企業が期待するスコア例
- 新入社員:450~650以上
- 中途採用:585~795以上
- 技術部門:480~720以上
- 営業部門:525~775以上
- 国際部門:655~865以上
問い合わせ
一般社団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
転職・就職情報
今の仕事では英語を使う場面がなかったとしても、転職活動では、企業が期待するTOEICスコアを保有していることがアピール材料のひとつになります。
まずは自分のスコアを確認してTOEICテスト対策をしていくことが必要です。
TOEICテストの公式問題集
MBA
Master of Business Administrationの略。
日本では経営学修士と呼ばれ、経営学の大学院修士課程を修了すると授与される学位(資格ではない)です。
かつてMBAといえば、ビジネス界最強のイメージがありましたが、就職・転職の場面での価値は外資系と日本企業で異なります。
キャリアでの活かし方
- 外資系企業の就職・転職
- コンサルティング会社の就職・転職
- 日本企業の経営部門の管理職・幹部候補
- キャリアチェンジ・キャリアアップ
ビジネススクール受験資格
基本的には大学卒業。
欧米には実務経験を有する社会人を対象としたビジネススクールも多数あります。
試験内容
一般的に入学までに大学の成績証明書、TOEFLやGMATのスコア、エッセイ、推薦状、面接などの審査があります。
合格率
全体としては10~15%程度
準備期間
ビジネススクールの難易度や英語力などで大きく違いますが、入学月の1年~1年半前に準備を始めるのが一般的になっています。
国内のビジネススクール
国内でも多くの大学がMBAコースを開講し、ビジネススクールもあります。
海外ビジネススクールより語学や金銭的な負担が少なく、多くの人が学んでいます。
転職・就職情報
MBA取得者を活用する環境がある外資系企業への就職・転職が有利です。
日本企業では一定のアピール力はあるものの、期待するほど重視されるわけではないといえるでしょう。
海外の企業に就職するという選択もあります。
取得に時間も費用もかかるMBA。
目指すには自分のキャリアにどう活かせるか、キャリアアップにつながるか見極めることが大切です。
名門といわれるビジネススクールでは、人脈も卒業後のビジネスに役立つといわれます。
社会保険労務士
社会保険労務士は企業経営に必要な要素のうち「人」に関する事務や管理を行うための資格です。
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の手続きや賃金体系、就業規則の規定、労務管理などの業務があります。
キャリアでの活かし方
- 企業の人事・総務など管理部門の就職・転職
- 金融機関の就職・転職
受験資格
- 大学卒業、又は大学において62単位以上を修得済み
- 短期大学、高等専門学校卒業
- 修業年限が2年以上、かつ総授業時間数が1,700時間以上の専修学校の専門課程修了
- 定められた国家試験合格者や条件を満たす有資格者
- 社労士や弁護士業務の事務に従事した期間3年以上
試験日
年1回(8月)
試験地
北海道、宮城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、福岡、熊本、沖縄
試験内容
- 労働基準法および労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
合格率
8%程度
問い合わせ
全国社会保険労務士会連合会 試験センター
転職・就職情報
仕事の中身が会社の仕組みに直結するものなので、人事・総務、管理部門経験者のキャリアアップに向いているといえます。
ファイナンシャル・プランナー資格などを併せ持ち、金融機関で年金・資産運用に関するコンサルティングに活用することもできます。
社会保険労務士のおすすめテキスト
ビジネス実務法務検定試験
ビジネス実務法務検定は、企業からニーズの高い、リスク管理、コンプライアンスのための法律知識を身につけることができる公的資格です。
法務部門に限らず、管理部門に配属されるビジネスパーソンにとって必須の法律スキルといえます。
キャリアでの活かし方
- 企業の知財・法務部門
- 契約や取引を行う営業職
- 雇用管理に携わる人事・総務部門
各級のレベル
- 1級
法務部門に携わる人(実務的対応能力としてのアッパーレベルを想定) - 2級
社会人全般および学生(知識レベルとしてのアッパーレベルを想定) - 3級
社会人全般および学生(ビジネスパーソンとして最低限知っているべき法律実務基礎知識を想定)
受験資格
- 1級:2級合格者
- 2・3級:制限なし
試験日
- 1級:12月
- 2・3級:7月、10月~11月
試験地
- 1級:CBT方式(各地のテストセンター)
- 2・3級:CBT方式・IBT方式
試験内容
- 1級
・共通問題:民法・商法と中心とする法律実務問題
・選択問題:特定の業種に関連する法律実務問題 - 2級
・企業取引の法務
・債権の管理と回収
・企業財産の管理・活用と法務
・企業活動に関する法規制
・株式会社の組織と運営
・企業と従業員の関係
・紛争の解決方法
・国際法務(渉外法務) - 3級
・ビジネス実務法務の法体系
・企業取引の法務
・債権の管理と回収
・企業財産の管理と法律
・企業活動に関する法規制
・企業と会社のしくみ
・企業と従業員の関係
・ビジネスに関連する家族法
合格率
- 1級:10%程度
- 2級:35%
- 3級:50%程度
問い合わせ
東京商工会議所 検定センター
転職・就職情報
企業の法令遵守(コンプライアンス)の必要性が重要視されるようになり、法務関係の資格でも一般社員向けのものとして注目されています。
法務部門への転職・就職や異動を希望する人は1級にチャレンジすることをおすすめします。
ビジネス実務法務検定の公式テキスト
個人情報保護士
個人情報保護士は、企業内の個人情報保護に関するスタンダード資格です。
「個人情報保護士認定試験」に合格すると認定を受けることができます。
受験資格
制限なし
試験日
3月、6月、9月、12月
試験地
札幌、仙台、東京、横浜、埼玉、千葉、名古屋、津、大阪、神戸、福岡
試験内容
マークシート方式
- 課題Ⅰ:個人情報保護の総論
- 課題Ⅱ:個人情報保護の対策と情報セキュリティ
合格基準
課題Ⅰ、課題Ⅱの正答率各70%以上
問い合わせ
一般財団法人 全日本情報学習振興協会
転職・就職情報
ほぼすべての企業に個人情報保護法が適用されることとなり、管理部門はもちろん、個人情報を扱うあらゆる職種で役立つ資格といえます。
個人情報保護士の公式テキスト
まとめ
管理部門の転職で有利になる資格は、なかなかの難関ですが、経営やビジネスに欠かせない要素を含んでいますので、勉強して損になることはありません。
自分のキャリアの方向性に合うものを選んで、確実にキャリアアップを目指すのがおすすめです。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・ハローワークインターネットサービス
・各試験実施機関ウェブサイト