観光ガイドの資格には、訪日外国人観光客を案内する通訳ガイドと国内外のツアーに同行して旅行の案内をする添乗員があります。
専門のガイドによる情報や説明など提供するサービスは、旅行の満足度に大きく影響します。
観光ガイドには、名所を案内するだけでなく、日本の歴史や地理、文化まで深く理解していることが求められます。
観光ガイドの資格についてご紹介します。
通訳案内士の資格
全国通訳案内士とは
全国通訳案内士とは、通訳案内士法において「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする」と定義されています。
高い語学力や日本の歴史・地理・文化など観光に関する高い知識を持ち、全国通訳案内士の国家試験に合格した人です。
単に語学力が優秀なだけでなく、幅広い知識、教養をベースに日本を紹介するという重要な役割を担っています。
対象言語は英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語など10ヵ国です。
通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を持たない人でも有償で通訳案内業務を行えるなど、通訳案内士制度は大きく変わりました。
資格を持っていなくても有償で通訳案内業務を行うことができるようになりましたが、その場合、「全国通訳案内士」またはこれに類似する名称を使用することはできません。
全国通訳案内士の国家試験に合格して、都道府県の登録を受けた人のみが「全国通訳案内士」の名称を使用することができます。
①全国通訳案内士試験に合格
全国通訳案内士の国家資格を取得するには、全国通訳案内士の国家試験に合格して、都道府県に登録したうえで、全国通訳案内士の登録証を取得する必要があります。
②新人研修に参加
全国通訳案内士の国家試験に合格してからのガイド実務に向けたスキルアップを図るために、全国の通訳案内士団体などが研修を実施しています。
学んだことをすぐにアウトプットする機会が多くあり、ガイドとしての実践力を身に着けることができます。
③旅行会社や通訳派遣会社に登録
専業の全国通訳案内士は旅行会社や派遣会社に登録して、フリーランスとして働くのが一般的になっています。
外国人観光客と全国通訳案内士をマッチングするサービスも登場しています。
④活動スタート
コロナ禍が落ち着いて、また外国人観光客が戻ってくると、全国通訳案内士の仕事も増えることが期待されています。
全国通訳案内士試験
全国通訳案内士の国家試験は、通訳案内士として必要な知識および能力を判定することを目的として毎年1回実施されています。
受験資格
制限なし
試験日
- 筆記試験:8月
- 口述試験:12月
試験内容
- 筆記試験
①外国語
②日本地理
③日本歴史
④産業、経済、政治および文化に関する一般常識
⑤通訳案内の実務 - 口述試験
・通訳案内の実務
試験免除
条件に該当すれば、筆記試験の一部または全部の免除を申請することができます。
詳しくは全国通訳案内士試験ガイドラインをご確認ください。
合格率(2021年度)
言語 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
英語 | 2,955 | 251 | 8.5 |
フランス語 | 134 | 25 | 18.7 |
スペイン語 | 117 | 13 | 11.1 |
ドイツ語 | 34 | 6 | 17.6 |
中国語 | 343 | 25 | 7.3 |
イタリア語 | 56 | 5 | 8.9 |
ポルトガル語 | 25 | 3 | 12.0 |
ロシア語 | 56 | 3 | 5.4 |
韓国語 | 103 | 15 | 14.6 |
タイ語 | 11 | 1 | 9.1 |
計 | 3,834 | 347 | 9.1 |
(日本政府観光局より)
通訳案内研修
全国通訳案内士には、通訳案内士が実務において求められる知識について、5年ごとに登録機関が行う定期的な研修(登録研修機関研修)を受講することが義務づけらています。
研修を受講しない場合、登録を取り消される場合があり、取り消されると取り消しから2年間は再登録することができません。
問い合わせ
独立行政法人 国際観光振興機構「通称:日本政府観光局(JNTO)」
全国通訳案内士試験のテキスト
地域通訳案内士
地域通訳案内士は、特定の地域内において、報酬を得て、通訳案内を行うための資格です。
地域通訳案内士には、特定の地域において、その固有の歴史・地理・文化などの現地情報に精通していることが求められます。
各自治体が行う研修受講を通じて、「地域通訳案内士」として登録することができます。
募集時期や方法などは各自治体によって異なります。
地域通訳案内士の導入地域
地域通訳案内士は40地域に導入され、育成人数は3,582人となっています。
(2021年4月現在)
添乗員の資格
添乗員とは
添乗員は、旅行会社が企画や手配したツアーに同行して、ツアーを安全でスムーズな運行をすることが役割です。
ツアーコンダクターとも呼ばれますが、各旅行会社によって呼び方は異なります。
主催旅行に加え、新企画旅行(募集型・受注型)の主任添乗員には旅程管理主任者の資格取得が義務づけられています。
旅行会社に入社して添乗員として仕事をするケースと、添乗員派遣会社から旅行会社へ出向いて仕事をするケースがあります。
添乗員の資格
- 国内旅程管理主任者(国内のみ添乗できる)
- 総合旅程管理主任者(国内、海外両方に添乗できる)
添乗員の資格取得
- 国土交通大臣の登録を受けた機関が実施する旅程管理研修の修了者(合格者)であること
- 一定の添乗実務を経験していること
旅程管理主任者の資格取得
添乗員として働くためには、資格を取得する必要があります。
添乗員資格を取得するためには、日本添乗サービス協会や観光庁の登録機関として旅程管理研修を実施している派遣会社などの研修を修了し、添乗実務を経験することが条件となります。
基礎添乗研修
添乗員派遣会社に所属する専門添乗員を対象とする研修で、添乗員の仕事や役割り、責任、観光地理などを学びます。
旅程管理実務研修
旅程管理研修を修了後、実務を経験して初めて旅程管理主任者資格が取得できます。
実務の経験は、旅程管理研修の課程を修了した日の前後1年以内に1回以上、又は研修を修了した日から3年以内に2回以上と法律で定められています。
総合資格コースの受講者は、海外旅行の実務経験が必須となっています。
受講内容
- 国内旅程管理研修:旅行業法・約款、国内添乗実務
- 総合旅程管理研修:旅行業法・約款、国内添乗実務、海外添乗実務・添乗英語
添乗実務
実務経験とは、企画旅行の補助添乗、旅程管理業務を行う主任者によって引率された研修または手配旅行添乗を指します。
実務経験は所属会社が実施するツアーに参加して、実務研修を受けるのが一般的です。
実際のツアーと同じ流れで現場で必要とされる実務を身につけます。
まとめ
これから観光ガイドとして活躍するには、知識や語学力だけでなく、得意分野や強みを磨いていくことが必要になるでしょう。
そして何より観光ガイドに欠かせない資質としてホスピタリティが重視されます。


