みなし労働時間制とは

キーワード解説

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、実労働時間にかかわらず、一定時間の労働をしたものとしてみなす制度です。

労働基準法は、事業場外労働の「事業場外労働のみなし労働時間制」と裁量労働の「専門業務型裁量労働制」、「企画業務型裁量労働制」について、みなし労働時間制を定めています。

事業場外労働のみなし労働時間制

「事業場外労働のみなし労働時間制」は、事業場外(会社の外)で業務に従事し、その労働時間を算定することが難しい場合に、一定の時間の労働を行ったとみなす制度です。

労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事したこと、その労働時間の算定が難しいことを要件として適用されます。

「事業場外労働のみなし労働時間制」は、事業場外で業務をすることが多く、労働時間の算定が困難として、営業職などに適用されています。

しかし、営業職であっても、1日社内で仕事をした日などは、労働時間の管理ができますから、適用の対象となりません。

「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用されると、実労働時間にかかわらず、原則として、所定労働時間働いたものとみなされます。

業務を遂行するために、所定労働時間を超えて業務を行うことが必要な場合、その業務の遂行に「通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。

「通常必要とされる時間」を決めるには労使協定の締結が必要です。

「通常必要とされる時間」が法定労働時間を超える場合は、労使協定を労働基準監督署に届け出て、割増賃金を支払う必要があります。

  1. 原則として、所定労働時間労働したものとみなす
  2. 所定労働時間を超えて業務を行うことが必要な場合は、「通常必要とされる時間」労働したものとみなす
  3. 法定労働時間を超える場合は、労使協定で定めた時間労働したものとみなす

事業場外で働いていたとしても、労働時間の管理が可能な場合は、対象になりません。

  • 労働時間の管理ができる上司などが同行している場合
  • 携帯電話などで随時上司などの指示を受ける場合
  • 訪問先、帰社時刻等、具体的な指示があり、指示通りに業務をする場合

裁量労働制

「裁量労働制」は、実際に働いた時間数にかかわらず、労使協定などで定めた一定の時間の労働を行ったとみなす制度です。

労働基準法に定める裁量性の高いとされる業務に従事する社員の労働時間について、労働の「量」ではなく、労働の「質」に応じた処遇を可能とする制度として定められたものです。

例えば、みなし労働時間を8時間と決めた場合、1日6時間働いても、10時間働いても、8時間働いたものとみなされます。

8時間を超えて働いても時間外労働とはなりませんが、8時間に満たなくても8時間働いたものとみなされます。

「裁量労働制」は、労働時間を一定の時間にみなす制度ですが、労働基準法の原則から除外されるわけではありません。

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、超える部分について割増賃金の支払いが必要となります。

休日出勤や深夜労働についても割増賃金の対象となります。

「裁量労働制」は、業務の進め方や時間配分について、本人の裁量に委ねる必要があり、具体的に指示をすることが難しい業務を対象としています。

裁量労働制の種類

裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があります。

「専門業務型裁量労働制」は、専門業務に従事する従業員を対象としたもので、「企画業務型裁量労働制」は、企画・立案などを行う従業員を対象としたものです。

  • 専門業務型裁量労働制の対象となる業務
    1.新商品または新技術の研究開発の業務、人文科学または自然科学に関する研究の業務
    2.情報処理システムの分析または設計の業務
    3.新聞または出版の事業における記事の取材または編集の業務、放送番組の制作のための取材または編集の業務
    4.衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
    5.放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
    6.広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務
    7.事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握またはそれを活用するための方法に関する考案もしくは助言の業務
    8.建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現または助言の業務
    9.ゲーム用ソフトウエアの創作の業務
    10.有価証券市場における相場等の動向または有価証券の価値等の分析、評価またはこれに基づく投資に関する助言の業務
    11.金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
    12.学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
    13.公認会計士の業務
    14.弁護士の業務
    15.建築士の業務
    16.不動産鑑定士の業務
    17.弁理士の業務
    18.税理士の業務
    19.中小企業診断士の業務
  • 企画業務型裁量労働制の対象となる業務
    ・事業運営の企画、立案、調査および分析の業務
    ・業務遂行の手段や時間配分などに関して具体的な指示をしない業務
    ・本社・本店または本社・本店の具体的な指示を受けずに、事業計画の決定を行っている支社・支店等の業務

日常的に具体的な指示がある業務やあらかじめ業務の遂行方法について詳細な手順の指示がある業務は対象にならないとされています。

企画業務型裁量労働制は、対象業務を適切に遂行する知識や経験のある従業員が対象となります。

  • 対象業務に常時従事していること
  • 業務を適切に遂行するための知識があること
  • 少なくとも3年から5年程度の経験があること

参考:厚生労働省「労働時間・休日」

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みなし労働時間制には、事業場外労働に関するものと裁量労働に関するものがある