キーワード解説
変形労働時間制
変形労働時間制とは、単位となる期間内において、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて、変則的に労働時間を決めることができる制度のことです。
業務の繁閑の差が大きく、法定労働時間の原則が合わない事業など、多様な就業形態に対応するために創設された制度です。
単位となる期間内において、所定労働時間を平均して、週の法定労働時間(40時間)を超えなければ、期間内の一部の週あるいは日について、法定労働時間を超える所定労働時間を設定することができます。
つまり一定期間の1週間あたり平均労働時間が40時間以内であれば、1日の労働時間が8時間を超える日があっても違法にはならず、割増賃金の支払い義務もありません。
繁忙期には所定労働時間を長く設定して、閑散期には所定労働時間を短く設定することで、労働時間や残業を少なくして、効率的な働き方ができるようになります。
変形労働時間制には「1年単位の変形労働時間制」、「1ヵ月単位の変形労働時間制」、「1週間単位の非定型的変形労働時間制」の3種類があります。
フレックスタイム制も入れて4種類とする考え方もあります。
「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は、従業員が30人未満の小売業、旅館業、料理店、飲食店のみが対象となっています。
1年単位の変形労働時間制
対象となる期間(1ヵ月を超え1年以内)の一定期間において、1週あたりの平均労働時間を40時間以内になるように設定すれば、特定の週や日については所定労働時間が法定労働時間を超えても、時間外労働とはなりません。
対象期間は1ヵ月を超えて1年以内であれば、3ヵ月、6ヵ月とすることもできます。
「1年単位の変形労働時間制」は、年間を通じて特定の時季に繁閑の差が大きい業種に適しています。
夏季が繁忙期であれば所定労働時間を増やしたり、冬季の閑散期には所定労働時間を減らし週休3日にするなどによって、無駄のない労働時間の設定が可能となります。
特定の事業所や職種に限定して、適用することもできます。
1ヵ月単位の変形労働時間制
対象となる期間(1ヵ月以内)の一定期間において、1週あたりの平均労働時間を40時間以内になるように設定すれば、特定の週や日について所定労働時間が法定労働時間を超えても、時間外労働とはなりません。
「1ヵ月単位の変形労働時間制」は、仕事量に繁閑のある業種に適しています。
運送業や警備業、編集業務などで広く活用されています。
月末が忙しい経理のみなど、特定の部署や職種に限定することもできます。
1週間単位の非定型的変形労働時間制
1週間の労働時間が40時間以内であれば、1日10時間を上限に所定労働時間を設定することができる制度です。
従業員が常時30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店のみが利用可能です。
「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は、規模や対象業種が限られているため、実際にはあまり利用されていません。
曜日ごとに繁閑の差が大きい場合には、1ヵ月単位の変形労働時間制を利用することが多いといえます。
変形労働時間制の導入例
変形労働時間制は、業務の定型化が難しい業態で導入されています。
- 1年単位の変形労働時間制:デパート、リゾート地のホテル、工場など
- 1ヵ月単位の変形労働時間制:タクシー運転手、警備業など
- 1週間単位の変形労働時間制:小規模なレストラン、旅館など
変形労働時間制と時間外労働
変形労働時間制であっても、時間外労働として残業した部分には割増賃金が発生します。
- 所定労働時間が1週40時間または1日8時間を超える場合
所定労働時間を超えた労働時間が時間外労働となる - 所定労働時間が1週40時間または1日8時間以下の場合
法定労働時間を超えた部分が時間外労働となる - 労働時間を合計して変形期間の法定労働時間の総枠を超えた場合
超えた部分が時間外労働となる
変形労働時間制の比較
区分 | 対象業務 | 1週間の 平均労働時間 | 労働時間の 上限 |
1年 | 制限なし | 40時間 | 1日10時間 1週52時間 |
1ヵ月 | 制限なし | 40時間 (特例あり) | なし |
1週間 | 従業員30人未満 小売業、飲食店等 | 40時間 | 1日10時間 |
フレックス | 制限なし | 清算期間の週40時間 (特例あり) | なし |
参考:厚生労働省ウェブサイト