キーワード解説
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間の配分を自主的に決めることのできる制度のことです。
フレックスタイム制では、一定期間を清算期間として、その期間の所定労働時間を定め、日々の始業・終業時刻は従業員が自由に決定することができます。
働き方改革の一環として、フレックスタイム制に関する法改正が行われ、清算期間の上限が1ヵ月から3ヵ月に延長されました。
清算期間を延長することによって、月をまたいだ労働時間の調整ができ、より柔軟な働き方ができるようになります。
従業員は仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を図りながら効率的な働き方を実現できるようになることが期待されています。
ただし、フレックスタイム制を導入している場合でも、清算期間における総労働時間の1週あたりの平均は、法定労働時間(40時間)を超えることはできません。
清算期間内の実際の労働時間の合計が総枠を超えた場合には、時間外手当(残業手当)が支給され、深夜の時間帯に勤務した場合は深夜手当が支給されます。
逆に清算期間における実際の労働時間が総労働時間を下回っていた場合、不足している労働時間を次の期間に繰り越したり、その期間内で不足している労働時間分に相当する給与が減額されることになります。
フレックスタイム制を導入するには、労使協定の締結と就業規則などへの記載が必要となります。
清算期間が1ヵ月を超える場合には、労使協定の締結だけでなく、労働基準監督署への届出も必要になります。
フレックスタイム制の労使協定で定める事項
フレックスタイム制を導入するには労使協定の締結が必要となります。
- 対象となる労働者の範囲(職種や部署を限定できる)
- 清算期間
- 清算期間における起算日
- 清算期間の総労働時間(所定労働時間)
- 標準となる1日の労働時間
- コアタイムを設ける場合はその開始・終了の時刻
- フレキシブルタイムを設ける場合はその開始・終了の時刻
コアタイムとフレキシブルタイム
1日のうちで必ず勤務しなればならない時間帯(コアタイム)と自由な選択によりいつ勤務してもよい時間帯(フレキシブルタイム)は、必ずしも設けなくてもよいのですが、導入企業の多くで設けられています。
コアタイムとフレキシブルタイムが設定されている場合には、それぞれの開始時刻と終了時刻が決まっています。
フレックスタイム制の時間外労働
フレックスタイム制では、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働としてカウントされます。
清算期間が1ヵ月を超える場合には、以下の2つが時間外労働としてカウントされます。
- 1ヵ月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
- 清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間
フレックスタイム制の割増賃金
実労働時間が清算期間の総労働時間(所定労働時間)を超えなければ、原則として割増賃金は発生しません。
実労働時間のうち、法定労働時間の総枠を超えた部分について割増賃金が支払われます。
清算期間が1ヵ月を超える場合、1ヵ月ごとに週平均50時間を超えた労働時間に対しても割増賃金が支払われます。
また、フレックスタイム制であっても休日出勤(休日手当)、深夜勤務(深夜手当)の原則は適用されます。
フレックスタイム制の対象者
フレックスタイム制の対象者は、特定の職種や部署のみに適用することができます。
フレックスタイム制は労働時間を従業員が自主的に決定するものですので、対象者として制度を適用するには、各従業員の同意が必要とされています。
フレックスタイム制の遅刻・早退
コアタイムの設定は任意ですので、コアタイムが設定されていなければ遅刻や早退はありません。
コアタイムが設定されている場合、その時間帯には必ず勤務しなければなりませんので、コアタイム開始時刻までに勤務できなければ遅刻、終了時刻の前に退勤すれば早退となります。
コアタイムの労働時間の不足については、給与控除の対象とはならないと解されています。
清算期間中の実労働時間が総労働時間に満たない部分については、ノーワーク・ノーペイの原則から給与控除の対象になると解されます。
参考:厚生労働省ウェブサイト