化学業界の領域は幅広く、さまざまな分野の専門性を活かすことができます。関連する資格は重要な国家資格が多く、キャリアアップに有利です。
化学業界で役立つ資格についてご紹介します。
化学工業とは
「日本標準産業分類」では、製造業のなかに「化学工業」を分類しています。
日本化学工業協会では、広義の化学工業を「化学工業」+「プラスチック製品」+「ゴム製品」としています。
【化学工業の種類】
- 化学肥料
- 無機化学工業製品
- 有機化学工業製品
- 化学繊維
- 油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料
- 医薬品
- 化粧品・歯磨・その他の化粧用調製品
- その他の化学工業
危険物取扱者
危険物取扱者は、消防法にもとづく危険物を取り扱う際に必要となる国家資格です。
危険物取扱者には、甲種・乙種・丙種の3種類があり、それぞれ扱うことのできる危険物が異なります。
「乙種第4類」は社会的ニーズが高く、受験制限がないので人気です。
受験資格
- 甲種:大学などにおいて、化学に関する学科、課程を修めた卒業者など
- 乙種・丙種:制限なし
試験日
都道府県および試験区分により異なる
試験地
各都道府県
試験内容
- 甲種
・危険物に関する法令
・物理学および化学
・危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法 - 乙種
・危険物に関する法令
・基礎的な物理学および基礎的な化学
・危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法 - 丙種
・危険物に関する法令
・燃焼及び消火に関する基礎知識
・危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法
合格率
- 甲種:30%程度
- 乙種:40%程度
- 丙種:50%程度
問い合わせ
一般財団法人 消防試験研究センター
転職・就職情報
化学工場など一定数量以上の危険物を貯蔵し、取り扱う施設では必ず危険物取扱者を置く必要があり、化学業界では定番の資格です。
化学工場のほかにも、化学系メーカー、製薬会社などでニーズがあります。
乙種のおすすめテキスト&問題集
エネルギー管理士試験
エネルギー管理士は規定以上のエネルギーを使用する事業者で置く必要がある国家資格です。
エネルギー資源の乏しい日本では、エネルギーを可能な限り有効利用しなければならないため、製造業、電気供給業、ガス供給業などの事業者にはエネルギー管理士の有資格者を置くことが定められています。
資格の取得方法には、国家試験と認定研修の2通りがあります。
受験資格
- 試験:制限なし
- 研修:3年以上の実務経験者
試験日
- 試験:7月
- 研修:12月
試験地
- 試験:北海道、宮城、東京、愛知、富山、大阪、広島、香川、福岡、沖縄
- 研修:宮城、東京、愛知、大阪、広島、福岡
試験内容
- 必須基礎:エネルギー総合管理および法規
- 選択専門:熱分野または電気分野のいずれかを選択
合格率
- 試験:30%程度
- 研修:60%程度
問い合わせ
一般財団法人 省エネルギーセンター
転職・就職情報
エネルギーを適切に管理することは重要な経営課題になっています。
工場で大量のエネルギーを消費するメーカーをはじめとして資格者が求められるようになっています。
エネルギー管理士試験のテキスト
公害防止管理者
公害防止管理者は公害発生または公害防止施設の運転、維持、管理、燃料、原材料の検査等を行う責任者に必要な国家資格です。
製造業、電気・ガス供給業などで、特定の施設がある場合、公害防止管理者を置くことが義務付けられています。
受験資格
- 国家試験:制限なし
- 認定講習:技術資格、または、学歴に応じた実務経験
試験日
年1回(10月)
試験地
札幌、仙台、東京、愛知、大阪、広島、高松、福岡、那覇、その他
試験内容
- 試験区分
大気1種、大気2種、大気3種、大気4種、特定粉じん、一般粉じん、水質1種、水質2種、水質3種、水質4種、騒音振動、ダイオキシン、主任 - 試験科目
公害総論、大気概論、大気特論、ばいじん・粉じん特論、ばいじん・一般粉じん特論、大気有害物質特論、その他
合格率
25%程度
問い合わせ
一般社団法人 産業環境管理協会
転職・就職情報
特定工場には公害防止に関する専門的知識のある組織の設置が義務付けられています。
工場関係だけでなく、環境技術者として活用できる資格になってきています。
公害防止管理者試験の過去問題集
化学分析技能士
技能検定は、働くうえで必要とされる技能を検定し、特定の職種(作業)について習得レベルを評価する国家検定制度です。
化学分析技能検定の筆記試験と実技試験に合格すると「化学分析技能士」を名乗ることができます。
各級のレベル
- 1級:上級技能者レベル
- 2級:中級技能者レベル
- 3級:初級技能者レベル
受験資格
技能検定を受験するには、原則として実務経験が必要になります。
3級は実務経験のほか、職業訓練を受けていたり、学校教育を受けている人にも受験資格があります。
- 1級:7年以上
- 2級:2年以上
- 3級:なし
試験日
- 実技試験:【前期】6月~9月【後期】12月~翌年2月
- 学科試験:【前期】7月~9月【後期】1月~2月
試験内容
【学科試験】
- 化学分析法
- 化学一般
- 安全衛生
【実技試験】
化学分析作業
- 試薬および標準溶液の調製
- 定性分析
- 重量分析
- 容量分析
- 機器分析
合格基準
100点満点として、実技試験は60点以上、学科試験は65点以上が合格ラインとなります。
問い合わせ
中央職業能力開発協会、都道府県職業能力開発協会
転職・就職情報
化学分析技能検定は、化学業界で必要とされる知識や技術の習得レベルを示すことができます。
化学分析技能士を取得しておくと、転職・就職で活用できます。
化学分析の基本書
技術士・技術士補
技術士は科学技術に関する21の技術部門について、それぞれの専門分野ごとに認定が行われる国家資格です。
「化学部門」のほかに「環境部門」や「繊維部門」などがあります。
第一次試験と第二次試験があり、第二次試験の受験には実務経験が必要となります。
第一次試験は技術士補試験を兼ねていて、合格すると「技術士補」となる資格を得られます。
第二次試験に合格すると、「技術士」として登録することができます。
受験資格
- 第一次(技術士補):制限なし
- 第二次(技術士):技術士補となる資格+実務経験
試験日
- 第一次:11月
- 第二次:【筆記】7月【口頭】12月から翌年1月の指定日
試験地
北海道、宮城、東京、神奈川、新潟、石川、愛知、大阪、広島、香川、福岡、沖縄
試験内容
- 第一次:基礎科目、適性科目、専門科目
- 第二次:筆記試験、口頭試験(口頭試験は筆記試験合格者のみ)
合格率
- 第一次:40%程度
- 第二次:10%程度
問い合わせ
公益社団法人 日本技術士会
転職・就職情報
技術士は技術者にとって最も権威のある国家資格といえます。
認知度も高く、資格者は転職・就職やキャリアアップで評価されます。
技術士第一次試験のテキスト
まとめ
化学業界のキャリアにおいて必須の資格があるわけではありませんが、専門性を知識・技術レベルで示すことができる資格を取得することは有利になります。
特にアピールできる経験が少ない20代の転職・就職では有効です。
【参考】
・経済産業省ウェブサイト
・厚生労働省ウェブサイト
・文部科学省ウェブサイト
・一般社団法人日本化学工業協会
・各試験各試験実施機関ウェブサイト