リースは企業に幅広く利用されていますが、税務・会計・法律に関係するビジネスであり、専門的でわかりにくい面もあります。
転職・就職で押さえておきたいリース業界の概要と動向についてご紹介します。
リース業界
リース業とは
リース業とは、顧客企業が必要な設備などの物品を代わりに購入し、その物品を顧客企業に賃貸する取引を行う事業のことです。
初期投資を抑えることができ、多くの企業がリースを利用しています。
リース物件は事務機器や情報通信機器からソフトウエア、輸送用機器、産業機器、航空機、不動産などまで幅広く対象となっています。
国内のリース市場は頭打ちとなるなか、物流不動産や再生可能エネルギーなど成長領域を求め、統合や提携の動きが進んでいます。
ファイナンス・リース
ファイナンス・リースは顧客が必要とする物品を代わりに購入し、分割払いで顧客に貸与する契約です。
- 中途解約不能
- フルペイアウト
オペレーティング・リース
オペレーティング・リースはファイナンス・リース以外のリースで、物品を借りて、後で返す契約です。
メンテナンス・リース
メンテナンス会社がリース物件の保守、管理、修繕などを行うリースを「メンテナンス・リース」といいます。
自動車のリースに多くみられます。
メンテナンス・リースもファイナンス・リースかオペレーティング・リースのいずれかに分類されます。
リースが利用される業界(例)
- 建設業界
・建設機械 - 製造業界
・工作機械
・産業機器 - 医療業界
・医療機器
・設備・備品 - 運輸業界
・航空機
・トラック
・乗用車 - 鉄道業界
・鉄道車両
・券売機
・自動販売機 など
リース会社の系列
- 独立系
オリックス、九州リースサービス、中道リース - 銀行・商社系
三菱HCキャピタル、三井住友フィナンシャル&リース、芙蓉総合リース、みずほリース、東京センチュリー、みずほ丸紅リース、東銀リース - メーカー系
リコーリース、NECキャピタルソリューション - その他
NTT・TCリース、JA三井リース など
リース会社
リースの国内市場は横ばいが続き、各社は成長分野の開拓や事業の多角化を進めています。
新型コロナウイルスの影響により減少した企業の設備投資は徐々に回復しつつあります。
成長分野である再生可能エネルギー事業の拡大が進むとみられます。
オリックス
リース業界首位。
関西国際、大阪国際に続く神戸空港の運営、太陽光発電、生命保険など事業の多角化を進めています。
- 設立:1964年4月
- 本社:東京都、大阪府
- 従業員数:33,253人
- 平均年齢:44歳
三菱HCキャピタル(旧三菱UFJリース)
日立キャピタルと経営統合。
海外拠点の体制整備を強化しています。
- 設立:1971年4月12日
- 本社:東京都
- 従業員数:8,972人
- 平均年齢:40歳
三井住友フィナンシャル&リース
航空機リース大手。
新エネルギーの拡大など収益源の多様化に取り組んでいます。
- 設立:1963年2月
- 本社:東京都、大阪府
- 従業員数:3,719人
東京センチュリー
航空機リース大手。
提携を通じ事業を拡大しています。
- 設立:1969年7月1日
- 本社:東京都
- 従業員数:7,634人
- 平均年齢:44歳
芙蓉総合リース
銀行系のリース会社。
不動産・再生可能エネルギーなどの分野を強化しています。
- 設立:1969年5月1日
- 本社:東京都
- 従業員数:3,147人
- 平均年齢:41歳
みずほリース
みずほFGのリース会社。
医療・環境分野で成長しています。
- 設立:1969年12月1日
- 本社:東京都
- 従業員数:1,864人
- 平均年齢:44歳
JA三井リース
農林中央金庫、三井物産出資のリース会社。
農機など農業分野に強みがあります。
- 設立:2008年4月1日
- 本社:東京都
NTT・TCリース
NTTファイナンスのリース事業などの一部を分社化。
NTTと東京センチュリーの資本業務提携の一環として設立されました。
- 設立:2020年2月21日
- 本社:東京都
- 従業員数:約1,100人
リコーリース
メーカー系のリース会社。
医療・介護分野に強みがあります。
- 設立:1976年12月
- 本社:東京都
- 従業員数:1,253人
- 平均年齢:41歳
NECキャピタルソリューション
メーカー系のリース会社。
情報機器に強みがあります。
- 設立:1978年11月30日
- 本社:東京都
- 従業員数:812人
- 平均年齢:42歳
九州リースサービス
独立系のリース会社。
地域密着型の営業を展開しています。
- 設立:1974年11月1日
- 本社:福岡県
- 従業員数:159人
- 平均年齢:42歳
中道リース
独立系のリース会社。
北海道を地盤として事業を展開しています。
- 設立:1972年4月21日
- 本社:北海道
- 従業員数:174人
- 平均年齢:39歳
リース業の収入高
順位 | 企業名 | 収入高 (百万円) |
1 | オリックス | 2,520,365 |
2 | 三井住友ファイナンス&リース | 1,818,535 |
3 | 三菱HCキャピタル | 1,765,559 |
4 | 東京センチュリー | 1,277,976 |
5 | 芙蓉総合リース | 657,847 |
6 | みずほリース | 554,809 |
7 | JECC | 327,117 |
8 | JA三井リース | 459,232 |
9 | NTT・TCリース | 321,197 |
10 | リコーリース | 303,853 |
11 | 三井住友トラスト・パナソニックファイナンス | 285,041 |
12 | NECキャピタルソリューション | 249,907 |
13 | FLCS | 131,875 |
14 | シャープファイナンス | 124,122 |
15 | みずほ東芝リース | 99,817 |
16 | 昭和リース | 75,214 |
17 | 三菱電機クレジット | 68,570 |
18 | 東銀リース | 58,039 |
19 | ニッセイ・リース | 41,977 |
20 | 中道リース | 39,293 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
リース会社の主な組織
リース会社は、資金の融資ではなく、事業に必要な物品を賃貸するサービスを提供しています。
営業部門
営業はユーザーとの接点になる重要な部門です。
大手では専門性を高めるために専門営業部門とエリア営業部門に分けて、専門分野や地域に密接したきめ細かい営業を行っています。
財務部門
リース会社ではリース物件を購入するために資金を調達しなければなりません。
この資金調達を担当するのが財務部門です。
社債やコマーシャルペーパーの発行、リース債権流動化など資金調達の多様化が進んでいます。
財務担当者には高度な専門知識が求められます。
審査部門
審査部門では営業が進めているリース取引の契約内容について、適切かどうかを判断します。
専門的な観点でユーザーの審査を行うほか、支払い遅延などが発生した場合、債権回収に関する対応を行うこともあります。
法務部門
法務部門ではリース契約書をはじめとした契約書の作成や法的な問題への対応を行います。
トラブルにならないように、あるいはトラブルに発展した場合の訴訟対応などで、助言や指導を行います。
資産管理部門
資産管理部門ではリース満了処理を行っています。
資産管理担当者は、関係法令の動向を把握し、地域ごとの処分ルールを適切に把握する必要があります。
リース業界の求人・転職
求人数の大きな変動はなく、求人ニーズは続く見込みです。
成長分野や海外事業などの強化領域を中心に人材が求められる状況になりそうです。
物品賃貸業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 42.2歳 (平均) |
所定内労働時間 | 169時間 | 169時間 | 168時間 |
残業 | 14時間 | 16時間 | 12時間 |
月収 | 234,800円 | 263,600円 | 339,600円 |
年間賞与等 | 351,900円 | 754,300円 | 991,000円 |
年収 | 3,169,500円 | 3,917,500円 | 5,066,200円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
まとめ
企業の海外展開に合わせて、リース会社でも海外設備投資の支援を積極的に展開しています。
環境や情報分野の業務提携、M&Aが加速し、新たなリース市場の開拓や新規事業への取り組みも活発です。
【参考】
・総務省「日本標準産業分類」
・経済産業省ウェブサイト
・公益社団法人リース事業協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』