テレビやラジオ、新聞、雑誌、多くのネットメディアは広告収入によって成立しています。
広告業界ではインターネット広告が急成長し、環境は大きく変化しています。
転職・就職で押さえておきたい広告業界の概要と動向についてご紹介します。
広告業とは
広告業とは、クライアントのために広告に係る総合的なサービスを提供する事業や広告媒体のスペースまたは時間を広告媒体企業と契約し、クライアントのために広告する事業のことです。
広告業界の市場はテレビ、新聞、雑誌、ラジオのマスコミ4媒体とインターネット、プロモーションメディア(屋外や交通、折込み、DM)などで構成されます。
マスコミ媒体は減少傾向ですが、インターネット広告はプラス成長を続け、業界全体を支えています。
モバイル広告市場の成長や動画広告などの広告配信が浸透して急成長しています。
【媒体別構成比】
- インターネット:43.5%
- テレビ:25.4%
- プロモーションメディア:24.1%
- 新聞:5.2%
- 雑誌:1.6%
- ラジオ:1.6%
(電通「2022年 日本の広告費」より)
大手広告代理店
テレビ広告からインターネット広告へのシフトが進み、広告大手もデジタル領域を強化しています。
電通グループ
国内最大の広告グループ。
純粋持ち株会社制に移行し、本格的に海外戦略を進めています。
- 創業:1901年7月1日
- 本社:東京都
- 売上高:5兆8,195億円
- 従業員数:69,066人
- 平均年齢:42歳
博報堂DYホールディングス
国内2位の広告代理店。
博報堂と大広、読売広告社が中心となり設立された持株会社です。
海外企業を買収し、事業領域を拡大しています。
- 設立:2003年10月1日
- 本社:東京都
- 売上高:1兆6,343億円
- 従業員数:27,936人
- 平均年齢:44歳
ADKホールディングス
アニメ事業が強みの広告代理店。
他社との連携を進めています。
- 設立:1956年3月19日
- 本社:東京都
- 売上高:3,135億円
- 従業員数:約2400人
専門広告会社
- JR東日本企画
- 東急エージェンシー
- 読売広告社
インターネット広告
インターネット広告はプラス成長を続けています。
これからも勢いは続きそうです。
サイバーエージェント
インターネット系広告会社トップ。
ネット広告に加えSNS事業にも強みがあります。
- 設立:1998年3月18日
- 本社:東京都
- 売上高:7,105億円
- 従業員数:6,559人
- 平均年齢:34歳
デジタルホールディングス
ネット広告専業代理店。
企業のデジタル支援に力を入れています。
- 設立:1994年3月4日
- 本社:東京都
- 売上高:169億円
- 従業員数:1,022人
- 平均年齢:39歳
セプテーニ・ホールディングス
ネット広告事業が主力。
ネット販促やコンテンツへと事業を拡大しています。
- 設立:1990年10月
- 本社:東京都
- 売上高:288億円
- 従業員数:1,636人
- 平均年齢:32歳
D.A.コンソーシアムホールディングス
博報堂DYホールディングスの完全子会社。
インタネット広告の企画・販売を行っています。
- 設立:2016年10月3日
- 本社:東京都
- 売上高:290億円
アフィリエイト
成果報酬型の広告です。
ユーザーによる購入や申込みなどがあった場合に費用が発生します。
ファンコミュニケーションズ
成果報酬型広告の大手。
- 設立:1999年10月1日
- 本社:東京都
- 売上高:77億円
- 従業員数:490人
- 平均年齢:33歳
バリューコマース
成果報酬型広告とネット通販向け。
- 設立:1996年
- 本社:東京都
- 売上高:357億円
- 従業員数:369人
- 平均年齢:37歳
広告業界の職種
広告業界には業界特有の業務があり、専門性が重視されます。
営業職
広告主であるクライアントとの交渉窓口になり、社内の部門を調整するのが営業職です。
担当するクライアントは売上高によって1社から複数社の場合があります。
コミュニケーション能力はもちろん、クライアントの情報収集から課題を見つけ、的確に理解する力、方向性の提案や企画を判断する力が求められます。
媒体職
担当する媒体との折衝作業が中心です。
営業から聞いているクライアントのオーダーに、どれだけいい条件で、いい枠をメディアから獲得できるかの交渉力が求められます。
いかに最新の情報を引き出すか、どういうターゲットに向いている枠かを見極める必要があり、情報感度の高さが重要になります。
クリエイティブ職
広告制作業務全般ですが、役割によって分かれているのが一般的です。
例えばCMであれば、CMプランナー、アートディレクター、コピーライター、クリエイティブ・ディレクターなどがチームを組んで対応します。
入社時からクリエイティブ職なのではなく、他部門を経験してからクリエイティブ部門に配属される人も多くいます。
マーケティング職
広告戦略を立てて、調査などで裏付けします。
数量データを扱うことも多く、数字に強く、論理的に考えることが求められます。
進化するマーケティング理論を常に勉強していく姿勢が大切です。
プロモーション職
キャンペーンの立案からイベント、映像制作まで横断的にこなすのがプロモーション職です。
仕事の領域が広く、企画力、実行力が求められます。
あらゆることにアンテナを張って、新しい情報を入手することが大切です。
インタラクティブ職
インターネット関連の業務です。
広告におけるインターネットの重要性が増し、新しい手法が求められています。
インターネットに精通していなくても、好きであることが大切です。
広告業界の採用市場
大手総合広告代理店も中途採用の枠を第二新卒まで広げています。
特にWeb広告の分野では求人数が伸び続けていて、業界未経験者の採用にも積極的です。
求人ニーズは営業職からプランナーやディレクターなどのクリエイティブ職まで幅広い職種があります。
インターネット広告などデジタル分野の経験者はまだ多くはないので、今から実績を積むことで、市場価値を高めることができます。
さらにその先には業界内でのキャリアアップにつながる道が広がります。
広告業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 38.8歳 (平均) |
所定内労働時間 | 170時間 | 171時間 | 169時間 |
残業 | 5時間 | 7時間 | 7時間 |
月収 | 270,100円 | 355,500円 | 449,300円 |
年間賞与等 | 129,600円 | 460,600円 | 1,067,800円 |
年収 | 3,370,800円 | 4,726,600円 | 6,459,400円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
広告業界の転職活動
エージェントサービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーが転職をサポートしてくれます。
非公開・好条件の求人紹介だけでなく、企業に応じた書類作成や面接対策のアドバイスなどで、選考通過率のアップが期待できます。
まとめ
インターネットをはじめとして新しいメディアが躍進する広告業界。
転職のチャンスも増えているといえます。
組織より個の専門性、役割が大きい業界です。
新しいことにチャレンジする姿勢、考え方が求められます。
働き方改革や業務効率化の取り組みにより、業界全体の意識が徐々に変わりつつあります。
【参考】
・総務省「日本標準産業分類」
・一般社団法人日本広告業協会
・各企業公式サイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』