キーワード解説
労働災害
労働災害(労災)とは、従業員が業務に従事したことによって生じた傷病等の事故のことです。
労働安全衛生法では、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡すること」と定義されています。
従業員が業務上の災害で負傷したり死亡した場合、事業主は過失の有無を問わず補償義務を負います。
労働災害は、労災保険でいう業務災害とほぼ一致しています。
通常、労働災害にあった従業員やその遺族に対しては、労災保険から必要な給付が行われます。
労災保険
労災保険では、業務上の災害や通勤途中の災害が原因で、従業員がけがや病気をしたり、障害が残ったり、死亡した場合、治療費や休業補償、障害補償、遺族補償などの給付を行います。
労災保険は、業務上の「業務災害」と通勤途中の「通勤災害」に分かれます。
事業主は、従業員を1人でも雇っている場合、労災保険に加入しなければなりません。
従業員は、所定労働時間、所定労働日数に関わらず、労災保険の対象となりますので、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなどを含むすべての従業員が対象です。
ただし、社長や役員は労働者ではないので、労災保険の対象にはなりません。
労災保険は企業全体で加入するため、従業員一人ひとりが加入する必要はありません。
労災保険の保険料は企業が全額負担します。
業務上や通勤途中でけがをした場合、医療費は労災保険で負担されます。
労災病院などの医療機関には、業務上や通勤途中のけがであることを伝えたうえで受診します。
病院の窓口で治療費を一時的に負担しても、ほとんどの場合、手続きをすれば立て替えた分を精算できます。
労災保険の給付手続きは、労働基準監督署に申請して行います。
申請して「業務上」の災害であると認定されれば、労災保険から補償を受けることができます。
「業務外」と認定された場合であっても、再審を請求することができます。
業務災害
業務災害(業務上の災害)は、業務や業務に付随する行為が原因で生じた負傷、疾病、障害、死亡等のことです。
業務災害が業務上の災害として認定されるには、業務との関連性が調査されます。
- 業務遂行性
使用者の管理下にある状況で発生した災害であるかどうか - 業務起因性
業務を原因とする傷病かどうか
社内で発生した災害だけでなく、社外での作業や出張中に起こった災害も含まれます。
一方、社内で発生しても業務とは直接関係のない原因によるものは含まれません。
例えば、職場で同僚との個人的なトラブルでけがをしたような場合には、業務上の災害とは認められません。
通勤災害
通勤災害(通勤途中の災害)は、職場と住居との間を合理的な経路および方法で行き来している通勤途中に起きた負傷、疾病、障害、死亡等のことです。
通勤災害は業務上の災害と認定されれば労災保険から給付を受けることができます。
労災保険上、通勤災害と認められるには、通勤の途中かどうかということがポイントになります。
- 就業に関する通勤であること
- 合理的な経路および方法であること
会社に届け出ている通勤経路とは別のルートであっても、子どもの送迎など合理的な理由があれば、通勤災害として認められます。
日用品の購入や通院など、日常生活に必要な行為は認められますが、通勤途中に寄り道をしている場合などは、通勤災害として認められない場合があります。
療養(補償)給付
業務上や通勤途中にけがをして治療を受ける場合、労災保険から療養(補償)給付が支給されます。
診察、治療、医薬品など支給、通院などの費用が全額支給されます。
労災病院を受診する際に、立て替え払いをしても所定の請求書を提出すれば費用の全額が支払われます。
休業(補償)給付
業務上や通勤途中のけがや病気のために働けず、賃金が支給されない場合、賃金の補填を目的として労災保険から休業(補償)給付と休業特別支援金が支給されます。
待期期間が完了して休業4日目から平均賃金の8割相当が支払われます。
傷病(補償)年金
業務災害や通勤災害により、療養を始めてから1年6ヵ月を経過したあとも傷病が治っていない場合、傷病等級に応じて、休業(補償)給付に代わり傷病(補償)年金が支給されます。
傷病等級に該当せず、休業を続けている場合は、休業(補償)給付が支給されます。
障害(補償)給付
傷病が治ったとき、障害等級に該当する障害が残った場合には、障害等級に応じて障害(補償)給付が支給されます。
介護(補償)給付
障害のために常時または随時の介護を必要として、介護を受けている場合、介護(補償)給付が支給されます。
遺族(補償)給付
従業員が業務上または通勤途中のけがなどで死亡したとき、一定の遺族に対して年金または一時金が支給されます。
葬祭料
従業員が業務上または通勤途中のけがなどで死亡したとき、葬祭を行う人に必要な費用が支給されます。
参考:厚生労働省ウェブサイト