国際機関は多国間の共通の利益のために設立された機関です。
国際機関で働く職員は国際公務員と呼ばれています。
国際機関で働く日本人職員は、他の主要国と比較するとまだまだ少なく、国際公務員として活躍する日本人を増やすことを目標として、さまざまな取り組みが行われています。
国際公務員、国際機関の職員を目指す人が、どのようなルートで働く方法があるかをご紹介します。
国際公務員・国際機関の職員
国際機関の職員
国際公務員は、国際機関で働いています。
国際機関とは、一般に国際社会共通の利益のために設立された機関のことです。
国際機関の職員は、国連やその下部組織、専門機関などに勤務し、ニューヨークやジュネーヴなどにある本部の他、フィールドと呼ばれる世界各地の事務所で、専門分野を通じて活躍しています。
日本人が活躍している主な国際機関としては、以下のような機関が挙げられます。
- 国際連合(UN)
- 国連開発計画(UNDP)
- 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
- 国連児童基金(UNICEF)
- 世界食糧計画(WFP)
- 国際労働機関(ILO)
- 国連食糧農業機関(FAO)
- 国連教育科学文化機関(UNESCO)
- 世界保健機関(WHO)
- 国際原子力機関(IAEA)
- 経済協力開発機構(OECD)など
国際機関の職員の職種は、主に「専門職」と「一般職」の2種類に分けることができます。
専門職
専門的知識や技術を活かして業務を遂行する職種です。
この職種の採用は、空席公募を通じて国際的に行われ、そのポストで必要とされる能力を持った即戦力であることが求められます。
職務内容は、各機関で実施するプログラム(開発、経済、環境等)に直接携わる業務と、それをサポートする業務(財務、人事、総務、広報、IT等)に分類できます。
一般職
各国際機関の本部やフィールドにおいて、専門職の指示の下、一般事務を担当している職種で、GS(ジェネラル・スタッフ)と呼ばれています。
原則として、勤務先所在地での現地採用が行われています。
国際機関の職員数(2020年)
- 国際専門職(41,270人)
- 現地採用専門職(16,132人)
- フィールドサービス職(3,345人)
- 一般職その他(55,641人)
- 合計(116,388人)
外務省「国際機関人事センター」より
国連事務局YPP
国連事務局YPP試験は、国連事務局の若手職員を採用するための試験です。
日本人が国際公務員になるための主な3つの方法のうち、空席公募、JPO試験に並ぶ、採用制度の1つです。
年に一度試験が行われ、書類審査、筆記試験、面接を経て、合格した方はロスター(合格者名簿)に掲載されます。
合格後は、ポストの空き状況に応じて、ロスター掲載者の中から選考が行われ、ポストに採用されます。
そのため、合格イコール採用ではありません。
ロスターの有効期限は3年間です。
ポストに採用されると、2年の任期で勤務し、勤務中の成績が優秀であれば引き続き雇用されます。
応募資格
- 日本国籍を有すること
- 年齢が32歳以下(受験年の12月31日現在)であること
- 英語またはフランス語のどちらかで職務遂行が可能であること
- 募集分野に関連する学士号以上の学位があること
対象分野
募集対象分野は毎年異なります。
最新の情報や応募方法、試験問題例は、国連事務局ウェブサイトで確認することができます。
JPO派遣候補者選考試験
JPO派遣制度は、各国政府が費用を負担して、国際機関が若手職員を受け入れる制度です。
外務省が選考試験を主催して、派遣取り決めを結んでいる国際機関に対し、原則として2年間、日本人を派遣しています。
この制度で国際機関に勤務する職員は、JPOと呼ばれます。
JPOは、当該国際機関の職員として勤務しながら、国際機関の正規職員を目指します。
応募資格
- 年齢が35歳以下であること
- 国際機関の業務に関連する分野において 修士号を取得したか、または修士号を取得見込みであること
- 国際機関の業務に関連する分野において2年以上の職務経験があること
- 英語で職務遂行が可能であること
- 将来にわたり国際機関で働く意思があること
- 日本国籍を有すること
応募方法
- 事前登録:専用URLにオンライン登録
- 応募:郵送またはメール
選考方法
- 第一次審査:外務省の書類審査
・英文カバーレター
・英文略歴
・英文応募用紙
・和文応募用紙
・TOEFL iBTまたはIELTSのスコア - 第二次審査:国際機関の面接審査・英語の筆記試験
問い合わせ
外務省 総合外交政策局 国際機関人事センター
空席公募への応募
空席公募は、職員の退職、転任、転出、あるいはポストの新設によってポストに欠員が生じた場合に国際的に公募されます。
正規ポストへの応募であり、国際機関で一般的な就職方法です。
応募資格
- 年齢制限は特になし
- 募集分野に関する修士号以上の学歴があること
- 国際機関の業務に関連する分野において2年以上の職務経験があること
応募方法
応募したい空席ポストがあり、資格要件を満たしている場合には、所定の応募用紙を各国際機関のウェブサイトから入手し、記入の上、各国際機関に直接応募します。
応募後、書面審査が行われ、応募者の専門性・勤務経験が、空席ポストに合っているか否かが審査されます。
空席情報の取得方法
空席公募の多くは、各国際機関のウェブサイトで確認することができます。
また外務省 国際機関人事センターのウェブサイトにおいても、各国際機関の最新の空席を閲覧できます。
メール配信サービスにメールアドレスを登録することにより、最新の空席情報を受信することもできます。
採用ミッションへの応募
採用ミッションとは、国際機関が、日本人職員を増やすために、人事部長などの採用担当者を日本に派遣して日本人候補者の面接などを行うものです。
これまで採用ミッションによる書面審査、面接審査を経て日本人が採用されていますが、最近は日本での選考は行われていません。
応募資格
対象者は若手職員の採用とは異なりますが、一般的には専門分野で数年以上の実務経験者になります。
募集情報の収集方法
外務省 国際機関人事センターのウェブサイトに掲載されたり、外務省 国際機関人事センターに登録されている有資格者に問い合わせるなどの方法で行われています。
キャリア相談のための情報登録制度(旧ロスター登録制度)
外務省 国際機関人事センターによる「キャリア相談のための情報登録制度」は、 国際機関への就職のため、個人の経歴や専門性、志望などに応じてアドバイスや空席情報の提供を行うための制度です。
現在は新規の登録受付が一時停止されています。
登録対象者の目安
- 経歴
・学士号または修士号(文学・語学・芸術等を除く)を有し、学位取得分野で2年以上の実務経験を有すること
・博士号(文学・語学・芸術等を除く)を有すること - 語学
英語またはフランス語のどちらかで職務の遂行ができること - 国籍
日本国籍を有すること
登録方法
指定の登録フォーマットを国際機関人事センターの情報登録制度アカウントにメール添付で送付します。
有効期限
情報登録の有効期限は2年間で、2年を経過した登録情報は自動的に消去されます。
引き続き登録を希望する場合は、新たに最新の登録情報を提出する必要があります。
出向職員
関連する省庁や企業から出向という形で国際機関へ派遣されることがあります。
それぞれの分野で経験を積み、国際機関へ出向して、そこから国際公務員になる人もいます。
出向が多い機関
- 世界銀行
- アジア開発銀行
- OECD
- WHO
- IAEA
- 国連食糧農業機関
インターン・ボランティア
国際機関におけるインターンや国連ボランティアなどは、現場の業務や組織文化を実際に経験することができます。
海外のインターン
- 国際刑事裁判所(ICC)
- 国際農業開発基金(IFAD)
- 国際通貨基金(IMF)
- 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
- 国連児童基金(UNICEF)
- 国連工業開発機関(UNIDO)
- 世界貿易機関(WTO) など
国連ボランティア
- 年齢
25歳以上、上限の設定はなし - 経歴
大学卒業または専門資格の取得後、最低でも2年、できれば5年以上の勤務経験があること - 語学
英語、フランス語、スペイン語などの国連公用語で日常業務が遂行できるコミュニケーション能力
まとめ
海外では日本以上に転職が活発です。
国際機関に就職しても同じ機関で働き続ける人が一般より多いわけではありません。
国際機関で働く経験は、それ以外の環境でも高く評価されるものです。
国際機関で働くことは、自分のキャリアを形成するひとつの機会として考えることができるでしょう。
参考:外務省 国際機関人事センター
