国家公務員の中途採用には、主に実務経験者向けの「経験者採用試験」と経歴に関わらず受験できる「一般職社会人試験」があります。
試験によって実施状況は異なりますので、通常の採用試験と併せて情報を収集しておくことをおすすめします。
国家公務員の中途採用
国家公務員の経験者採用試験
経験者採用試験は、民間企業などにおける実務経験者を国の機関の係長級以上の官職に採用するための試験です。
試験の種類
- 府省合同:係長級(事務)
- 総務省:係長級(技術)
- 外務省:書記官級
- 国税庁:国税調査官級
- 農林水産省:係長級(技術)
- 国土交通省:係長級(技術)
- 観光庁:係長級(事務)
- 気象庁:係長級(技術)
受験資格
経験者採用試験の受験資格は、大学等(短大を除く)を卒業した日または大学院の課程等を修了した日から必要となる経過年数は、採用試験の種類により異なります。
技術系は年数要件のほかに専門分野に関する課程の修了も必要となります。
- 経験者採用試験:大学(院)卒業から2年を経過した人
- 総務省経験者採用試験:一定の学歴・職歴が必要
- 外務省経験者採用試験:大学(院)卒業から9年を経過した人
- 国税庁経験者採用試験:大学(院)卒業から8年を経過した人
- 農林水産省経験者採用試験:大学(院)卒業から4年を経過した人
- 国土交通省経験者採用試験:大学(院)卒業から2年を経過した人
- 観光庁経験者採用試験:大学(院)卒業から7年を経過した人
- 気象庁経験者採用試験:大学(院)卒業から8年を経過した人
試験内容
- 第一次試験
・筆記試験:基礎能力試験(多肢選択式)
・勤務経験等に関する論文試験:経験論文試験 - 第二次試験
・政策課題討議試験:グループ討議試験
・人物試験:個別面接
スケジュール
- 7月1日:受験案内を人事院HPに掲載
- 8月上旬~:インターネットによる受験申込み
- 10月上旬:第一次試験
- 11月上旬:第二次試験
- 11月~12月
・第三次試験
・最終合格発表
・採用内定
・採用
経験者採用試験の実施状況
2019年度の申込者(最終合格者)の人数は、試験の種類別に以下のとおりとなっています。
試験の種類 | 申込者数(人) | 最終合格者数(人) |
経験者採用試験(係長級(事務)) | 748 | 34 |
総務省経験者採用試験(係長級(技術)) | 48 | 7 |
外務省経験者採用試験(書記官級) | 174 | 14 |
国税庁経験者採用試験(国税調査官級) | 1,198 | 227 |
農林水産庁経験者採用試験(係長級(技術)) | 61 | 1 |
国土交通省経験者採用試験(係長級(技術)) | 96 | 10 |
観光庁経験者採用試験(係長級(事務)) | 143 | 5 |
気象庁経験者採用試験(係長級(技術)) | 76 | 15 |
計 | 2,544 | 313 |
(人事院「経験者採用試験実施状況」より)
経験者採用で求められる人材
採用予定の各府省では、それぞれに経験者採用において求める人物像があり、メッセージを出しています。
内閣府係長級(事務)
内閣府は各省横断的な重要事項の企画立案・総合調整を担うため、バランス感覚や柔軟性、多様な当事者に寄り添える想像力や共感力等が求められます。国家公務員として、また内閣府職員として何をし たいか、熱い思いを持った方を求めています。
金融庁係長級(事務)
金融行政のプロフェッショナルとなるポテンシャル・意欲のある方、また、将来的に管理職となりマネジメ ントにも携わる意思のある方。
総務省係長級(事務)
時代に応じた国家行政を創り上げていくことや日本全国の住民生活を支えていくこと、情報通信技術 (ICT)を活用した我が国経済の活性化などの使命に共感し、国内外問わず幅広いフィールドで活躍する意欲を持ち、これまでの社会人経験を活かして発想力や実行力を持って政策課題に取り組める人材を求めています。
公安調査庁係長級(事務)
情報の収集や分析の経験がある方、語学力のある方などが比較的なじみやすいかもしれませんが、当庁業務の根幹を成す「人から話を聞くこと」は、相手の数だけ答えがある仕事であり、当庁はあえて「求める人物像」を設けていません。必要とされるのは「人間力」です。このため、多様なタイプの「人間力」を持った方の訪問をお待ちしています。
外務省係長級(事務)
厳しい国際社会の中で日本の利益を追求していくため、①国民のために働きたいという強い意志と責任感を持つこと、②未知の課題に積極的に取り組むチャレンジ精神を持つこと、③冷静に考え、機動的に 動くことができること、④国際社会の中で日本が直面する様々な外交課題に高い関心があり、高い語学力を始め一定の国際的な知識・経験を有し、即戦力となることが求められます。
財務省係長級(事務)
財務省は国内外のあらゆる課題に当事者として立ち向かいます。そのため、自分の興味や関心を狭めず、他人事ではなく自分事として考える姿勢を持ち、その上で解決策を提示し、交渉し、相手の納得を得る経験を有する方を求めています。 国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ。この財務省のミッションに共感いただける方をお待ちしております。
文部科学省係長級(事務)
①教育、科学技術・学術、スポーツ、文化という幅広い分野において、未来を創り、人を育てていく仕事 に関心がある方、②将来のビジョンのための新しい感覚、柔軟な思考力とそれを現実に結び付けるのに 必要な、困難な課題にも粘り強く立ち向かう気概や想いを持った方を求めています。
厚生労働省係長級(事務)
①幅広い視野と厚生労働行政への明確な問題意識を有する方、②企業等での職務経験を公務に活かそうとする意欲のある方、③職務を遂行するために必要な論理的思考力・施策立案能力・調整能力等を有する方、④組織においてリーダーシップを発揮することができる方、⑤特に現場をもつ厚生労働省だからこそ、現場と向き合う気概を持ち続けることができる方。
農林水産省係長級(事務)
生命を支える「食」と「環境」の継承という政策課題に対し、①これまでの社会人経験を活かし、広い視野 と新しいアイディアをもって常に前向きに考え行動できる方、②経済・社会・技術の動向を敏感に受け止め、将来を予測し、国民の期待に応える政策やシステムを設計し、実行できる方を求めています。
経済産業省係長級(事務)
①豊かな経済社会をつくりあげていくというミッションに共感し、②世界・日本に横たわる難しい課題に挑 戦したいという明確な問題意識を持ち、③これまでの社会人生活で培った経験や専門性を活かしつつ、 課題を発見し、多様なステークホルダーを巻き込みながらその課題解決に努めてきた人材を求めています。
国土交通省係長級(事務)
国土交通省には、まちづくり・防災・運輸業など安全・安心な暮らしをつくる分野、観光・インフラの海外展 開といったダイナミックで経済成長に直結する分野など多数のフィールドがあります。これまでの社会人経験を生かし、「答え」が一つではない行政という世界で、多様な関係者を巻き込みながらクリエイティブ な仕事を行う意欲のある方を求めています。
総務省係長級(技術)
ICTによる日本経済の活性化や豊かで安全な社会の構築を進める情報通信行政に強い関心を持ち、即戦力となる方。
外務省書記官級
国際社会の中で日本が直面する様々な外交課題に高い関心と知識・経験を有する方。高い英語力を有する方。英語以外の言語の高い語学力を有する方。多様な価値観を受け入れるバランス感覚と高い柔軟性、長期の海外勤務に耐えるたくましさを備えた方。
国税調査官級
これまでの職務経験(特に、情報処理、データ利活用、情報システム(ICT)などの 職務経験)により培ったノウハウを発揮することで、国税の職場に貢献したいという熱意、意欲、使命感、正義感を有する者。 また、採用後、研修や職務経験を通じて、法律、経済、会計等の専門知識及び国税職員としての能力を習得する向上心を有する者。
農林水産省係長級(技術)
生命を支える「食」と「環境」の継承という政策課題に対し、①食品、食料、農業、化 学、薬学、農業土木、林業、水産業等に関連した業務経験を活かし、広い視野と 新しいアイディアをもって常に前向きに考え行動できる方、②経済・社会・技術の動向を敏感に受け止め、将来を予測し、国民の期待に応える政策やシステムを設計し、実行できる即戦力となる方を求めています。
国土交通省係長級(技術)
【本省】
- 国土交通政策の推進に強い関心があり、将来的に技術的知見に基づいた政策立案の根幹を担っていく方
- これまでの勤務経験を通じて、論理的思考力、コミュニケーション力、専門的な技 術力を有している方
【地方整備局・北海道開発局】
社会資本整備に関する様々な経験をお持ちの方で、国の事業の調査・設計から施工・管理までの幅広い分野でこれまで培ったノウハウを発揮したいという気持ちのある方。
気象庁係長級(技術)
大学等で理系に関する課程を専攻し①~④のいずれかの知識を有し、各分野の 専門性を活かして、前向きに業務にあたられる方 ①気象の予報・観測に関する知識 ②地震・津波・火山に関する知識 ③情報システムの管理・処理に関する開発知識 ④地方公共団体の防災に関する知識
観光庁係長級(事務)
観光庁は「観光立国の実現」に向けて、我が国経済の活性化、活力に満ちた地域 社会の実現、国際相互理解の増進や国際社会での我が国の地位向上、健康で文 化的な生活の実現などを図るため、観光に関する様々な政策を実施しています。 観光行政に関心を持つ即戦力となる人材を求めます。

国家公務員の一般職社会人試験
一般職社会人試験は、経歴に関わらず受験できる定型的な事務を職務とする係員の採用試験です。
すべての区分・地域で毎年募集されるわけではなく、採用予定のある場合に実施されます。
受験資格
40歳未満(一般職高卒者試験の受験資格の期間が経過した人および人事院が認めた人)
試験内容
- 第一次試験
・基礎能力試験
・適性試験
・専門試験(技術系のみ)
・作文試験(事務のみ) - 第二次試験
・人物試験:個別面接
スケジュール
- 申込受付:6月中旬~下旬
- 第一次試験:9月上旬
- 第二次試験:10月中旬
- 最終合格発表:11月中旬
- 採用:おおむね翌年4月
実施状況
2019年度の一般職社会人試験の事務系は募集がなく、技術系の地域別と農業土木の全国での募集が実施されました。
実施された試験の申込者(最終合格者)数は以下のとおりとなっています。
- 北海道:16(2)人
- 関東甲信越:157(3)人
- 東海北陸:29(2)人
- 近畿:57(3)人
- 中国:26(3)人
- 農業土木:74(4)人

まとめ
国家公務員の中途採用に関する情報は、採用予定に変動がありますので、必ず最新情報を確認するようにしてください。
人事院の国家公務員試験採用情報NAVIでは、社会人向けの中途採用に関する情報が掲載されています。
