損害保険保険業界は、合併など業界再編を経て、大手損害保険会社の3大グループができています。
自然災害リスクが高まるなか、今後の成長領域として、新種保険や海外事業の強化を進めています。
転職・就職で押さえておきたい損害保険業界の動向、収入ランキング、採用市場をご紹介します。
損害保険業界の最新動向(2023年)
保険業とは
保険業とは、「不測の事故に備えようとする者から保険料の払込みを受け、所定の事故が発生した場合に保険金を支払うことを業とするもので、保険業(生命保険、損害保険)、共済事業、少額短期保険業及びこれらに附帯する保険媒介代理業、保険サービス業」(日本標準産業分類)のことです。
日本の保険には、大きく分けて生命保険と損害保険があります。
生命保険は人の生命を保障し、損害保険はものや財産の損害を補償します。
生命保険・損害保険ともに成熟期を迎え、市場規模は縮小傾向です。
各社は生き残りをかけて、業界再編や海外展開を加速しています。
損害保険
損害保険は事故や災害による損害の補償を提供します。
代表的な保険として、自動車保険や火災保険、地震保険などがあります。
損害保険業界では、合併や業務提携など大きな再編がありました。
現在は大手損害保険3グループが市場の9割近くを占めるようになっています。
損害保険会社
損害保険業界は、東京海上ホールディングス、MS&ADホールディングス、SOMPOホールディングスの3グループによる寡占状態が続いています。
企業のリスクに対応する「新種保険」がシェアを伸ばしています。
東京海上ホールディングス
国内1位。
生損一体経営に強みがあります。
- 設立:2002年4月2日
- 本社:東京都
- 従業員数:43,048人
- 平均年齢:43歳
- 東京海上日動火災保険
- 日新火災海上保険
- イーデザイン損害保険
- 東京海上日動あんしん生命保険
MS&ADインシュアランスグループホールディングス
国内2位。
機能別の再編を進めています。
- 設立:2008年4月1日
- 本社:東京都
- 従業員数:39,962人
- 平均年齢:49歳
- 三井住友海上火災保険
- あいおいニッセイ同和損保保険
- 三井ダイレクト損保保険
- 三井住友海上あいおい生命保険
- 三井住友海上プライマリー生命保険
SOMPOホールディングス
国内3位。
介護・ヘルスケア事業の強化を進めています。
- 設立:2010年4月1日
- 本店:東京都
- 従業員数:47,776人
- 平均年齢:43歳
- 損害保険ジャパン(損保ジャパン)
- セゾン自動車火災保険
- SOMPOひまわり生命保険
- SOMPOケア
JAグループ
全国共済農業協同組合連合会はJAグループの保険を一定に手がけています。
- 共栄火災海上保険
AIGジャパン・ホールディングス
- AIG損害保険
- アメリカンホーム医療・損害保険
ソニーフィナンシャルグループ
ソニーグループの子会社。
- ソニー損害保険(ソニー損保)
- ソニー生命保険
損害保険業界の収入ランキング
損害保険業上位20社
順位 | 企業名 | 正味収入保険料 (百万円) |
1 | 東京海上日動火災保険 | 2,288,170 |
2 | 損害保険ジャパン | 2,158,791 |
3 | 三井住友海上火災保険 | 1,579,325 |
4 | あいおいニッセイ同和損害保険 | 1,291,344 |
5 | 共栄火災海上保険 | 170,107 |
6 | AIG損害保険 | 152,469 |
7 | 日新火災海上保険 | 145,444 |
8 | ソニー損害保険 | 139,548 |
9 | セゾン自動車火災保険 | 58,185 |
10 | アクサ損害保険 | 56,374 |
11 | セコム損害保険 | 51,750 |
12 | アニコム損害保険 | 47,494 |
13 | アメリカンホーム医療・損害保険 | 38,078 |
14 | 三井ダイレクト損害保険 | 35,400 |
15 | イーデザイン損害保険 | 33,735 |
16 | SBI損害保険 | 32,506 |
17 | 楽天損害保険 | 17,491 |
18 | 大同火災海上保険 | 16,565 |
19 | 明治安田損害保険 | 14,822 |
20 | 日本住宅保証検査機構 | 11,514 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
損害保険業界の採用市場
損害保険会社の業務
損害保険会社の大きな業務として、営業業務と査定業務があります。
営業業務では、保険商品の販売を行っています。
査定業務では、保険金の支払いを行っています。
全国の拠点を本社の管理部門が支えています。
営業
多くの損害保険会社の営業部門は、リテール営業、法人営業、自動車営業に分かれています。
- リテール営業:代理店に対しての営業、代理店の支援、代理店の開拓
- 法人営業:大企業の顧客を担当
- 自動車営業:ディーラーやリース会社の代理店を担当
損害調査
事故が発生すると、すべての案件は損害調査部門で調査されます。
自動車保険や火災保険など保険の種類によって担当が分かれています。
アジャスターは、自動車保険における損害調査の専門家です。
アジャスターは、損害の確認だけでなく、示談交渉を行うこともあります。
コールセンター
コールセンターでは、問い合わせや事故受付など契約者との窓口を担当します。
特に通販型の損害保険会社では、さまざまな業務に対応しています。
- 保険に関する問い合わせ
- 契約変更の手続き
- 証券の再発行
- 事故受付
- 資料請求
資産運用
損害保険会社では、契約者からの保険料を運用し、収益を上げています。
損害保険業界における収入の多くは保険料ですが、利益については資産運用が重要な役割を担っています。
アクチュアリー
数理業務のプロフェッショナルです。
損害保険などの商品開発や資産運用など、幅広く活躍しています。
管理部門
本社の管理部門では、会社全体の管理業務を行っています。
- 経営企画
- 人事・総務
- 経理・財務
- 法務・コンプライアンス

損害保険業界の求人・転職
損害保険会社では、総合職、エリア総合職、一般職、専門職などさまざまな区分で募集が行われています。
損害保険業界は、海外損保会社のM&Aなどによって海外進出を加速させていることから、グローバルに活躍できる人材を求めています。
また女性のキャリア支援に積極的な企業が多く、管理職も増えています。
保険業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 44.7歳 (平均) |
所定内労働時間 | 151時間 | 151時間 | 151時間 |
残業 | 8時間 | 12時間 | 6時間 |
月収 | 244,100円 | 299,300円 | 390,900円 |
年間賞与等 | 409,900円 | 927,200円 | 1,243,200円 |
年収 | 3,339,100円 | 4,518,800円 | 5,917,800円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
20代の転職活動
転職エージェントなどの転職支援サービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーが転職をサポートしてくれます。
非公開・独自案件の求人紹介だけでなく、企業ごとの書類作成や面接対策のサポートなどで、選考通過率のアップが期待できます。
キャリアごとの転職支援
まとめ
損害保険会社は、福利厚生が充実していて、給与も高水準であることから、人気があります。
コース別人事の区分など、働き方によっては、待遇に格差も見られます。
女性社員が多く、ダイバーシティを推進し、働きやすい職場づくりに積極的な企業が多いといえます。




【参考】
・金融庁WEBサイト
・一般社団法人日本損害保険協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』