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弁護士・法律事務所の業界研究【概要・動向】

弁護士事務所は弁護士1人から開業することができます。

小規模事務所は個人や中小企業、大規模事務所は大手企業を主なクライアントとしています。

転職・就職で押さえておきたい弁護士・法律事務所の概要と動向についてご紹介します。

弁護士・法律事務所

日本全国すべての弁護士および弁護士法人は、各地の弁護士会にに入会すると同時に日本弁護士連合会に登録しなければなりません。

【弁護士数】

弁護士(正会員)数は、4万4,916人(2023年3月31日現在)となっています。

  • 男性:3万6,015人
  • 女性:8,901人

(日本弁護士連合会『弁護士白書2023年版』より)

弁護士事務所

弁護士事務所(法律事務所)には、弁護士1人が経営する個人事務所から101人以上の弁護士が所属する大規模事務所まであります。

弁護士1人の個人事務所が6割超を占め、101人以上の大規模事務所は11です。

弁護士法人の数

全国の弁護士法人数は1,598法人(2023年3月31日現在)です。

  • 法人設立件数:111件
  • 法人数:1,598法人
  • 社員数:3,718人
  • 使用人数:4,855人

規模別の事務所数

  • 1人事務所:11,299
  • 2人事務所:3,159
  • 3~5人事務所:2,632
  • 6~10人事務所:798
  • 11~20人事務所:261
  • 21~30人事務所:60
  • 31~50人事務所:40
  • 51~100人事務所:16
  • 101人以上事務所:11

(日本弁護士連合会『弁護士白書2023年版』より)

大規模弁護士事務所

小規模事務所は個人や中小企業をクライアントとして、相続や訴訟などを代理し、大手事務所では、大手・中堅企業をクライアントとして、M&Aや海外進出、海外税務などを受任するのが一般的です。

法務業務を人工知能(AI)などの技術で効率化するリーガルテックが進んでいます。

西村あさひ法律事務所

所属弁護士・外国弁護士数は600人を超える日本最大級の事務所です。

税理士や弁理士、パラリーガルやスタッフを含むと総勢1,500人に上ります。

  • 国内拠点:東京、名古屋、大阪、福岡、札幌
  • 海外拠点:タイ、中国、ベトナム、インドネシア、シンガポール他

アンダーソン・毛利・友常法律事務所

日本法資格弁護士610人のほか、外国法事務弁護士、弁理士などあわせて697人(2024年10月1日現在)が所属しています。

  • 国内拠点:東京、大阪、名古屋
  • 海外拠点:中国、シンガポール、ベトナム、タイ、イギリス

森・浜田松本法律事務所

弁護士740人(2024年10月1日現在)、スペシャリスト、スタッフで構成される法律事務所です。

アジア法務を強化しています。

  • 国内拠点:東京、大阪、名古屋、福岡、高松、札幌
  • 海外拠点:中国、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア

TMI総合法律事務所

弁護士、外国弁護士600人を超える、大手では後発ですが急成長中の法律事務所です。

  • 国内拠点:東京、名古屋、大阪、京都、神戸、福岡
  • 海外拠点:中国、ベトナム、ミャンマー、タイ、カンボジア、シンガポール

長島・大野・常松法律事務所

日本弁護士539人、外国弁護士54人(2024年10月1日現在)が所属する日本有数の総合法律事務所です。

  • 国内拠点:東京
  • 海外拠点:アメリア、シンガポール、タイ、ベトナム、中国

ベリーベスト法律事務所

所属弁護士348人、全国76拠点(2024年10月1日現在)を展開する法律事務所です。

  • 国内拠点:北海道・東北、関東、中部・東海、北陸、近畿、中国・四国、九州・沖縄
  • 海外拠点:バングラデシュ、ミャンマー

アディーレ法律事務所

過払い金返還請求訴訟業務で急成長した法律事務所です。

全国に60を超える拠点を構え、所属弁護士は約240人です。

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

完全に独立した形で外国法共同事業を立ち上げた総合法律事務所です。

弁護士約190人、金融分野からフィンテック・IoT/AIを含むイノベーション分野まで取り扱っています。

  • 国内拠点:東京、福岡
  • 海外拠点:アメリカ、イギリス、ドイツ

シティユーワ法律事務所

所属弁護士180人を超え、世界85カ国約60の法律事務所とのネットワークがあります。

  • 国内拠点:東京

大江橋法律事務所

弁護士数約160人(外国法事務弁護士を含む)が所属する総合法律事務所です。

  • 国内拠点:大阪、東京、名古屋
  • 海外拠点:中国

ベーカー&マッケンジー法律事務所

外資系大手ベーカーマッケンジーの日本拠点事務所。

弁護士約140人が所属、外国法共同事業事務所として国内最大の規模です。

弁護士事務所の取扱分野(例)

総合法律事務所では、専門分野でクオリティーの高いサービスを提供するとともに、横断型の案件については、各分野に精通した弁護士が連携するなどの対応をしています。

企業法務

企業法務には、債権回収や契約書作成などの一般企業法務から、M&A、コンプライアンス、株主総会対策、ファイナンス、危機管理などがあります。

大企業から中小零細企業まで、すべての企業がクライアント対象です。

M&Aなどは大事務所が得意とする分野で専門の弁護士を配置しています。

知的財産権

特許の登録申請は弁理士の役割ですが、特許庁の処分に対する審判手続きや行政訴訟の提訴、企業などの特許権侵害訴訟などは弁護士事務所が行います。

高い専門性が求められる分野で、ブティック型の法律事務所も多数あります。

倒産法

倒産法の分野で強いのは中堅規模の事務所です。

会社再生手続き、民事再生手続き、破産、特別清算などがあります。

弁護士は申立会社の代理人、管財人、監督委員などとして関与します。

税法

合併、株式交換、会社分割、買収、事業統合、資本参加などM&Aの検討には税務の問題が絡むため、大事務所は企業法務の一環として扱います。

訴訟代理人としての業務は、法人も個人もクライアント対象となります。

労働者・消費者問題

企業が事業再編などを実施する場合に従業員の雇用条件なども検討の必要があり、大事務所では労働法を企業法務の一環として扱います。

消費者問題については、多重債務者や出資法違反、詐欺罪などが代表的なケースです。

刑事事件

刑事事件だけで事務所を維持することは難しく、専門の事務所はほぼないといえます。

刑事事件では当番弁護士制度が重要な役割を果たしています。

弁護士のキャリア

若手弁護士の多くは、弁護士・法律事務所に所属していますが、企業への就職や独立するケースも増えています。

大手法律事務所

国内大手法律事務所では、M&Aや独禁法業務、労使関係や不動産取引、国際商取引などの一般企業法務から、バンキングやストラクチャードファイナンスといった金融法務、倒産・事業再生や訴訟業務、知的財産業務など、企業法務を幅広く取り扱っています。

総合法律事務所であっても特定の分野でキャリアを深めていくことが多くなるといえます。

外資系法律事務所

外資系法律事務所では日本進出をしている外資系企業の案件をメインに受任しています。

外国人弁護士が在籍しているケースが多く、国内業務をメインに行う場合でも、コミュニケーションにおいて語学力が求められます。

グローバルなネットワークを強みに国内大手企業からの案件も増加していて、国際的な業務における現地事務所との橋渡しの役割を担うこともあります。

準大手・中堅法律事務所

準大手・中堅法律事務所では、早くから案件の獲得や自立が求められます。

組織的なバックアップを求めるのではなく、自ら吸収して自らキャリアを作り出す姿勢、主体的な業務への取り組みが必要となります。

各業務部門が細分化されていない事務所が多く、横断的な業務経験を積める可能性が高くなります。

ブティック型法律事務所

金融法務・知的財産・倒産など企業法務のなかでも特定の分野に特化した専門性の強い法律事務所では、大手事務所に対抗できる質の業務を行っています。

競争が激化する弁護士業界で特定分野の専門性を高めるキャリアを築くことができます。

民事系法律事務所

一般民事系法律事務所では中小企業の経営者に対する法律的な側面からアドバイス、債権債務・親族相続・刑事といった個人業務を行います。

大勢のパラリーガルを擁し、債務整理やその他定型的な一般民事の案件を大量に扱う組織化された法律事務所も登場し、中途採用に対するニーズも高くなっています。

一般事業会社

企業内弁護士の仕事は契約法務・コンプライアンス・戦略法務・商事法務・訴訟法務など、多岐にわたります。

案件の主体者として関わりたい、一つの企業で長く働きたいという希望を実現するキャリアです。

金融専門職

金融商品取引法の知識や不動産証券化、キャピタルマーケッツ等の経験を活かして金融機関内の法務部門・コンプライアンス部門、商品組成部門や投資銀行部門などで専門職として活躍している弁護士もいます。

法務従事者の平均給与

区分25~29歳30~34歳51.2歳
(平均)
所定内労働時間172時間170時間155時間
残業11時間6時間1時間
月収451,100円455,700円770,800円
年間賞与等618,500円506,100円1,967,200円
年収6,031,700円5,974,500円11,216,800円

(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)

弁護士・法律事務所の採用市場

大手から中堅の法律事務所は安定的に中途採用が行われています。

また民事系法律事務所や新興法律事務所でも採用ニーズは高くなっています。

弁護士の就職難が続いたこともあり、企業のインハウスローヤー採用は非常に活発です。

今後、弁護士の活躍の場は、法律事務所だけではなく、一般事業会社に広がっていくことが考えられます。

法律事務所の転職活動

弁護士など専門性の高い職種の転職活動では、エージェントサービスの利用が一般的になっています。

管理部門・士業特化型転職エージェントのMS-Japanは、業界最大級の弁護士求人を保有しています。

法律事務所、大手上場企業、外資系企業、優良ベンチャー企業など、幅広いフィールドからキャリアを検討できます。

業界に精通した経験豊富なコンサルタントのサポートを受けることができます。

\業界最大級の求人数/

まとめ

司法試験の合格者が増えたことで、弁護士・法律事務所の転職・就職事情は大きく変わりました。

一般企業から行政機関など弁護士の活躍の場が拡大し、弁護士のキャリアは多様化しています。

業界天気図一覧(2025年)
採用市場と密接に関わる企業の業績。業界の動向は転職・就職活動を進めるうえで、重要な情報のひとつです。2025年度の主要業界天気予想を一覧にしました。

 

【参考】
・日本弁護士連合会
・各事務所ウェブサイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2025年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2025年版』