食品産業は規模が大きく、多くの業種に分類されています。
農産加工食品のパン・菓子業界は、国内市場は成熟し、競争が厳しくなっています。
転職・就職で押さえておきたいパン・菓子の業界動向、売上高ランキング、採用市場をご紹介します。
パン・菓子業界の最新動向(2023年)
食品業界とは
食品業界は生活に密着した基幹産業のひとつです。
「食料品製造業」と「飲料・たばこ・飼料製造業」の二部門で構成され、食品の種類には生鮮食品と加工食品があり、日本の食の安定供給と安全性に大きな役割を担っています。
加工食品は工程上から、一次加工食品、二次加工食品、三次加工食品に分けられます。
パン・菓子業界は、小麦や乳製品、カカオなど原材料の多くを海外から輸入しているため、原材料価格や為替の変動による影響を受けやすいといえます。
メーカー各社は高付加価値商品の開発に力を入れています。
加工食品の種類
- 一次加工食品
白米、砂糖、缶詰、味噌、醤油、食用油など - 二次加工食品
食パン、麺類、バター、マヨネーズ、ソースなど - 三次加工食品
菓子、冷凍食品、インスタント食品など
農産加工食品
- 麦類
- 粉類
- でん粉
- 野菜加工品
- 果実加工品
- 茶、コーヒー及びココアの調整品
- 香辛料
- めん・パン類
- 穀類加工品
- 菓子類
- 豆類の調整品
- 砂糖類
- その他の農産加工食品
(参考:総務省「日本標準商品分類」)
製パン
製パンメーカーやチェーン店、ベーカリーショップなどが事業を展開しています。
小麦の価格高騰が懸念材料となっています。
山崎製パン
パン、和洋菓子の国内シェアトップ。
商品開発力の高さと販売店網の強さからパン市場をリードしています。
- 設立:1948年6月21日
- 本社:東京都
- 従業員数:19,985人
フジパングループ本社
グループ事業会社でパンや和洋菓子の製造・販売を行っています。
- 設立:1951年2月6日
- 本社:愛知県
- 従業員数:約14,740人
敷島製パン
ブランド名は「Pasco」。
超熟はロングセラーです。
- 創業:1920年6月
- 本社:愛知県
- 従業員数:3,849人
第一屋製パン
ポケモンパンがヒット。
- 創業:1947年6月2日
- 本社:東京都
- 従業員数:938人
- 平均年齢:38歳
菓子
菓子は加工食品のなかでも多彩な種類があり、新商品が次々と生み出されています。
メーカーも大手から中小までさまざまな企業があります。
国内市場は縮小傾向が続き、大手は海外市場の開拓を本格化させています。
明治
明治ホールディングスの完全子会社。
チョコレートの最大手です。
菓子のほかに、牛乳・乳製品や一般用医薬品などの事業を展開しています。
- 設立:1917年12月21日
- 本社:東京都
- 従業員数:10,464人
- 平均年齢:41歳
江崎グリコ
チョコレート、アイスの大手。
ガムやビスケット、スナック菓子も展開しています。
東南アジアに力を入れています。
- 設立:1929年2月
- 本社:大阪府
- 従業員数:5,321人
- 平均年齢:43歳
森永製菓
ロングセラー商品が多く、アイス事業も業界トップクラス。
海外戦略を積極的に進めています。
- 設立:1910年2月23日
- 本社:東京都
- 従業員数:2,937人
- 平均年齢:43歳
ロッテ
ガムの最大手。
アイスやチョコレートにも強みがあります。
- 創業:1948年6月
- 本社:東京都
- 従業員数:2,491人
ブルボン
ビスケットの大手。
飲料も展開しています。
- 創立:1924年11月20日
- 本社:新潟県
- 従業員数:4,262人
- 平均年齢:38歳
不二家
山崎製パンの子会社。
洋菓子と製菓・飲料部門に分かれて展開しています。
- 設立:1938年6月
- 本社:東京都
- 従業員数:2,176人
- 平均年齢:35歳
スナック菓子・米菓
スナックはポテトやトウモロコシ、豆などを主原料、米菓は米を原料とする菓子です。
原材料価格の高騰が懸念されるなか、各社は価格改定や高付加価値商品の開発を進めています。
カルビー
スナック菓子の最大手。
北米や中国にも展開しています。
- 設立:1949年4月30日
- 本社:東京都
- 従業員数:4,311人
- 平均年齢:40歳
亀田製菓
米菓の最大手。
北米、中国、東南アジアなどにも展開し、海外売上の比率を高めています。
- 設立:1957年8月
- 本社:新潟県
- 従業員数:3,776人
- 平均年齢:43歳
湖池屋
スナック菓子大手。
日清食品ホールディングスの子会社です。
- 設立:1958年1月
- 本社:東京都
- 従業員数:909人
- 平均年齢:39歳
ヤマザキビスケット
山崎製パンの子会社。
- 設立:1970年10月
- 本社:東京都
- 従業員数:1,000人
和洋菓子
菓子は水分含有率により「生菓子」「半生菓子」「干菓子」と分類されます。
コンビニと菓子専門店とが競合するようになっています。
井村屋
井村屋グループは井村屋や井村屋フーズなどの事業会社で構成されています。
- 設立:2010年10月
- 本社:三重県
- 従業員数:617人
中村屋
和洋菓子やパンの製造のほかに、飲食店も展開しています。
- 設立:1923年4月1日
- 本社:東京都
シャトレーゼホールディングス
洋菓子、和菓子、アイスクリーム、パンなどの製造およびFCを全国展開しています。
- 設立:1964年2月13日
- 本社:山梨県
- 従業員数:3,000人
モロゾフ
洋菓子の製造やレストラン事業を展開しています。
- 設立:1931年8月8日
- 本社:兵庫県
- 従業員数:539人
赤城乳業
アイスクリーム専業メーカー。
「ガリガリ君」が人気です。
- 設立:1961年12月20日
- 本社:埼玉県
パン・菓子業界の売上高ランキング
パン製造
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | 山崎製パン | 1,052,972 |
2 | 敷島製パン | 154,327 |
3 | フジパン | 139,000 |
4 | 神戸屋 | 39,097 |
5 | リョーユーパン | 35,387 |
6 | 武蔵野フーズ | 33,907 |
7 | オイシス | 26,893 |
8 | ヴィ・ド・フランス | 24,279 |
9 | 第一屋製パン | 23,864 |
10 | エフベーカリーコーポレーション | 23,754 |
11 | ドンク | 22,846 |
12 | フランソア | 21,751 |
13 | フジパンストアー | 20,000 |
14 | イケダパン | 18,300 |
15 | 日糧製パン | 17,167 |
16 | 九州フジパン | 14,760 |
17 | オキコ | 14,193 |
18 | ヒガシヤデリカ | 13,098 |
19 | 伊藤製パン | 12,200 |
20 | たけや製パン | 8,796 |
菓子製造
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | 明治 | 608,974 |
2 | 江崎グリコ | 338,571 |
3 | カルビー | 245,419 |
4 | ロッテ | 187,561 |
5 | 森永製菓 | 181,251 |
6 | 不二家 | 104,751 |
7 | ブルボン | 94,451 |
8 | 亀田製菓 | 85,163 |
9 | 三幸製菓 | 57,961 |
10 | 赤城乳業 | 41,699 |
11 | 湖池屋 | 40,205 |
12 | 井村屋 | 34,534 |
13 | ヤマザキビスケット | 33,657 |
14 | 中村屋 | 33,058 |
15 | 東ハト | 28,564 |
16 | モンテール | 27,962 |
17 | モロゾフ | 27,207 |
18 | でん六 | 26,570 |
19 | カンロ | 25,663 |
参考 | シャトレーゼ(21/3) | 79,320 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
食品業界の採用市場
食品メーカーの業務
パン・菓子メーカーの業務は、商品開発から製造、営業などさまざまな部門で重要な役割を担っています。
商品開発(マーケティング)
消費者の好みや流行を敏感に取り入れ、商品を企画し、開発を行います。
市場調査、コンセプト開発、試作、マーケティングプラン、市場投入、検証などの仕事があります。
研究開発(技術部門)
国内市場の縮小傾向から、メーカー各社は積極的に新商品の開発に取り組んでいます。
この仕事には、高度は専門知識や技術だけでなく、新しい商品を生み出す探求心も求められます。
製造
業種や企業規模により製造現場の業務は変わってきます。
パン・菓子業界では手作りも多く、機械化されていない、職人の作業も多く残っています。
生産技術
商品を製造するための工程設計、生産性検討、設備計画、生産性指標の検証、食品加工技術開発などの仕事があります。
工場など現場担当者とのコミュニケーションも重要です。
生産・品質管理
生産管理は高品質で安全な食品を経済的に生産するための管理を、品質管理は食品の安全性、栄養機能、食べやすさを経済的に実現するための管理を行います。
営業・販促
食品メーカーの営業で代表的なものは、食品卸会社への営業、スーパーやコンビニ、百貨店など小売店への営業、レストランなど外食産業への営業などがあります。
営業先により、売り場の提案から販促支援、メニュー提案などさまざまな業務があります。
食品業界の求人・転職
食品業界は新卒から中途採用、文系・理系ともに安定して高い人気があります。
食品メーカーには優良企業が多く、地方の中小企業であっても高収益企業が少なくありません。
地方から中央に進出するケースも多く、求める人材に大企業と中小企業の差はありません。
食料製造業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 43.2歳 (平均) |
所定内労働時間 | 166時間 | 166時間 | 165時間 |
残業 | 16時間 | 20時間 | 14時間 |
月収 | 211,900円 | 240,400円 | 266,100円 |
年間賞与等 | 319,200円 | 497,500円 | 559,100円 |
年収 | 2,862,000円 | 3,382,300円 | 3,752,300円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
食品業界の転職活動
エージェントサービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーのサポートを受けることができます。
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まとめ
食品業界は一般的に不況に強いといわれ、転職・就職でも人気があります。
これまでは大手企業が主流でしたが、地域に根付いた中小企業にも注目が集まっています。
さまざまな業態がある食品業界は、仕事や働き方も多彩です。
【参考】
・農林水産省ウェブサイト
・総務省ウェブサイト
・一般社団法人日本パン工業会
・全日本菓子協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』