心理系にはたくさんの民間資格がありますが、公認心理師は心理系で唯一の国家資格です。
メンタルヘルス不調など心の健康問題が増加し、複雑化するなかで新たに創設された資格です。
まだ新しい資格ですが、これからカウンセリング業界を目指す人にとって目標となる資格といえます。
社会的なニーズが高まる公認心理師の資格についてご紹介します。
公認心理師の資格
公認心理師とは
公認心理師とは、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識および技術をもって、心理に関する相談や助言、指導などを行う資格です。
心理系で唯一の国家資格です。
資格を取得するには試験に合格して、登録簿に登録される必要があります。
公認心理師が行う業務
- 心理に関する支援を必要とする人の心理状態の観察、その結果の分析
- 心理に関する支援を必要とする人に対する、その心理に関する相談および助言、指導その他の援助
- 心理に関する支援を必要とする人の関係者に対する相談および助言、指導その他の援助
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供
キャリアでの活かし方
公認心理師は「医療・保健」「福祉」「教育」「司法・犯罪」「産業・労働」など幅広い分野で活かせる資格です。
- 病院・クリニック
- 保健所・保健センター
- 福祉施設
- 学校・教育委員会
- 家庭裁判所・少年院
- 地方公務員
- 一般企業
- メンタルヘルス関連企業
- 独立開業 など
公認心理師の資格を取るには
公認心理師になるルート
公認心理師の資格を取得するには、公認心理師試験に合格しなければなりません。
また公認心理師試験を受けるためには、受験資格を満たす必要があります。
まずは大学と大学院で学び、公認心理師に必要となる知識を身につけることが基本となります。
公認心理師試験の受験資格を取得する
公認心理師試験の受験資格を取得するために必要なカリキュラムに対応している大学(または専門学校)で4年学び、さらに大学院で2年学びます。
基本的には大学で学んだあとに大学院で学ぶ必要がありますが、実務経験が認められている施設が一部あります。
- 大学 + 大学院
- 大学 + 2年以上の実務経験(文部科学省・厚生労働省の認定を受けた施設)
公認心理師試験に合格する
必要な科目を修了して大学(専門学校)または大学院を卒業するか、認定を受けた施設において2年以上の実務経験で国家試験の受験資格を得ることができます。
国家試験に合格すると、公認心理師として登録できるようになります。
公認心理師の資格を取得する
公認心理師として登録簿に登録されると、公認心理師の資格を取得することができ、公認心理師の名称を使って(名称独占資格)、仕事ができるようになります。
公認心理師の養成学校
心理学部や心理学科など公認心理師になるためのカリキュラムに対応している大学と大学院で指定された科目を履修します。
心理学部や心理学科があっても公認心理師になるためのカリキュラムに対応していない大学もありますので、よく確認する必要があります。
養成学校には国公立や私立の大学(または専門学校)、大学院があります。
通信課程のある大学であれば、働きながら資格取得を目指すことができます。
一般入試の試験科目の例
- 国公立大学:共通テスト
- 私立大学:国語+英語+他1科目選択
- 私立大学:小論文+英語+面接 など
一般入試以外の種類
- 自己推薦
- 総合型選抜(AO入試) など
学校の情報収集
全国の大学、短期大学、専門学校など幅広い学校が掲載されている情報サイトでは、資格や所在地など希望の条件で学校を検索して、資料請求をすることができます。
学校の特徴や出願・入試情報、学費・奨学金情報など役立つ情報をまとめて収集できて便利です。
公認心理師になるために必要な科目
公認心理師になるために必要な知識や技能を大学(4年間)と大学院(2年間)で習得します。
大学の指定科目
大学では心理学を基礎から学びます。
- 公認心理師の職責
- 心理学概論
- 臨床心理学概論
- 心理学研究法
- 心理学統計法
- 心理学実験
- 知覚・認知心理学
- 学習・言語心理学
- 感情・人格心理学
- 神経・生理心理学
- 社会・集団・家族心理学
- 発達心理学
- 障害者・障害児心理学
- 心理的アセスメント
- 心理学的支援法
- 健康・医療心理学
- 福祉心理学
- 教育・学校心理学
- 司法・犯罪心理学
- 産業・組織心理学
- 人体の構造と機能および疾病
- 精神疾患とその治療
- 関係行政論
- 心理演習
- 心理実習(80時間以上)
大学院の指定科目
大学院では実践的な実習や研修を中心に学びます。
- 保健医療分野に関する理論と支援の展開
- 福祉分野に関する理論と支援の展開
- 教育分野に関する理論と支援の展開
- 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
- 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
- 心理的アセスメントに関する理論と実践
- 心理支援に関する理論と実践
- 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践
- 心の健康教育に関する理論と実践
- 心理実践実習(450時間以上)
公認心理師のプログラム施設
公認心理師になるには、大学を卒業して、大学院で学びを深めるルートが基本ですが、実務経験で受験資格を取得できるルートもあります。
法令で定められた施設は、学校や病院、診療所、保健所、保健センターなど公認心理師の活躍が期待される施設です。
「実務経験プログラム」が用意された認定施設で、大学院での学び同等以上の知識と技能を習得します。
認定を受けた施設はまだ少数です。
認定を受けた施設
- 少年鑑別所および刑事施設
- 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院
- 裁判所職員総合研修所および家庭裁判所
- 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ
- 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック
- 学校法人川崎学園 川崎医科大学付属病院
- 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター
- 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園
- 社会福祉法人楡の会
公認心理師資格取得の特例措置
公認心理師試験の受験資格を取得する方法として特例措置が設けられています。
既に大学や大学院に進学していたり、卒業している社会人が使えるルートです。
資格取得の方法
- 2017年9月15日より前に大学院で指定科目を履修(6科目)
- 2017年9月15日より前に大学院に入学して、2017年9月15日以後に指定科目を履修(6科目)
- 2017年9月15日より前に4年制大学で指定科目を履修(12科目)+2017年9月15日以後に大学院で指定科目を履修(10科目)
- 2017年9月15日より前に4年制大学で指定科目を履修(12科目)+認定施設で2年以上の実務経験
公認心理師の国家試験
公認心理師試験の概要
公認心理師試験は指定試験機関・指定登録機関として一般財団法人日本心理研修センターが実施しています。
受験資格
- 4年制大学(25科目)+大学院(10科目)を履修
- 4年制大学(25科目)+認定施設で2年以上の実務経験
※特例措置あり
試験日
3月(2024年)
試験地
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、岡山県、福岡県
試験内容
筆記試験
- 公認心理師の職責の自覚
- 問題解決能力と生涯学習
- 他職種連携・地域連携
- 心理学・臨床心理学の全体像
- 心理学における研究
- 心理学に関する実験
- 知覚および認知
- 学習および言語
- 感情および人格
- 脳・神経の働き
- 社会および集団に関する心理学
- 発達
- 障害者(児)の心理学
- 心理状態の観察および結果の分析
- 心理に関する支援
- 健康・医療に関する心理学
- 福祉に関する心理学
- 教育に関する心理学
- 司法・犯罪に関する心理学
- 産業・組織に関する心理学
- 人体の構造と機能および疾病
- 精神疾患とその治療
- 公認心理師に関係する制度
- その他
合格率
60%程度
問い合わせ
一般財団法人日本心理研修センター
公認心理師の勉強法
公認心理師の試験対策
公認心理師試験を受験するには、大学と大学院で指定科目を履修する必要があります。
試験対策としては、独学や資格・通信講座で勉強する方法があります。
学歴や実務経験などによって学び方は変わってきます。
受験資格の有無や学習の状況、かけられる時間・費用など自分の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
テキストや過去問題集が市販されていますので、独学でも試験の合格を目指すことができます。
独学に不安があったり、効率的に苦手科目を克服したいという人は資格・通信講座を上手に活用することをおすすめします。
資格の取得期間
受験資格を満たすために大学と大学院での勉強には6年間かかります。
まずは該当する資格取得ルートの受験資格を満たしているかを確認する必要があります。
受験資格のある人が試験に合格するためには、半年~1年程度の準備期間はあった方がよいでしょう。
公認心理師試験の対策書
公認心理師のテキスト
公認心理師の過去問題集
公認心理師の一問一答
公認心理師試験の対策講座
LEC東京リーガルマインドの公認心理師試験対策講座では、合格に必要な知識を習得するためのラインナップが用意されています。
入門レベルから発展レベルまで必要な科目だけを選んで勉強することもできます。
他の心理職の資格
公認心理師は新しい資格ですが、以前からある心理職の民間資格は臨床心理士です。
公認心理師と共通する内容が多く、両方の資格を取得する人も少なくありません。
臨床心理士
日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格です。
高度な心理学的知識と技能を用いて、専門業務を行います。
- 臨床心理査定
- 臨床心理面接
- 心療心理的地域援助
- 1.~3.に関する研究・調査
まとめ
公認心理師の国家資格が創設されたのは、こころの問題や健康が重要な課題になっているという社会的な背景があります。
2018年に第1回の試験が実施された公認心理師はまだ新しい資格ですが、幅広い分野で活用が進み、活躍することが期待されています。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・一般財団法人日本心理研修センター