海運には、国内の海上輸送を行う内航海運と、国内と海外または外国間の輸送を行う外航海運があります。
就活・転職で押さえておきたい海運業界の概要と動向についてご紹介します。
海運業界
海運は、国内の海上輸送を行う内航海運と、国内と海外または外国間の輸送を行う外航海運に区別されます。
さらに外航海運は定期船と不定期船に区分されます。
国内の海運は「日本郵船」「商船三井」「川崎汽船」の大手3社を中心に、準大手・中堅が並びます。
【世界のコンテナ船大手】
- MSCグループ(スイス)
- A.P.モラー・マースク(デンマーク)
- CMA-CGM(フランス)
- COSCO(中国)
- ハバックロイド(ドイツ)
海運大手
国際貨物輸送の大きなウェイトを占める外航海運は、海運大手「日本郵船」「商船三井」「川崎汽船」の3社が売上高の約9割と、寡占状態となっています。
コンテナ運賃の高騰で、3社ともに好業績となりましたが、物流の正常化で運賃は下落しました。
日本郵船
海運最大手。
陸運・空運にも強く、総合物流事業を世界展開しています。
三菱グループの発祥会社です。
- 設立:1885年9月29日
- 本店:東京都
- 売上高:2兆6,160億円
- 従業員数:35,502人
- 平均年齢:40歳
商船三井
海運大手。
不定期船に強みがあります。
海洋資源開発や洋上風力など環境事業も進めています。
- 設立:1884年
- 本社:東京都
- 売上高:1兆6,119億円
- 従業員数:8,748人
- 平均年齢:38歳
川崎汽船
海運大手。
コンテナ船事業を強化し、グローバル化の推進に力を入れています。
- 設立:1919年4月5日
- 本社:東京都
- 本店:兵庫県
- 売上高:9,426億円
- 従業員数:5,406人
- 平均年齢:39歳
海運準大手・中堅
海運各社は船舶を所有するほか、船主(オーナー)から調達したり、荷主企業と共有保有するなどして、需要に応じて船を運航します。
NSユナイテッド海運
日本郵船系。
不定期船が主力です。
- 設立:1950年4月1日
- 本社:東京都
- 売上高:2,508億円
- 従業員数:657人
- 平均年齢:40歳
飯野海運
タンカーが主力。
原油やケミカル船に強みがあります。
- 創業:1899年7月
- 本社:東京都
- 売上高:1,413億円
- 従業員数:669人
- 平均年齢:38歳
ENEOSオーシャン
ENEOSの子会社。
国外および国内が主要航路です。
- 設立:2014年4月1日
- 本社:神奈川県
- 売上高:675億円
- 従業員数:349人
明治海運
外航主体。
タンカーや自動車専用船、コンテナ船等を保有しています。
- 設立:1911年5月
- 本社:兵庫県
- 売上高:580億円
- 従業員数:486人
- 平均年齢:36歳
川崎近海汽船
川崎汽船の子会社。
内航、フェリーを主力として、アジアなど近海輸送も行っています。
- 設立:1966年5月1日
- 本社:東京都
- 売上高:497億円
- 従業員数:482人
- 平均年齢:40歳
乾汽船
イヌイ倉庫と乾汽船が統合。
中小型を中心に自社運行しています。
- 設立:1925年10月19日
- 本社:東京都
- 売上高:442億円
- 従業員数:174人
- 平均年齢:45歳
共栄タンカー
日本郵船系。
外航タンカーが主力です。
- 設立:1949年7月1日
- 本社:東京都
- 売上高:142億円
- 従業員数:63人
- 平均年齢:40歳
東京汽船
東京湾全域の曳船事業。
フェリーや観光船も運航しています。
- 設立:1947年5月5日
- 本社:神奈川県
- 売上高:118億円
- 従業員数:466人
- 平均年齢:40歳
その他
各分野に強みを持つ海運会社が運航しています。
東海運
資材輸送に強み。
総合物流を展開しています。
- 設立:1917年12月
- 本社:東京都
- 売上高:414億円
- 従業員数:847人
- 平均年齢:46歳
東海汽船
伊豆七島への生活・観光航路。
- 設立:1889年11月15日
- 本社:東京都
- 売上高:139億円
- 従業員数:359人
- 平均年齢:43歳
コンテナ船連合
日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船事業を統合し、コンテナ船事業統合会社「ONE」の事業をスタートしました。
オーシャン・ネットワーク・エクスプレス・ホールディングス(ONE)
2018年4月に事業を開始。世界7位。
大幅な投資計画を発表しています。
世界のコンテナ船連合
- 2Mアライアンス
・MSC
・A.P.モラー・マークス - オーシャン・アライアンス
・CMA-CGM
・COSCO
・エバーグリーン マリン - ザ・アライアンス
・ハパックロイド
・HMM
・陽明海運
海運会社の職種
海運会社には船に乗る仕事と陸上での仕事、事業を統括する本社等の仕事があります。
船に乗る船員の資格は船の大きさや航海範囲によって定められています。
職員(オフィサー)になるためには、国家試験に合格して海技士の資格を取得する必要があります。
職員(オフィサー)
- 船長
- 航海士
- 機関長
- 船舶機関士
- 通信長
- 無線通信士
部員(クルー)
- 甲板部
- 機関部
- 無線部
- 事務部
水運業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 44.9歳 (平均) |
所定内労働時間 | 164時間 | 160時間 | 161時間 |
残業 | 11時間 | 15時間 | 9時間 |
月収 | 260,800円 | 304,900円 | 404,100円 |
年間賞与等 | 444,900円 | 955,200円 | 1,304,000円 |
年収 | 3,574,500円 | 4,614,000円 | 6,153,200円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
船員の就職支援
船員については、一般の労働者とは異なる法律が定められています。
職業紹介についても、厚生労働省のハローワークとは別に国土交通省の各地方運輸局等船員職業安定窓口が行っています。
海のハローワーク
船員になろうとする人を対象とした海のハローワークが全国の港町を中心に設置されています。
船員に仕事に詳しいスタッフが就職相談から求職活動のサポートまで行っています。
船員就職のためのセミナー・面接会
船員の雇用マッチングのために、合同企業説明会や就職面接会などが実施されています。
就職を希望する人はもちろん、まだ迷っている人や経験はないけれど、興味はあるという人は、直接、話を聞くことができるチャンスですので、積極的に活用することをおすすめします。
問い合わせ:国土交通省海事局船員政策課雇用対策室
まとめ
海運は景気動向や燃料の市況、為替変動などに影響を受けやすい産業といわれます。
海運は大量の貨物を輸送できることが強みです。石油などの資源や自動車などの世界貿易は、海運が支えています。
今後は、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが急がれますので、各社は大規模な投資が必要となりそうです。
【参考】
・国土交通省ウェブサイト
・公益財団法人日本海事センター
・各企業公式サイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』