社会保険労務士は労務管理のスペシャリストとして人気の国家資格です。
独立開業も可能な資格ですが、20代・社会人では転職などのキャリアチェンジやキャリアアップに活用することをおすすめします。
企業内で活躍の場を広げる社会保険労務士の資格についてご紹介します。
社会保険労務士の資格
社会保険労務士とは
社会保険労務士は、労務管理のアドバイスや指導、労働・社会保険に関する法令に基づき書類作成などを行います。
社会保険労務士のなかには、開業するのではなく、一般企業に勤め、人事・労務・総務などの関連部署に所属している企業内社会保険労務士がいます。
資格を取ることを奨励し、資格手当を支給する企業もあります。
資格を保有していても、他の従業員と変わらない業務をしている社会保険労務士はたくさんいますが、専門家として社内で評価されますし、転職でも有利になります。
企業内社会保険労務士の業務
- 社内の労働・社会保険業務
- 就業規則や人事制度などの作成や変更
- 労務管理
- その他の人事・労務業務 など
人事部門
人事・労務管理や就業規則の作成、賃金制度、評価制度の構築などで社会保険労務士の知識を活用できます。
総務部門
社会保険の事務は人事・総務系の部署で担当しています。
企業と関係が深い年金制度や雇用保険などの専門知識を活用できます。
給与計算
給与計算は企業で必ず発生する業務です。
システム化やアウトソーシングを行う企業も増えていますが、社内の専門家として知識を活かすことができます。
社会保険労務士の資格を取るには
社会保険労務士の国家試験
社会保険労務士になるためには、社会保険労務士試験の合格により社会保険労務士となる資格を取得しなければなりません。
資格を取得して、社会保険労務士として働くためには、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録を受けることが必要となります。
登録と同時に、都道府県社会保険労務士会の会員になります。
受験資格
- 一定の学歴があること
・大学、短期大学の卒業
・大学における修得単位数
・専門学校の卒業
・厚生労働大臣が認めた学校の卒業 など - 学歴を問わず通算3年以上の労働社会保険に関する実務経験があること
- 他の国家試験等に合格していること
・社労士試験以外の国家試験
・司法試験予備試験等
・行政書士試験
いずれかを満たしていることが必要です。
試験日
年1回(8月)
試験地
北海道、宮城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、福岡、熊本、沖縄
試験内容
- 選択式:各問ごとに空欄があり、与えられた選択肢の中から選んで空欄を埋める
- 択一式:5肢択一
試験科目
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
合格率
7%程度
問い合わせ
全国社会保険労務士会連合会 社会保険労務士試験センター
社会保険労務士の試験内容
社会保険労務士試験は8科目で10分野から出題されます。
基本はもちろんですが、改正点は出題される可能性が高いので、新聞などでも最新情報をおさえておく必要があります。
労働基準法
労働基準法は労働条件の最低基準などを定めた法律です。
総則、労働契約、労働時間・休憩・休日及び年次有給休暇、就業規則からの出題率が高く、判例からも出題されます。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は労働基準法と一緒に出題され、例年数問の出題です。
安全衛生管理体制についての出題が中心で、労働者の就業にあたっての措置、健康の保持増進などもポイントです。
労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法は一般的に労災保険法と呼ばれる法律です。
保険給付に関する出題が多く、改正点をしっかりチェックしておく必要があります。
雇用保険法
雇用保険法は雇用全体の安定を図ることを目的とする法律です。
雇用保険法からは失業給付等は継続して出題されています。
給付金や助成金、手続きや届出に関してもよく出題されます。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
労働保険徴収法は労働保険の保険料の額及び納付の手続きについて定めた法律です。
一般的には徴収法と呼ばれます。
労働保険料の納付の手続きは、具体的に保険料額の計算や納付金額についても理解する必要があります。
健康保険法
健康保険は被保険者の業務外の事由による疾病、負傷、死亡又は分娩に関して保険給付を行う社会保険制度です。
健康保険法からは全般的に出題されますので、十分な理解が必要です。
厚生年金保険法
厚生年金保険法は原則として報酬比例の年金を支給する制度です。
厚生年金保険法からは保険給付からの出題が多く、改正や経過措置などを理解しておく必要があります。
国民年金法
国民年金は公的年金制度共通の基礎年金です。
国民年金法からは被保険者、給付、保険料から万遍なく出題されます。
労務管理その他の労働に関する一般常識
労働管理その他の労働に関する一般常識については、最新の労働白書の内容を理解しておくことが必要です。
社会保険に関する一般常識
社会保険に関する一般常識については、社会保険全般の幅広い知識が必要になります。
厚生白書などに目を通しておくことが必要です。
社会保険労務士の資格勉強
資格取得の勉強法
社会保険労務士試験に合格して資格を取得するには、独学や資格・通信講座で勉強する方法があります。
どの方法であっても、ある程度まとまった勉強時間を確保しなければなりません。
自分の状況やかけられる時間、費用などに応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
試験問題は法改正などの影響を受けますので、長期計画ではなく、できるだけ短期計画で臨むことをおすすめします。
教材はたくさんありますが、自分に合ったものを見つけ、学習のステージにより組み合わせるなどして効率的に進めましょう。
資格の取得期間
社会人であれば仕事後や休日に勉強の時間を確保する必要があります。
人事・労務関係の仕事や法律の学習経験がある人、離職中など時間を確保できる人は1年から1年半、それ以外の人は2年程度を目標として準備期間を取るとよいでしょう。
通学・資格スクール
通学講座や資格スクールにはさまざまなタイプがあります。
平日や休日、夜間に開催されるコースがあり、6ヵ月から10か月くらいのカリキュラムが一般的です。
試験直前の短期講座などもあり、ポイントを絞った内容になっています。
通信講座
通信講座は通学と独学の中間的な内容といえます。
スクーリングやスクール講師のDVDなど通学講座の学習環境に近い方法を取り入れる講座も増えています。
独学
独学だけで社会保険労務士試験に合格する人は少数だといえますが、独学でも合格することはできます。
身近に相談できる資格者がいるなど、モチベーションを維持することが大切です。
合格のための学習ポイント
通学、通信、独学いずれの方法でも試験に合格することはできます。
自分に最適な方法で勉強することが大切になります。
効率的に最短で合格するために共通して必要なポイントは3つです。
基本テキストをマスターする
いろいろなテキストに手を出すのではなく、講座の教材や自分がわかりやすいと思ったテキストを重点的に学習することをおすすめします。
過去問題集を解く
過去問を10回以上反復して、正解率が8割を超えるようになれば、合格レベルに近くなっていると考えられます。
模擬試験を受験する
本試験前に模擬試験が実施されますので、1回は受験しておくとよいでしょう。
最新の試験傾向を知ることができますので、過去問と同様にしっかり押さえておくことが重要です。
働きながら短期間で資格取得を目指したいけれど、独学には不安があるという人には、お手頃価格の通信講座を上手に活用することをおすすめします。
まとめ
社会保険労務士試験は簡単ではありませんが、人事・総務系の仕事に転職しようと考えている人や社内でキャリアアップしたい人にとって評価される資格であることは間違いありません。
明確な目標や覚悟があれば、チャレンジする価値がある資格です。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・社会保険労務士試験オフィシャルサイト
・全国社会保険労務士会連合会