日本の漁業・水産業は生産量、従事者ともに減少傾向が続いています。
世界的に漁業の持続可能性が重視されるようになり、デジタル技術を活用した養殖の高度化や生産性向上など、新たな取り組みが進められています。
転職・就職で押さえておきたい水産業界の概要と動向についてご紹介します。
水産業界の最新動向(2023年)
漁業と水産業
漁業とは、自然繁殖している水産動植物を採捕したり、人工施設で水産動植物を養殖する事業のことです。
水産業は、水産物の生産に加えて、水産加工や流通など周辺産業が含まれます。
日本の漁業は近海漁業が多くなっていますが、漁獲量は減少傾向です。
近年では養殖が盛んになり、参入する企業が増加すると見られています。
漁業
- 漁業
・海面漁業
・内水面漁業 - 水産養殖業
・海面養殖業
・内水面養殖業
水産業
- 漁業
- 養殖業
- 加工業
- 卸売業
- 小売業
個人の漁業経営
日本の漁業の多くは、個人経営です。
漁業従事者の減少や高齢化が問題となっています。
生産性を高めて、安定した所得を確保できることが、世代交代の鍵となりそうです。
日本漁業の悩み
- 漁村の過疎高齢化
- 水産資源の減少
- 水産物の消費量の減少
- 養殖生産量の減少
漁業協同組合
漁協は個人経営の漁業者を支える事業を行っています。
全漁連と県漁連の系統があります。
漁協の主な事業
- 水産資源の管理
- 水産に関する経営や技術の指導
- 組合員に対する物資の供給
- 組合員の漁獲物・生産物の加工、販売
- 漁場利用の調整
全漁連
全国漁業協同組合連合会。
全国の沿岸漁業協同組合、都道府県漁業協同組合連合会から組織されています。
県漁連
都道府県ごとに設置されています。
全国的に漁協の合併が進められ、県内すべての漁協が合併をした場合には、県漁連は解散しています。
企業の漁業経営
日本の漁業は、企業でも利益を出すことが難しい状況です。
マルハニチロや日本水産、極洋などの大手は漁業・養殖から調達・販売、加工・食品まで一貫して行っています。
マルハニチロ
水産の最大手。
漁業、養殖のほかに冷凍食品においてもトップクラスです。
海外事業にも強みがあります。
- 従業員数:12,352人
- 平均年齢:42歳
日本水産
水産老舗。
水産物に特化した加工食品に強みがあります。
海外事業の選択と集中を進めています。
- 従業員数:9,662人
- 平均年齢:43歳
極洋
水産大手。
漁業や貿易、加工食品に強みがあります。
- 従業員数:2,208人
- 平均年齢:41歳
水産加工
魚の保存性を高めるために、さまざまな水産加工が発達してきました。
水産加工品には、すり身、びん・缶詰、食用加工品などがあります。
東洋水産
魚肉ソーセージなど。
現在は即席めんを主力とする総合食品メーカーです。
- 従業員数:4,839人
- 平均年齢:41歳
はごろもフーズ
ツナ缶の大手。
- 従業員数:714人
- 平均年齢:40歳
紀文食品
水産練り製品の大手。
一正蒲鉾
水産練り製品の大手。
- 従業員数:933人
- 平均年齢:40歳
なとり
鱈やするめいかなどのおつまみ大手。
- 従業員数:877人
- 平均年齢:40歳
水産卸売り
日本の水産流通は産地市場と消費地市場を経由するのが伝統ですが、小売りや消費者に直接販売するなど、流通の多様化が進んでいます。
- 産地市場:漁港に設置されている市場
- 消費地市場(卸売市場):都市に設置されている市場
・中央卸売市場
・地方卸売市場
・その他卸売市場
OUGホールディングス
マルハニチロと業務資本提携。
国内最大規模を誇ります。
- 従業員数:1,418人
- 平均年齢:53歳
大水
日本水産系の水産卸。
加工品にも力を入れています。
- 従業員数:446人
- 平均年齢:46歳
中央魚類
独立系の水産卸。
加工品にも力を入れています。
- 従業員数:783人
- 平均年齢:43歳
大都魚類
マルハニチロが完全子会社化。
東都水産
独立系の水産卸。
多角化経営を行っています。
- 従業員数:292人
- 平均年齢:44歳
築地魚市場
独立系の水産卸。
冷蔵倉庫事業も展開しています。
- 従業員数:334人
- 平均年齢:44歳
ニチモウ
水産物の専門商社。
- 従業員数:980人
- 平均年齢:42歳
水産小売り
個人経営の魚屋は全国的に減少傾向です。
水産物はスーパーの鮮魚コーナーなどでの購入が一般的になっています。
中島水産
百貨店やスーパーマーケット、ショッピングセンターなどに出店。
- 売上高:279億円
- 従業員数:455人
魚力
鮮魚・寿司の小売。
寿司店、海鮮居酒屋など飲食店も展開しています。
- 売上高:341億円
- 従業員数:497人
- 平均年齢:42歳
魚喜
鮮魚・寿司の小売。
回転寿司の経営も行っています。
- 売上高:110億円
- 従業員数:346人
水産業界の売上高ランキング
水産・水産加工
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | マルハニチロ | 866,702 |
2 | 日本水産 | 693,682 |
3 | 東洋水産 | 361,495 |
4 | 極洋 | 253,575 |
5 | ニチレイフレッシュ | 147,027 |
6 | マリンフーズ | 83,589 |
7 | はごろもフーズ | 68,447 |
8 | フジッコ | 55,074 |
9 | 紀文食品 | 48,079 |
10 | 西川 | 45,999 |
11 | なとり | 45,094 |
12 | いなば食品 | 40,090 |
13 | 一正蒲鉾 | 34,689 |
14 | 宝幸 | 33,496 |
15 | ホテイフーズコーポレーション | 21,848 |
水産卸
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | OUGホールディングス | 298,572 |
2 | マルイチ産商 | 238,302 |
3 | 東洋冷蔵 | 152,137 |
4 | 東海澱粉 | 138,855 |
5 | 中央魚類 | 121,842 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
水産業界の採用市場
漁業
日本の漁業・水産業は、高齢化が進み、漁業従事者は減少しています。
新規参入よりも廃業の方が多い状況ですが、世代交代がうまくいっているケースもあります。
漁業を始めるには、親方(個人事業主)になるか、乗り子(雇われ漁業者)になる方法があります。
親方(個人事業主)
親方(個人事業主)として漁業に新規参入するには、まず船に乗り、仕事を覚える必要があります。
親方に弟子入りして、認められれば、独り立ちできる道が見えてきます。
乗り子(雇われ漁業者)
漁業会社に従業員として入社する場合には、一般の転職と同様に募集されている求人に応募することになります。
転職して漁業を始める人の多くは、漁業会社の従業員として就業しています。
水産会社
水産物を市場に提供するために、調達から販売までの事業を行う水産会社では、それぞれの知識や技術を深めて、スペシャリストとして活躍している人が多くいます。
調達
国内外の漁業や養殖、世界各地からの買い付けなどにより、水産物を調達します。
生産・加工
調達した水産物を冷凍食品や缶詰、ソーセージなどの商品に生産・加工を進めます。
販売・営業
調達・生産・加工した商品を小売店や中食、外食店などへ販売します。
売り場戦略の提案や市場の開拓なども行います。
まとめ
国内の水産市場は縮小傾向にありますが、世界では養殖を中心に成長しています。
時代に対応して変化をしていくことで、日本の漁業・水産業も再び成長産業になる可能性は十分にあるといえます。
【参考】
・総務省ウェブサイト
・農林水産業ウェブサイト
・全国漁業協同組合連合会
・一般社団法人日本冷凍食品協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』