運行管理者はトラックやバス、タクシーなど事業用自動車の安全な運行を確保するために選任される国家資格です。
営業所ごとに配置することが義務付けられていますので、運送会社やバス、タクシー会社など運送業界で評価されます。
安全運行で重要な役割を担う運行管理者の資格についてご紹介します。
運行管理者の資格
運行管理者とは
運行管理者は、自動車運送事業者が営業所ごとに配置を義務付けられている必置資格です。
安全運行に必要な運行管理の中心的な役割を担います。
法律に基づき、自動車運送事業者は保有車両数に応じて、一定人数以上の運行管理者を選任しなければなりません。
複数の運行管理者を選任する営業所では、運行管理者の業務を統括する「統括運行管理者」を選任する必要があります。
運行管理者の資格要件
運行管理者は事業の種別に応じて「貨物」または「旅客」の資格者証の交付を受けることが必要です。
資格者証の交付を受けるには、運行管理者試験に合格する方法と一定の実務経験などによる方法があります。
- 運行管理者試験に合格(受験資格あり)
・運行管理に関して1年以上の実務経験があること
・基礎講習を修了していること - 5年以上の実務経験かつ所定の講習を5回以上受講
運行管理者の主な業務
- ドライバーの乗務割の作成
- 乗務記録の管理
- 休憩・睡眠施設の保守管理
- ドライバーの指導監督
- 業務前後の点呼によるドライバーの疲労・健康状態等の把握
- 安全のための指導 など
運行管理者の資格を取るには
運行管理者基礎講習
運行管理者試験に合格すると運行管理者になることができます。
運行管理者試験は、運行管理に関する1年以上の実務経験または基礎講習の修了が受験資格となっています。
いずれかの受験資格を満たさなければ、試験を受けることができません。
実務経験がない人は、基礎講習を修了することで運行管理者試験の受験資格を取得することができます。
対象
事業区分「貨物」または「旅客」に合わせた講習を受講します。
- 運行管理の基礎知識を習得しようとする人
- 運行管理の補助者に選任されようとする人
- 運行管理者試験の受験資格を取得しようとする人
- 新たに運行管理者に選任され、過去に基礎講習を受講していない人
講習期間
3日間(約16時間)
講習内容
- 自動車運送事業に関する法令
- 道路交通に関する法令
- 運行管理の業務に関すること
- 自動車事故防止に関すること
- 自動車運転者の指導および監督に関すること
- 修了試問および補習
問い合わせ
国土交通省の認定を受けた基礎講習実施機関
運行管理者試験
運行管理者試験には「貨物」と「旅客」の2種類があります。
事業区分に合わせて受験します。
受験資格
- 運行管理に関して1年以上の実務経験者
- 試験の種類に応じた基礎講習の修了者または修了予定者
試験方法
CBT方式:パソコンを使って行う試験
試験日
試験会場と日時を指定された範囲内(8月)で選択することができます。
試験地
全国にある試験会場
試験内容
【貨物】
- 貨物自動車運送事業法関係
- 道路運送車両法関係
- 道路交通法関係
- 労働基準法関係
- その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識および能力
【旅客】
- 道路運送法関係
- 道路運送車両法関係
- 道路交通法関係
- 労働基準法関係
- その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識および能力
合格基準
- 総得点が満点の60%以上であること
- 出題分野ごとに正解が1問以上であり、5.については2問以上であること
合格率
- 貨物:32%程度
- 旅客:35%程度
問い合わせ
公益財団法人 運行管理者試験センター
運行管理者の資格勉強
資格取得の勉強法
資格を取得するには、独学や資格・通信講座などで勉強する方法があります。
社会人が働きながら時間と費用をかけて資格を取得するには、自分のキャリアに合った資格を選び、自分に合った方法で学習することが大切になります。
実務経験や基礎知識など自分の状況に応じて、最適な学習スタイルを選んだり、組み合わせたりすることをおすすめします。
学習スタイル
- 独学
- 通信・オンライン講座
- 通学・資格スクール
- 大学・専門学校 など
運行管理者の試験対策
運行管理者の試験対策としては、実務経験の有無などによって最適な方法が変わってきます。
実務経験のある人は過去問題集を繰り返し勉強することで合格を目指すことができるでしょう。
実務経験のない人は基礎講習の受講が必要となりますので、まずは講習で使用したテキストや問題集などの内容をしっかり理解することが必要となります。
試験は「貨物」と「旅客」に分かれていますが、試験内容には重複する部分もありますので、どちらかに合格すれば、もう一方の資格も目指しやすくなるといえます。
資格の取得期間
受験資格に必要となる実務経験は1年以上です。
実務経験がない人が受験資格を取得できる基礎講習の期間は3日間です。
試験対策としては、1~6ヵ月程度の準備期間があるとよいでしょう。
学習のポイント
合格率は35%程度と簡単な試験ではありませんので、試験の傾向に合わせた対策が必要になります。
試験内容は法令が中心ですので、テキストの内容を理解して、過去問題集を繰り返すことが基本です。
正答率が上がれば合格が近づいているといえます。
運行管理者試験(貨物)のおすすめテキスト&問題集
運行管理者試験(旅客)のおすすめテキスト&問題集
運行管理者の資格を活かせる仕事
トラック輸送・バス・タクシー
自動車運送事業には、トラックなどの貨物輸送とバス、タクシーなどの旅客輸送があります。
業界全体として人手不足が課題となっています。
安全な運行を確保するために選任される運行管理者は、業界で重要な役割を担っています。
トラック輸送の動向
トラック輸送業には個人向けと企業向けの業務があります。
個人向けの宅配便は年々増加し、巣ごもり需要から好調を維持しています。
企業向けの貨物輸送量は経済の正常化に伴い増加が見込まれますが、燃料価格の上昇など先行きの不透明さは残っています。
バス・タクシーの動向
バス、タクシーともに不透明な状況が続いています。
経済や旅行の正常化が期待されますが、新たなニーズを獲得することも必要となりそうです。
まとめ
運送業界は、人手不足など労務管理に課題が多いとされています。
運行の安全体制において重要な役割を担う運行管理者は、運送各社が資格取得を奨励していますので、キャリアアップに有利です。
また資格を取得することで、資格手当などの収入アップも期待できます。
運行管理者の資格は運送業界だけでなく、関連する業界においても知識を活かすことができます。
【参考】
・国土交通省「自動車総合安全情報」
・公益財団法人運行管理者試験センター