地方銀行は各都道府県を主な営業基盤とする普通銀行です。
地方経済の縮小により合併が続き、地方銀行と信用金庫、信用組合の異種合併も行われています。
転職・就職で押さえておきたい地方銀行業界概要と動向についてご紹介します。
銀行業
銀行業とは、中央銀行と銀行業または信託業を営む預金取扱機関のことです。
銀行業務は預金の受入れ、資金の貸付け、為替取引などを行い、信託業務は財産の管理・運用などを行います。
日本の金融機関は、業務内容や組織体制などの違いにより、「業態」で区分されています。
それぞれの業態には、それぞれに果たす役割があります。
【銀行の分類】
- 中央銀行
- 普通銀行
・都市銀行
・地方銀行
・第二地方銀行 - 郵便貯金銀行
- 信託銀行
- その他の銀行
・外国銀行支店
地方銀行
地方銀行は、都道府県を営業基盤とする地域金融機関です。
相互銀行などを前身とする地方第二銀行を含めて地方銀行と呼ばれます。
地域経済のけん引を担ってきた有力な地方銀行はメガバンクをしのぐシェアで確固たる地位を築いています。
厳しい収益環境が続き、収益性を高める狙いから再編や経営統合の動きが活発です。
北海道・東北地区
人口減少が進み、経済力が低下しています。
金融再編の圧力が強まる可能性があります。
- 北海道銀行(ほくほくフィナンシャルグループ)
- 北洋銀行
- 青森銀行(プロクレアホールディングス)
- みちのく銀行(プロクレアホールディングス)
- 秋田銀行
- 北都銀行(フィデアホールディングス)
- 岩手銀行
- 東北銀行
- 北日本銀行
- 七十七銀行
- 仙台銀行(じもとホールディングス)
- 山形銀行
- 荘内銀行(フィデアホールディングス)
- きらやか銀行(じもとホールディングス)
- 東邦銀行
- 福島銀行
- 大東銀行
関東地区
関東地区は人口増加傾向にあり、金融グループ形成に対抗する動きが活発です。
- きらぼし銀行
- 東京スター銀行
- 東日本銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)
- 横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)
- 神奈川銀行
- 武蔵野銀行
- 千葉銀行
- 千葉興業銀行
- 京葉銀行
- 足利銀行
- 栃木銀行
- 群馬銀行
- 東和銀行
- 常陽銀行
- 筑波銀行
北陸・甲信越地区
北陸地区は競合関係が定着しています。
東海地区
東海地区は安定した経済力があり、地銀は安定した経営を続けています。
関西地区
関西地区は地銀3行が統合し、りそなホールディングス傘下になりました。
- 関西みらい銀行(関西みらいフィナンシャルグループ)
- 京都銀行
- 紀陽銀行
- 滋賀銀行
- 池田泉州銀行
- みなと銀行(関西みらいフィナンシャルグループ)
- 但馬銀行
- 南都銀行
中国・四国地区
中国・四国地区では四国アライアンスの提携がみられます。
九州・沖縄地区
九州地区では地方銀行の再編が活発です。
- 福岡銀行(ふくおかフィナンシャルグループ)
- 筑邦銀行
- 西日本シティ銀行(西日本フィナンシャルホールディングス)
- 福岡中央銀行
- 北九州銀行
- 鹿児島銀行
- 南日本銀行
- 宮崎銀行
- 宮崎太陽銀行
- 大分銀行
- 豊和銀行
- 十八親和銀行(ふくおかフィナンシャルグループ)
- 長崎銀行(西日本フィナンシャルホールディングス)
- 肥後銀行
- 熊本銀行(ふくおかFG)
- 佐賀銀行
- 佐賀共栄銀行
- 琉球銀行
- 沖縄銀行
- 沖縄海邦銀行
協同組織金融業
協同組織金融業は、組合員である中小企業、農業者、漁業者、労働団体、協同組合等に対して預金の受入れや融資を行います。
協同組織金融業の分類
- 中小企業等金融業
・信用金庫
・信用協同組合
・商工組合中央金庫
・労働金庫 - 農林水産金融業
・農林中央金庫
・信用農業協同組合連合会
・信用漁業協同組合連合会
・農業協同組合
・漁業協同組合
信用金庫・信用組合
信用金庫と信用組合は、出資者である会員から預金を集め、中小企業や個人に融資する金融機関です。
認可を受けた特定の地域内で営業をし、コロナ禍では中小企業や個人事業主の資金繰りを支えてきました。
信金中央金庫
- 出資金:6,909億円
- 会員数:254信用金庫
全国信用協同組合連合会
- 出資金:1,118億円
- 会員数:145信用組合
銀行の業務
銀行業務では、それぞれの組織・職務で専門性が求められます。
銀行業務
銀行では主に「預金」「融資」「為替」業務を行っています。
- 預金業務
- 融資業務
- 為替業務
- 周辺業務
・クレジットカード
・債務保証
・貸金庫
営業
銀行の営業は個人や個人事業主向けと法人向けに担当を分けて営業活動を行っています。
- リテール営業
- ホールセール
金融系の資格
金融系には特有の資格があり、転職や就職、キャリアアップには資格取得が有利です。
銀行業務検定試験
銀行業務検定試験は銀行・保険・証券等金融機関の行職員を対象に、業務の遂行に必要な実務知識や技能・応用力についてその習得程度を測定する検定試験です。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーには国家資格のファイナンシャル技能検定と民間資格のファイナンシャル・プランナー(AFP・CFP)があります。
銀行の採用市場
銀行業務は個人取引と企業取引に分かれていますが、銀行業界では、個人顧客の資産運用や保険、個人年金、相続などのニーズ拡大・多様化に向けて、個人顧客に対する提案・コンサルティングの強化を進めています。
フィンテックやDX関連ではITエンジニアを中心に人材が求められています。
銀行業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 41.4歳 (平均) |
所定内労働時間 | 161時間 | 158時間 | 158時間 |
残業 | 15時間 | 25時間 | 17時間 |
月収 | 249,500円 | 321,700円 | 428,100円 |
年間賞与等 | 401,500円 | 1,085,000円 | 1,683,100円 |
年収 | 3,395,500円 | 4,945,400円 | 6,820,300円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
地域・金融機関の転職活動
地方銀行の転職活動には地域や金融機関に強みのある転職サービスがおすすめです。
まとめ
地方銀行・信用金庫は地域経済の活性化や企業・個人の支援など社会的なやりがいがあり、収入面の安定も見込める業界です。
新規採用は抑えられていますが、若手にはキャリアチェンジのチャンスもあります。
【参考】
・総務省「日本標準産業分類」
・金融庁ウェブサイト
・一般社団法人全国地方銀行協会
・一般社団法人第二地方銀行協会
・一般社団法人信託協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』