歯科衛生士は、歯科医療分野、介護分野、産業分野、ボランティアなど幅広い分野で活躍しています。
歯科衛生士の勤務先は、歯科診療所が中心ですが、歯の健康、口腔ケアの重要性が高まり、市町村保健センターや介護保険施設など歯科診療所以外でも歯科衛生士のニーズが高まっています。
女性の一生の仕事となる歯科衛生士は、キャリアの可能性も広がっています。
歯科衛生士を活かせる仕事
歯科衛生士の就業場所
歯科衛生士の多くは、デンタルクリニックなど歯科診療所に勤務しています。
病院の歯科や保健所、介護保険施設、企業の診療所などで働く歯科衛生士もいます。
歯科衛生士になる人が増えているため、歯科衛生士養成校で働く教員も必要とされています。
就業場所別の歯科衛生士
就業場所 | 歯科衛生士 (人) | 構成割合 (%) |
診療所 | 129,758 | 90.9 |
病院 | 7,029 | 4.9 |
保健所 | 671 | 0.5 |
都道府県 | 70 | 0.0 |
市町村 | 2,060 | 1.4 |
介護保険施設等 | 1,258 | 0.9 |
歯科衛生士養成校 | 1,006 | 0.7 |
事業所 | 301 | 0.2 |
その他 | 607 | 0.4 |
総数 | 142,760 | 100.0 |
(厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)」より)
歯科衛生士の年齢層
歯科衛生士として働く人のほとんどは女性です。
幅広い年齢で満遍なく活動していて、20代から50代ではほぼ均等に分布しています。
女性の一生のキャリアとなる仕事だといえます。
年齢階級別にみた歯科衛生士の分布(割合)
- 25歳未満:10.5%
- 25~29歳:13.8%
- 30~34歳:12.0%
- 35~39歳:13.3%
- 40~44歳:13.2%
- 45~49歳:13.5%
- 50~54歳:10.5%
- 55~59歳:7.4%
- 60~64歳:3.7%
- 65歳以上:2.0%
(厚生労働省「令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)」より)
歯科診療所
歯科診療所は、入院設備をもたない、または入院ベッド数が19床以下で、歯科のみの診療を行う施設です。
多くは、歯科医院、歯科クリニック、デンタルクリニックなどとして開設されています。
歯科診療所の規模はさまざまですが、歯科医師1人に歯科衛生士が2~5人、歯科助手が数人という少人数の職場が多いです。
インプラント治療や矯正治療、訪問歯科診療など、特定の分野に力を入れる歯科診療所も増えています。
診療所での歯科衛生士の仕事
歯科医師の診療の補助や、患者さんへの予防処置、歯磨き指導などの歯科保健指導を行います。
歯科助手がいない診療所では、歯科衛生士が受付や会計などの事務まで行う場合もあります。
病院
病院は、入院ベッド数が20床以上の医療施設です。
主に一般の歯科診療所では治療が難しい患者を診療します。
規模の大きい病院歯科では、専門治療を行うために科が複数に分かれています。
配属される科によりある程度の専門知識が必要になりますが、基本的には歯科衛生士の仕事は同じです。
病院での歯科衛生士の仕事
歯科診療の補助のほか、入院患者の口腔の健康管理を行います。
主任など役職についた場合は、スタッフの指導や病院運営に関する仕事なども任されます。
保健所・保健センター
保健所・保健センターは、地域の保健や衛生に関する事業を担当する地方自治体の行政機関です。
保健所は都道府県、政令市、東京都特別区に、保健センターは市町村に設置されています。
保健所・保健センターの歯科衛生士の仕事
歯科保健指導や歯と口に関する健康教育を行っています。
歯科診療所では患者が対象であるのに対して、保健所や保健センターでは地域の人々が対象になります。
また身分は公務員になります。

介護保険施設等
高齢化が進み、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの介護保険施設に勤務する歯科衛生士も増えています。
介護施設等での歯科衛生士の仕事
地域の歯科診療所と連携して、高齢者の口腔ケアや機能訓練などを行います。
介護や医療の他の専門職と連携して仕事を行います。

その他
教員として歯科衛生士養成校に勤務する人や企業で働く歯科衛生士もいます。
教育機関での歯科衛生士の仕事
歯科衛生士養成校では、歯科衛生士の資格をもち、歯科診療所や病院などで経験を積んだ人が、教員として学生を指導しています。
企業での歯科衛生士の仕事
歯科関連の企業で歯科衛生士としての専門性を活かして仕事をしています。
また減り続けていますが、企業内歯科診療所もあります。
歯科衛生士のキャリアアップ
歯科衛生士のキャリアパス
歯科医療の技術は日々進歩していますので、歯科衛生士の資格を取得してからも勉強を続けることが大切です。
「障害者歯科」「老年歯科」「在宅療養」など専門分野における口腔健康管理の重要性も高まっています。
日本歯科衛生士会では、歯科衛生士の継続的なスキルアップをテーマに、さまざまな研修・学習の場を用意しています。
また、都道府県歯科衛生士会でも独自に研修会を開催しています。
認定歯科衛生士
認定歯科衛生士とは、特定する専門分野において高度な業務実践の知識・技能があると認められた歯科衛生士です。
認定歯科衛生士審査会に合格し、認定歯科衛生士名簿に登録されると認定証が交付されます。
認定歯科衛生士の資格を取得することで、キャリアアップすることができ、活躍の場が広がります。
- 認定分野A
・生活習慣病予防
・摂食嚥下リハビリテーション
・在宅療法指導、口腔機能管理
・糖尿病予防指導
・医科歯科連携、口腔機能管理
・歯科医療安全管理 - 認定分野B
・障害者歯科
・老年歯科
・地域歯科保健
・口腔保健管理
・う蝕予防管理 - 認定分野C
認定分野Aまたは認定分野Bのうち1分野以上の認定者向け
ケアマネジャーの資格取得
歯科衛生士として5年以上の実務経験を積むと、ケアマネジャーの受験資格を得ることができます。
ケアマネジャーは介護サービスに関する相談や調整の対応をする専門職です。
高齢化が進むなか、歯の健康と介護の関係はより近いものとなっています。

大学や大学院に進学
より専門的な知識や技術を学ぶために大学院や大学の専攻科に進学する人もいます。
介護や福祉との連携が進んでいるため、改めて学びたいと考える歯科衛生士が増えているようです。

歯科衛生士の転職市場
歯科衛生士の転職市場は活発です。
常に求人は多く、資格があれば転職はしやすい状況といえます。
出産や育児で一度離職したとしても、復職しやすく、ライフスタイルに合わせた働き方を選ぶことができます。
歯科衛生士の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 34.9歳 (平均) |
所定内労働時間 | 172時間 | 170時間 | 168時間 |
残業 | 時間 | 6時間 | 6時間 |
月収 | 244,200円 | 273,800円 | 282,700円 |
年間賞与等 | 165,800円 | 484,600円 | 432,300円 |
年収 | 3,096,200円 | 3,770,200円 | 3,824,700円 |
(厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より)

まとめ
歯科衛生士は、どちらかといえば20~30代の人が活躍している職種でしたが、40代以降の年齢層でも割合が増え、長く働く人が多くなってきています。
歯科衛生士は一生続けられる仕事として、ライフスタイルに合わせて自分らしい働き方を選べることが魅力のひとつといえるでしょう。


【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・公益社団法人 日本歯科衛生士会ウェブサイト