旅行業務取扱管理者は旅行に関するサービス提供の責任者として旅行業務を扱う営業所に必要とされる資格です。
旅行業務取扱管理者は旅行業界において唯一の国家資格です。
旅行業界でキャリアを積むのであれば、早めに取得しておきたい資格といえます。
旅行業務取扱管理者の資格についてご紹介します。
旅行業務取扱管理者の資格
旅行業務取扱管理者とは
旅行業者または旅行業者代理業者は営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を、10人以上の従業員が勤務する営業所では2人以上の旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。
海外と国内の旅行業務を取り扱うことができる「総合旅行業務取扱管理者」と国内旅行業務のみを取り扱うことができる「国内旅行業務取扱管理者」、そして営業所所在地隣接範囲の旅行業務を取り扱うことができる「地域限定旅行業務取扱管理者」が平成30年度から新設されました。
旅行業務取扱管理者の職務
- 企画旅行の旅行計画の適正な作成
- 料金表の掲示
- 旅行業約款の掲示
- 取引条件の説明
- 契約書面の交付
- 適正な広告の実施
- 旅程管理のための必要な措置(旅程管理業務を行う主任の者を通じた管理・監督)
- 旅行に関する的確な苦情処理
- 契約内容に係る重要な事項についての明確な記録または関係書類の保管
- 上記に掲げるもののほか、取引の公正、旅行の安全及び旅行者の利便を確保するために必要な事項として観光庁長官が定める事項
旅行業務取扱管理者の資格を取るには
旅行業務取扱管理者試験
旅行業務取扱管理者の資格を取得するには、国家試験に合格する必要があります。
旅行業務取扱管理者試験には、「総合旅行業務取扱管理者試験」と「国内旅行業務取扱管理者試験」、「地域限定旅行業務取扱管理者試験」の3種類があります。
それぞれの試験は実施機関が異なります。
受験資格
制限なし
試験日
- 総合旅行業務取扱管理者試験:10月
- 国内旅行業務取扱管理者試験(CBT試験):9月
- 地域限定旅行業務取扱管理者試験:9月
試験地
- 総合旅行業務取扱管理者試験
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県 - 国内旅行業務取扱管理者試験
全国47都道府県のCBT試験会場 - 地域限定旅行業務取扱管理者試験
2~3ヵ所
試験方法
- 総合・地域限定:筆記試験
- 国内:CBT方式
試験科目
- 総合旅行業務取扱管理者試験
①旅行業法及びこれに基づく命令
②旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
③国内旅行実務
④海外旅行実務 - 国内旅行業務取扱管理者試験
①②③ - 地域限定旅行業務取扱管理者試験
①②③のうち②航空運賃約款③全国地理及び航空運送関係を除く
総合旅行業務取扱者試験の科目免除
条件に該当すれば、試験科目の一部が免除されます。
- 国内旅行業務取扱管理者有資格者
- 前年度と当該年度の総合旅行業務取扱管理者研修修了者
- 前年度の総合旅行業務取扱管理者試験の科目合格者
- 地域限定旅行業務取扱管理者有資格者
国内旅行業務取扱者試験の科目免除
条件に該当すれば、試験科目の一部が免除されます。
- 前年度と当該年度の国内旅行業務取扱管理者研修修了者
- 前年度の国内旅行業務取扱管理者試験の科目合格者
- 地域限定旅行業務取扱者有資格者
合格率
- 総合旅行業務取扱管理者試験:10~20%
- 国内旅行業務取扱管理者試験:30~40%
- 地域限定旅行業務取扱管理者試験:45%程度
問い合わせ
- 総合旅行業務取扱管理者試験:一般社団法人 日本旅行業協会
- 国内旅行業務取扱管理者試験:一般社団法人 全国旅行業協会
- 地域限定旅行業務取扱管理者試験:観光庁
旅行業務取扱管理者の資格勉強
資格取得の勉強法
旅行業務取扱管理者の資格を取得するには、独学や資格・通信講座で学ぶ方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、基礎知識や実務経験の有無、かけられる時間・費用など自分の状況に合わせて最適な方法を選択することが大切です。
独学でも観光地理などの分野は対応できますが、旅行業法や運賃計算などは実務経験がないと難しいかもしれません。
独学に不安があったり、効率的に学習を進めたい人には、試験に対応した通信講座を上手に活用することをおすすめします。
資格の取得期間
通信講座のカリキュラムは国内旅行業務取扱管理者で4~5ヵ月、総合旅行業務取扱管理者で8ヵ月ほどのものが多く、資格を取得するまでの準備期間として必要になります。
国内資格を持っていて、総合資格を目指す場合には、6ヵ月程度の準備期間があるとよいでしょう。
旅行業務取扱管理者試験のテキスト
総合旅行業務取扱管理者試験の過去問題集
国内旅行業務取扱管理者試験の過去問題集
旅行業務取扱管理者の通信講座
市販のテキストはあまり多くはないので、効率的に学習を進めたい人は通信講座を上手に活用することをおすすめします。
旅行業務取扱管理者を活かせる仕事
キャリアでの活かし方
一般旅行客の旅行に関する知識の高まりとともに、旅行業務取扱管理者のニーズは旅行業者以外の企業や団体にも広がっています。
旅行会社・旅行代理店
旅行会社・旅行代理店は旅行業務取扱管理者の選任が必須の職場です。
有資格者を管理職やリーダーに登用するなど人事にも取り入れられています。
鉄道会社
JR東日本は自社駅で営業する「びゅうプラザ」で旅行商品の販売を行っています。
国内だけでなく、海外旅行も販売しており、旅行業務取扱管理者の資格者が多数働いています。
航空会社
航空会社が自社の航空便を利用した募集型企画旅行には総合旅行業務取扱管理者の資格者が必要になります。
実務にも役立つ資格として評価されています。
バス会社
バス会社ではバス旅行はもちろん、宿泊施設などを組み合わせた観光バスの旅行も行っていますので、国内旅行業務取扱管理者の資格を活かせます。
ツアーオペレーター
インターネットの申し込みが増え、相談窓口を設置する会社も増えています。
旅行客の対応にも総合旅行業務取扱管理者の資格が活かされています。
他に活用できる資格
旅行業務取扱管理者の資格とあわせて持っていると、さらに活躍の場や仕事の幅が広がる資格があります。
旅程管理主任者(ツアーコンダクター・添乗員)
募集型企画旅行と受注型企画旅行の主任者として添乗業務を行う場合には、旅程管理主任者の資格が必要になります。
資格には国内旅行だけ添乗可能な国内旅程管理主任者と海外旅行も可能な総合旅程管理主任者の資格があります。
インバウンド実務主任者認定試験
インバウンド実務主任者認定試験は、インバウンドに関する様々な知識を持ち、インバウンドビジネスを展開する能力を認定する試験です。
インバウンドビジネスに必須の知識を身につけることができます。
資格取得のメリット
旅行業界は旅行会社だけでなく関連企業などへの転職やキャリアチェンジが活発です。
旅行業務取扱管理者の資格を取得しておくと、旅行関連のキャリアで幅広く活用できます。
キャリアアップに有利
多くの旅行会社が旅行業務取扱管理者の資格取得を推奨しており、キャリアアップには必須の資格になっています。
転職・キャリアチェンジに有利
旅行業界では資格を活かせる仕事やよりよい条件を求めて、3~5年で転職やキャリアチェンジする人が多くいます。
業界内はもちろん、異業種からの転職では、実務経験がなくても一定の知識があることを証明できますので、有利です。
フリーランス・独立も可能
添乗業務を経験して、フリーランスで活動したり、旅行業の会社を始めることもできます。
業界での経験や知識を活かすためにも重要な資格になります。
まとめ
旅行業務取扱管理者資格の有無だけで採用が決まることはありませんが、希望の就職やよりよい条件で転職するために有利であることは間違いありません。
旅行業界での資格者は増えていますので、業界でキャリアを積んでいくのであれば早めの取得をおすすめします。
【参考】
・観光庁ウェブサイト
・一般社団法人 日本旅行業協会ウェブサイト
・一般社団法人 全国旅行業協会ウェブサイト