IT系のエンジニアにはさまざまな職種があります。
ITエンジニアは情報技術系のエンジニアを意味して使われています。
ITエンジニアになるためには、確かな技術が必要となります。
資格が必須なわけではありませんが、資格は技術力を証明することに役立ちます。
情報処理技術者試験は、IT人材の育成などを目的とした国家試験です。
ITに関する知識レベル・技術力の共通的・客観的な評価指標として、IT業界をはじめとして、ITを活用する幅広い組織で認知されています。
ITエンジニアとしてスキルアップするのであれば、情報処理技術者試験に合格して、技術力のレベルをアピールすることをおすすめします。
情報処理技術者試験の内容
情報処理とは
情報処理とは、情報処理の促進に関する法律において「電子計算機を使用して、情報につき計算、検索その他これらに類する処理を行うことをいう。」と定義されています。
- プログラム
電子計算機(コンピュータ)に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたもの - 情報処理システム
電子計算機(コンピュータ)およびプログラムの集合体であって、情報処理の業務を一体的に行うよう構成されたもの - 情報処理サービス業
顧客の需要に応じてする情報処理の事業 - ソフトウェア業
顧客の需要に応じてするプログラムの作成の事業
ITエンジニアの国家試験
情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験は、経済産業省が情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。
ITに関する共通的基礎知識を問う試験から高度な知識・技能を問う試験まで、13の試験区分があります。
受験資格に年齢や学歴などの制限はなく、どの試験区分からでも受験することができます。
ITエンジニアとしてキャリアの目標に合わせてスキルアップを目指せます。
出典:情報処理推進機構サイトより
ITエンジニアを目指すなら
これからITエンジニアを目指すのであれば、ITエンジニアの登竜門である「基本情報技術者試験」をおすすめします。
プログラムやコンピュータサイエンスを基礎から体系的に習得し、論理的思考力養うことができます。
情報セキュリティ、ネットワーク、データベースなどITに関する知識を幅広く習得します。
基本情報技術者に期待される技術水準
- 情報技術を活用した戦略立案に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が求められます。
・対象とする業種・業務に関する基本的な事項を理解し、担当業務に活用できる
・上位者の指導の下に、情報戦略に関する予測・分析・評価ができる
・上位者の指導の下に、提案活動に参加できる - システムの設計・開発・運用に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が求められます。
・情報技術全般に関する基本的な事項を理解し、担当業務に活用できる
・上位者の指導の下に、システムの設計・開発・運用ができる
・上位者の指導の下に、ソフトウェアを設計できる
・上位者の方針を理解し、自らソフトウェアを開発できる
基本情報技術者試験の内容
- 科目A:午前(四肢択一式)
・テクノロジ系:基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、開発技術
・マネジメント系:プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
・ストラテジ系:システム戦略、経営戦略、企業と法務 - 科目B:午後(多肢選択式)
・プログラミング全般に関すること
・プログラミングの処理の実装に関すること
・データ構造およびアルゴリズムに関すること
・情報セキュリティの確保に関すること
SEを目指すなら
SEを目指すのであれば、ITエンジニアのステップアップとなる「応用情報技術者試験」をおすすめします。
ケーススタディによる出題を通じて、業務分析力、問題発見、解決力、マネジメント力などを養うことができます。
IT関連業務において即戦力として活躍できる幅広い知識と実践力が身に付きます。
応用情報技術者に期待される技術水準
- 情報技術を活用した戦略立案に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が求められます。
・経営戦略・情報戦略の策定に際して、経営者の方針を理解し、経営を取り巻く外部環境を正確にとらえ、動向や事例を収集できる
・経営戦略・情報戦略の評価に際して、求められたモニタリング指標に基づき、差異分析などを行える
・提案活動に際して、提案討議に参加し、提案書の一部を作成できる - システムの設計・開発・運用に関し、担当業務に応じて次の知識・技能が求められます。
・アーキテクチャの設計において、システムに対する要求を整理し適用できる技術の調査を行える
・運用管理チーム、オペレーションチーム、サービスデスクチームなどのメンバーとして、担当分野におけるサービス提供と安定稼働の確保が行える
・プロジェクトメンバーとして、プロジェクトマネージャ(リーダ)の下でスコープ、予算、工程、品質などの管理ができる
・情報システム、ネットワーク、データベース、組込みシステムなどの設計・開発・運用・保守において、上位者の方針を理解し、自ら技術的問題を解決できる
応用情報技術者試験の内容
- 午前:四肢択一式
・テクノロジ系:基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、開発技術
・マネジメント系:プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
・ストラテジ系:システム戦略、経営戦略、企業と法務 - 午後:記述式
・経営戦略に関すること
・情報戦略に関すること
・戦略立案・コンサルティングに関すること
・システムアーキテクチャに関すること
・サービスマネジメントに関すること
・プロジェクトマネジメントに関すること
・ネットワークに関すること
・データベースに関すること
・組込みシステム開発に関すること
・情報システム開発に関すること
・プログラミングに関すること
・情報セキュリティに関すること
・システム監査に関すること
上級エンジニアを目指すなら
上級エンジニアを目指すのであれば、システム開発主導者向けの「システムアーキテクト試験」をおすすめします。
システム開発の上流工程を主導する立場で、豊富な業務知識に基づいて的確な分析を行い、業務ニーズに適した情報システムのグランドデザインを設計し完成に導くエンジニアのための試験です。
システムアーキテクトに期待される技術水準
システムアーキテクトの業務と役割を円滑に遂行するための知識・実践能力が求められます。
- 情報システム
・情報システム戦略を正しく理解し、業務モデル・情報システム全体体系を検討できる
・各種業務プロセス - 組込みシステム・IoTを利用したシステム
システムアーキテクト試験の内容
- 午前
・コンピュータシステム:コンピュータ構成要素、システム構成要素
・技術要素:データベース、ネットワーク、セキュリティ
・開発技術:システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術
・システム戦略:システム戦略、システム企画 - 午後
【情報システム】
・契約・合意に関すること
・企画に関すること
・要件定義に関すること
・開発に関すること
・運用・保守に関すること
・関連知識
【組込みシステム・IoTを利用したシステム】
・機能要件の分析、機能仕様の決定に関すること
・機能仕様を満足させるシステムアーキテクチャおよびハードウェアとソフトウェアの要求仕様の決定に関すること
・対象とするシステムに応じた開発手法の決定に関すること
・汎用的モジュールの利用に関すること
プロジェクトマネージャ(リーダ)を目指すなら
プロジェクトマネージャ(リーダ)を目指すのであれば、プロジェクト責任者向けの「プロジェクトマネージャ試験」をおすすめします。
プロジェクト全体の意思決定を実行し、品質・コスト・納期に全責任をもち、前提・制約の中でプロジェクトを確実に成功に導き、プロジェクトメンバーを指導する人のための試験です。
プロジェクトマネージャに期待される技術水準
プロジェクトマネージャの業務と役割を円滑に推進するための知識・実践能力が求められます。
- 組織戦略およびシステム全般に関する基本的な事項を理解している
- 個別システム化構想・計画およびステークホルダの期待を正しく認識し、実行可能なプロジェクト全体計画を作成できる
- 前提・制約のなかで変化に応じて、プロジェクトの目標を確実に達成できる
- スコープ・要員・資源・予算・スケジュール・品質・リスクなどを管理し、プロジェクトチームの全体意識を統一して、プロジェクトをマネジメントできる
- プロジェクトの進捗状況や将来見込まれるリスクを早期に把握し、変更を管理して、適切に対応できる
- プロジェクトの計画・実績を適切に分析・評価できる。また、その結果をプロジェクトのその後のマネジメントに活用できるとともに、ほかのプロジェクトの参考に資することができる
プロジェクトマネージャ試験の内容
- 午前
・技術要素:セキュリティ
・開発技術:システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術
・プロジェクトマネジメント
・サービスマネジメント
・システム戦略:システム企画
・企業と法務:法務 - 午後
・プロジェクトの立ち上げ、計画に関すること
・プロジェクトの実行、管理に関すること
・プロジェクトの終結に関すること
ネットワーク・インフラ系エンジニアを目指すなら
ネットワーク・インフラエンジニアを目指すのであれば、ネットワークシステム構築・運用者向けの「ネットワークスペシャリスト試験」をおすすめします。
ネットワークの固有技術からサービス動向まで幅広く精通し、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行うエンジニアのための試験です。
ネットワークスペシャリストに期待される技術水準
目的に適合したネットワークを構築・維持するための知識・実践能力が求められます。
- ネットワーク技術・ネットワークサービスの動向を広く見通し、目的に応じた適用可能な技術・サービスを選択できる
- 企業・組織、または業務システムの要求(情報セキュリティを含む)を的確に理解し、ネットワークシステムの要求仕様を作成できる
- 要求仕様に関連するモデリングなどの設計技法、プロトコル技術、信頼性設計、セキュリティ技術、ネットワークサービス、コストなどを評価して、最適な論理設計・物理設計ができる
- ネットワーク関連企業(通信事業者、ベンダ、工事業者など)を活用して、ネットワークシステムの設計・構築・運用・保守ができる
ネットワークスペシャリスト試験の内容
- 午前
・コンピュータシステム:コンピュータ構成要素、システム構成要素
・技術要素:ネットワーク、セキュリティ
・開発技術:システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術 - 午後
・ネットワークシステムの企画・要件定義・設計・構築に関すること
・ネットワークシステムの運用・保守に関すること
・ネットワークサービス活用に関すること
・ネットワークアプリケーション技術に関すること
・ネットワーク関連法規・標準に関すること
データベースエンジニアを目指すなら
データベースエンジニアを目指すのであれば、データベース管理者・インフラエンジニア向けの「データベーススペシャリスト試験」をおすすめします。
確立した専門分野をもち、データ資源およびデータベースを企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行うエンジニアのための試験です。
データーベーススペシャリストに期待される技術水準
高品質なデータベースを企画、要件定義、開発、運用、保守するための知識・実践能力が求められます。
- データベース技術の動向を広く見通し、目的に応じて適用可能な技術を選択できる
- データ資源管理の目的と技法を理解し、データ部品の標準化、リポジトリシステムの企画・要件定義・開発・運用・保守ができる
- データモデリング技法を理解し、利用者の要求に基づいてデータ分析を行い、正確な概念データモデルを作成できる
データベーススペシャリスト試験の内容
- 午前
・コンピュータシステム:コンピュータ構成要素、システム構成要素
・技術要素:データベース、セキュリティ
・開発技術:システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術 - 午後
・データベースシステムの企画、要件定義、開発に関すること
・データベースシステムの運用・保守に関すること
・データベース技術に関すること
組込み・IoTエンジニアを目指すなら
組込みエンジニアやIoTエンジニアを目指すのであれば、組込みシステム開発者向けの「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」をおすすめします。
確立した専門分野をもち、最適な組込みシステム開発基盤の構築や組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行うエンジニアのための試験です。
エンベデッドシステムスペシャリストに期待される技術水準
IoTを含む組込みシステムに要求される機能、性能、品質、信頼性、セキュリティなどをハードウェアへの要求とソフトウェアへの要求に適切に分解し、最適な組込みシステムとして実現するための知識・実践能力が求められます。
- 機能仕様に基づき、ハードウェアとソフトウェアの適切な組合せを実現し、組込みシステム開発における各工程を主導的に遂行できる
- 特定の技術・製品分野についての高度で専門的な知識、開発経験を基に、開発する当該分野の専門家から技術上の知識を獲得して、組込みシステム開発の各工程に反映できる
- 組込みシステム開発を行う上で効果的な開発環境の構築と改善ができる
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の内容
- 午前
・コンピュータシステム:コンピュータ構成要素、システム構成要素、ソフトウェア、ハードウェア
・技術要素:ネットワーク、セキュリティ
・開発技術:システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術
・経営情報:ビジネスインダストリ - 午後
・組込みシステムの設計・構築に関すること
・組込みシステムのソフトウェア設計に関すること
・組込みシステムのハードウェア設計に関すること
・保守に関すること
セキュリティエンジニアを目指すなら
セキュリティエンジニアを目指すのであれば、サーバーセキュリティ推進者向けの「情報処理安全確保支援士試験」をおすすめします。
サイバーセキュリティに関する専門的な知識・技能を活用して、サイバーセキュリティ対策の調査・分析・評価を行い、その結果に基づき必要な指導・助言を行う人のための試験です。
情報処理安全確保支援士試験の合格者は国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」の資格を取得できます。
情報処理安全確保支援士に期待される技術水準
情報処理安全確保支援士の業務と役割を円滑に遂行するための知識・技能が求められます。
- 情報システムおよび情報システム基盤の脅威分析に関する知識をもち、情報セキュリティ要件を抽出できる
- 情報セキュリティの動向・事例およびセキュリティ対策に関する知識をもち、セキュリティ対策を対象システムに適用するとともに、その効果を評価できる
- 情報セキュリティマネジメントシステム、情報セキュリティリスクアセスメントおよびリスク対応に関する知識をもち、情報セキュリティマネジメントについて指導・助言できる
- ネットワーク、データベースに関する知識をもち、暗号、認証、フィルタリング、ロギングなどの要素技術を適用できる
- システム開発、品質管理などに関する知識をもち、それらの業務について、セキュリティの観点から指導・助言できる
- 情報セキュリティ方針および情報セキュリティ諸規程の策定、内部不正の防止に関する知識をもち、情報セキュリティに関する従業員の教育・訓練などについて指導・助言できる
- 情報セキュリティ関連の法的要求事項、情報セキュリティインシデント発生時の証拠の収集および分析、情報セキュリティ監査に関する知識をもち、それらに関連する業務を他の専門家と協力しながら遂行できる
情報処理安全確保試験士試験の内容
- 午前Ⅰ:共通知識
・テクノロジ系
・マネジメント系
・ストラテジ系 - 午前Ⅱ:専門知識
- 午後:技能
・情報セキュリティマネジメントの推進または支援に関すること
・情報システムの企画、設計、開発、運用におけるセキュリティ確保の推進または支援に関すること
・情報および情報システムの利用におけるセキュリティ対策の適用の推進または支援に関すること
・情報セキュリティインシデント管理の推進または支援に関すること
情報処理技術者試験の受験
情報処理技術者試験はインターネットで申し込みをします。
誰でもどの試験区分からでも受験できます。
受験資格
制限なし
試験日
- 春期試験(4月)
- 秋期試験(10月)
※CBT方式試験は随時実施
合格率
- 基本情報技術者:30%程度
- 応用情報技術者:20%程度
- プロジェクトマネージャ:15%程度
- システムアーキテクト:15%程度
- ネットワークスペシャリスト:15%程度
- データベーススペシャリスト:15%程度
- エンベデッドシステムスペシャリスト:17%程度
- 情報処理安全確保支援士:20%程度
まとめ
情報処理技術者試験はITエンジニアとしての知識・スキルの水準を証明することができる国家試験です。
ITを活用する幅広い業種・職種で認知されていますので、転職や就職、キャリアアップなどのアピール材料として役立てることができます。





【参考】
・経済産業省ウェブサイト
・独立行政法人情報処理推進機構サイト