外食産業の業界研究【概要・企業・動向】

新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの飲食店が休業や短縮営業を余儀なくされ、外食業界は大きな打撃を受けました。

コロナの影響が落ち着いても、業績の回復には時間がかかっています。

転職・就職で押さえておきたい外食産業の業界動向、売上高ランキング、採用市場をご紹介します。

外食産業の最新動向(2023年)

外食業界とは

外食業界とは、家庭外で飲食のサービスを提供する事業のことです。

外食業界は、主に営業手法による業態で分類されます。

多様化する顧客ニーズに合わせて、外食業界の業態は一業態からさらに細分化しています。

コロナ禍で業態転換や新業態の育成などの動きが見られるようになりました。

外食産業の業態

飲食店のなかでもチェーン展開する大手は外食産業と呼ばれています。

  • ファストフード
  • レストラン・ファミリーレストラン
  • すし店
  • 麺類
  • 居酒屋
  • カフェ・コーヒーチェーン など

ファストフード

ファストフードは店内で最終加工した商品をカウンターなどで販売し、基本的に配膳はしません。

店舗数が最も多く、ハンバーガーチェーンなどの洋風ファストフードと牛丼・回転ずしチェーンなどの和風ファストフードに分かれます。

外食業界全体は縮小傾向ですが、ファストフードは市場規模を維持しています。

持ち帰りや宅配が拡大し、コンビニエンスストアや持ち帰り弁当店など中食との顧客獲得競争が激化しています。

日本マクドナルドホールディングス

ハンバーガーチェーン。

圧倒的なシェアと売上を誇っています。

コロナ禍でも巣ごもり需要を取り込み、業績は好調を維持しています。

  • 店舗数:2,942店
  • 従業員数:2,346人

日本KFCホールディングス

「ケンタッキーフライドチキン」をフランチャイズ中心に運営。

500円ランチなどが好調で客数を大幅に伸ばしています。

  • 店舗数:1,172店
  • 従業員数:889人
  • 平均年齢:45歳

ゼンショーホールディングス

業界最大手。

牛丼の「すき家」から始まり、ファミリーレストランの「ココス」「ジョリーパスタ」など事業を拡大させてきました。

  • 店舗数:2,325店(牛丼カテゴリー)
  • 従業員数:15,929人
  • 平均年齢:39歳

吉野家ホールディングス

牛丼2位。

牛丼の「吉野家」のほか、すしの「京樽」、ステーキの「アークミール」、うどんの「はなまる」などを展開しています。

  • 店舗数:1,190店
  • 従業員数:3,004人
  • 平均年齢:50歳

松屋フーズホールディングス

牛丼3位。

「松屋」は牛丼だけでなく、定食も豊富です。

とんかつの「松のや」の出店を加速しています。

  • 店舗数:1,207店
  • 従業員数:1,705人
  • 平均年齢:46歳

壱番屋

カレー店大手。

「CoCo壱番屋」を全国展開しています。

  • 店舗数:1,461店
  • 従業員数:1,205人
  • 平均年齢:41歳

アークランドサービスホールディングス

かつ丼首位。

とんかつ店「かつや」を運営しています。

  • 店舗数:743店
  • 従業員数:523人
  • 平均年齢:35歳

ファミリーレストラン

ファミリーレストランは総合的な品ぞろえの料理を提供する業態です。

洋食と和食を主体とした業態だけでなく、特定地域料理を扱うチェーンもあります。

外食消費は依然低調ですが、料理の専門性の高さや値ごろ感の強さを売りにしたブランド開発で生き残りを図っています。

人手不足対策に営業時間の見直しが進んでいます。

すかいらーくホールディングス

ファミレス最大手。

「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などを運営しています。

  • 店舗数:3,094店
  • 従業員数:5,940人
  • 平均年齢:43歳

サイゼリヤ

低価格イタリアン「サイゼリヤ」を展開。

国内とオーストラリアの自社工場で食材を生産しています。

  • 店舗数:1,556店
  • 従業員数:4,134人
  • 平均年齢:39歳

ロイヤルホールディングス

ファミレスの老舗。

「ロイヤルホスト」を中心に「てんや」「シズラー」「シェイキーズ」など多彩に展開しています。

  • 店舗数:476店
  • 従業員数:1,964人
  • 平均年齢:47歳

ジョイフル

低価格ファミレス。

郊外型レストラン「ジョイフル」を運営しています。

  • 店舗数:571店
  • 従業員数:1,233人
  • 平均年齢:43歳

ファミレス大手

  • セブン&アイ・フードシステムズ:「デニーズ」など
  • アレフ:「びっくりドンキー」など
  • SRSホールディングス:「和食さと」など

回転ずし

寿司店には板前が直接客に配膳する寿司屋と、ベルトコンベアーで配膳する回転ずし、宅配専門寿司店があります。

回転ずしはラーメンなどのサイドメニューやデザートの強化でファミレスから家族客の流入を図り、縮小する外食業界のなかで成長を続けています。

FOOD&LIFE COMPANIES

業界首位。旧スシローグローバルホールディングス

都心型店舗を展開することで、従来の郊外型とは異なる利用動機、顧客層を取り込む計画です。

  • 店舗数:1,048店
  • 従業員数:4,557人
  • 平均年齢:41歳

くら寿司

無添加のすし店を全国直営展開。

都市型店舗の展開も進めています。

  • 店舗数:593店
  • 従業員数:2,185人
  • 平均年齢:31歳

回転寿司大手

  • カッパ・クリエイト:「かっぱ寿司」
  • 元気寿司:「元気寿司」「魚べい」
  • はま寿司:「はま寿司」

麺類

麺類は大きく和風と中華の業態に分かれます。

処遇改善に力を入れる動きが目立つようになっています。

トリドールホールディングス

セルフ式うどん「丸亀製麺」が主力。

海外展開にも積極的です。

  • 店舗数:1,720店
  • 従業員数:4,928人
  • 平均年齢:39歳

リンガーハット

長崎ちゃんぽん「リンガーハット」を全国展開。

  • 店舗数:688店
  • 従業員数:536人
  • 平均年齢:45歳

王将フードサービス

「餃子の王将」を展開。

持ち帰りやデリバリーを強化しています。

  • 店舗数:734店
  • 従業員数:2,342人
  • 平均年齢:36歳

ハイデイ日高

低価格の中華食堂「日高屋」が主力。

  • 店舗数:442店
  • 従業員数:848人
  • 平均年齢:36歳

幸楽苑ホールディングス

中華そば「幸楽苑」を直営展開。

  • 店舗数:440店
  • 従業員数:633人
  • 平均年齢:44歳

居酒屋

居酒屋はアルコールと一緒に料理を提供します。

居酒屋は若者のアルコール離れなどで低迷し、なかでも、幅広いメニューの総合居酒屋の苦戦が続いています。

コロナ禍から通常営業に戻りつつありますが、宴会需要が減少し、回復は限定的です。

コロワイド

多業態を運営。

居酒屋ブランドには「甘太郎」「北海道」などがあります。

「大戸屋」を買収しました。

  • 店舗数:2,785店
  • 従業員数:5,319人
  • 平均年齢:45歳

モンテローザ

居酒屋大手。

「白木屋」「笑笑」「魚民」などを運営しています。

  • 店舗数:約1,400店
  • 従業員数:2,661人

大庄

海鮮系居酒屋。

「庄や」「日本海庄や」などを全国展開しています。

  • 店舗数:426店
  • 従業員数:2,279人
  • 平均年齢:44歳

ワタミ

居酒屋大手。

居酒屋から「焼肉の和民」などへ業態転換を進めています。

  • 店舗数:405店
  • 従業員数:1,902人
  • 平均年齢:42歳

チムニー

海鮮系に強く、「はなの舞」などを運営しています。

  • 店舗数:506店
  • 従業員数:697人
  • 平均年齢:43歳

SFPホールディングス

「磯丸水産」「鳥良商店」などを運営しています。

  • 店舗数:215店
  • 従業員数:1,017人
  • 平均年齢:42歳

鳥貴族ホールディングス

低価格の焼き鳥チェーン。

  • 店舗数:617店
  • 従業員数:830人
  • 平均年齢:39歳

肉業態

多店舗展開を続けてきましたが、不採算店舗の整理を進める動きが見られます。

レイズインターナショナル

コロワイド傘下。

「牛角」「温野菜」「土間土間」

  • 店舗数:1,652店
  • 従業員数:1,176人

木曽路

しゃぶしゃぶ最大手。

  • 店舗数:194店
  • 従業員数:1,307人
  • 平均年齢:44歳

ペッパーフードサービス

「いきなりステーキ」を展開。

「ペッパーランチ」の事業をファンドに売却しました。

  • 店舗数:228店
  • 従業員数:382人
  • 平均年齢:40歳

物語コーポレーション

「焼肉きんぐ」を展開。

ラーメン店や和食の食べ放題なども展開しています。

  • 店舗数:251店
  • 従業員数:1,344人
  • 平均年齢:32歳

カフェ・コーヒーチェーン

コーヒーチェーンは喫茶店やカフェをチェーン運営し、店内でコーヒーやサンドイッチなどの軽食を提供します。

スターバックスをはじめとして、外資系のコーヒーショップが相次いで誕生しました。

コンビニエンスストアが低価格の入れたてコーヒーを強化し、顧客の奪い合いが激化。

コーヒーチェーンはコーヒー豆の選定などサービス力を高めて成長を目指しています。

スターバックスコーヒージャパン

国内カフェの売上トップ。

  • 店舗数:1,704店
  • 従業員数:4,723人

ドトール・日レスホールディングス

カフェの老舗。

「ドトールコーヒー」「エクセルシオールカフェ」「星乃珈琲店」

  • 店舗数:2,042店
  • 従業員数:2,783人
  • 平均年齢:39歳

タリーズコーヒージャパン

伊藤園グループ。

「ダリーズコーヒー」を展開しています。

  • 店舗数:760店
  • 従業員数:973人

サンマルクホールディングス

「サンマルクカフェ」「倉敷珈琲店」

  • 店舗数:839店
  • 従業員数:799人
  • 平均年齢:45歳

コメダホールディングス

名古屋地盤。「コメダ珈琲」

  • 店舗数:956店
  • 従業員数:468人
  • 平均年齢:47歳
飲食サービス業とは(種類と分類)
外食産業や飲食店などの飲食サービスには、さまざまな業態があります。提供する料理や提供方法で区分される飲食サービス業の種類と分類についてご紹介します。

外食産業の売上高ランキング

飲食業上位1~30位

順位企業名年商
(百万円)
1日本マクロナルド317,696
2すかいらーくレストランツ234,199
3あきんどスシロー213,237
4スターバックスコーヒージャパン209,269
5くら寿司131,562
6エームサービス115,368
7松屋フーズ94,049
8丸亀製麺91,968
9日本ケンタッキー・フライド・チキン90,838
10サイゼリヤ86,181
11王将フードサービス84,516
12物語コーポレーション61,261
13快活フロンティア57,071
14カッパ・クリエイト52,979
15吉野家48,295
16ロイヤルフードサービス45,522
17セブン&アイ・フードシステムズ45,251
18ココスジャパン44,000
19元気寿司41,082
20壱番屋38,787
21アレフ34,396
22日本レストランシステム34,390
23グリーンホスピタリティフードサービス34,000
24レイズインターナショナル33,643
25木曽路31,978
26アトム31,076
27クォリティフーズ30,000
28なか卯29,712
29モンテローザフーズ28,069
30ハイデイ日高26,402

(帝国データバンク『全国企業あれこれランキング2023』より)

外食産業の採用市場

外食産業の業務

外食産業は店舗から本部まで幅広い業務で成り立っています。

社内FC制度

社員からFC加盟店オーナーを募集する制度です。

経営者意識の高い社員を育成する人事制度として導入されています。

外食産業の職務

  • 店舗開発
    出店市場調査、店舗物件発掘、店舗設計、リニューアルなど
  • 商品開発
    食材の安定供給先開発、食材の調理、加工法の研究、メニュー開発など
  • 食材調達
    食材の物流とコストの研究、食材管理法の研究、食材別の管理、環境対策など
  • 営業・店舗管理
    チェーン店の運営指導、競合店対策、FC展開の企画や管理、従業員の研修など
  • 店舗運営
    店舗の運営管理、食品衛生管理、従業員の勤務管理、接客指導、売上管理、利益管理など

外食産業の職種

外食産業では本部と店舗でさまざまな職種が重要な役割を担っています。

店長

担当する飲食店のトップです。

店の利益目標達成のために店舗運営に関わるあらゆる業務を行います。

販売計画、予算の作成と実行、販促計画、環境対策、店員の勤務管理と教育、クレーム対応、衛生・防火・防災・防犯などがあります。

店長には接客はもちろん、店員と信頼関係を構築できるコミュニケーション力やリーダーシップ、数字に強いことも求められます。

SV(スーパーバイザー)

SVとは本部に籍を置き、担当する店舗の巡回・管理・監督を行う店舗巡回指導員のことです。

店長やオーナーに本部の指示や情報を伝え、店舗運営や人材育成など店長の相談にのり、必要な助言や支援をします。

SVには高いコミュニケーション力が必要となり、本部と店長両者に信頼され、公平な立場で情報提供することが求められます。

指導は一方的とならないよう相手の話に真剣に耳を傾ける傾聴力も大切です。

バイヤー

バイヤーの仕事は、大きく食材調達計画を立てる、食材仕入れ、食材管理の3つに分けられます。

仕入れるだけでなく、新たな食材の発見と開発、粗利益高に対する数値責任を持つことも求められます。

商品知識や仕入先・産地に関する詳しい情報も欠かせません。

バイヤーには市場の動向を知るためのフットワークの軽さや情報収集力、取捨選択する能力が求められます。

売り手との交渉力や信頼関係を築く力も重要です。

店舗・メニュー開発

店舗開発の仕事は企画関連業務(出店計画やマーケティング調査を行うこと)と不動産物件関連業務(店舗物件取得や店舗設計を行うこと)に大きく分けられます。

交渉と調整力が求められます。

外食産業では季節や年間行事に合わせて、常に新しいメニュー開発に取り組んでいます。

メニュー開発担当者は、メニュー開発の目的や開発方針を把握して、調理の効率性や材料の原価率、客層、価格設定などを考えます。

市場動向や消費者のニーズを敏感にくみとり、メニューに反映して、売上につなげることが求められます。

サービス職の仕事(種類と分類)
サービス職は幅広いビジネスを最前線で支えています。未経験からチャレンジできるものも多くあります。サービス職の種類と分類についてご紹介します。

外食産業の求人・転職

外食業界は全体として人手不足の傾向が続いています。

正社員以外のアルバイトなどパートタイマーが占める割合は他産業より高く、従業員の定着率が低いことが指摘されています。

業界では労働条件の改善や人材育成に積極的に取り組み、人材確保に動き出しています。

飲食店の給与

区分20~24歳25~29歳41.5歳
(平均)
所定内労働時間166時間169時間168時間
残業11時間12時間10時間
月収214,500円256,600円281,600円
年間賞与等132,500円240,900円284,100円
年収2,706,500円3,320,100円3,663,300円

(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)

アルバイト・パートと正社員の待遇
アルバイトやパートなどのパートタイム従業員と正社員の待遇格差は長年の問題ですが、不合理な待遇格差の解消が進められています。

20代の就職・転職活動

人材紹介会社などのサービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーが就職・転職をサポートしてくれます。

非公開・好条件の求人紹介だけでなく、企業ごとの書類作成や面接対策のサポートなどで、選考通過率のアップが期待できます。

キャリアごとの就職・転職支援

まとめ

外食産業はコロナ以外にも人手不足や市場の飽和などの課題を抱えています。

人手不足の対策としては、パート・アルバイトから正規雇用(地域限定正社員など)に移行する人事制度を導入したり、研修教育を充実させるなど、定着率改善に向けて、積極的な取り組みを行っています。

飲食業界で有利なおすすめ資格
飲食・調理・栄養系の資格はたくさんあります。食の安全など意識の高まりから資格者のニーズも増えています。飲食業界で有利なおすすめ資格をご紹介します。
転職・就職に役立つ業界天気図一覧(2023年)
採用市場と密接に関わる企業の業績。業界の動向は転職活動を進めるうえで、重要な情報のひとつです。2023年度の主要業界天気図を一覧にしました。
副業で確実に収入アップしたい人におすすめのアルバイト・派遣
副業にはさまざまな種類がありますが、確実に収入を得たい人は、どんな副業をどのようにスタートすればよいのでしょうか。

 

【参考】
・一般社団法人日本フードサービス協会
・一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』