新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの飲食店が休業や短縮営業を余儀なくされ、外食業界は大きな打撃を受けました。
外食産業の転職・就職で押さえておきたい業界の動向、売上高ランキング、採用市場をご紹介します。
外食業界の最新動向(2022年)
外食業界とは
外食業界の業態は、主に営業手法で分類されます。
多様化する顧客ニーズに合わせて、外食業界の業態は一業態からさらに細分化しています。
コロナ禍で業態転換や新業態の育成などの動きが見られるようになっています。
外食業界の業態
- ファストフード
- ファミリーレストラン
- レストラン
- 喫茶店(カフェ)など
ファストフード
ファストフードは店内で最終加工した商品をカウンターなどで販売し、基本的に配膳はしません。
店舗数が最も多く、ハンバーガーチェーンなどの洋風ファストフードと牛丼・回転ずしチェーンなどの和風ファストフードに分かれます。
外食業界全体は縮小傾向ですが、ファストフードは市場規模を維持しています。
持ち帰りや宅配が拡大し、コンビニエンスストアや持ち帰り弁当店など中食との顧客獲得競争が激化しています。
日本マクドナルドホールディングス
ハンバーガーチェーン。
圧倒的なシェアと売上を誇っています。
コロナ禍でも巣ごもり需要を取り込み、業績は好調です。
- 従業員数:2,194人
日本KFCホールディングス
「ケンタッキーフライドチキン」をフランチャイズ中心に運営。
500円ランチなどが好調で客数を大幅に伸ばしています。
- 従業員数:862人
- 平均年齢:48歳
ゼンショーホールディングス
業界最大手。
牛丼の「すき家」から始まり、ファミリーレストランの「ココス」「ジョリーパスタ」など事業を拡大させてきました。
- 従業員数:16,253人
- 平均年齢:38歳
吉野家ホールディングス
牛丼2位。
牛丼の「吉野家」のほか、すしの「京樽」、ステーキの「アークミール」、うどんの「はなまる」などを展開しています。
- 従業員数:4,043人
- 平均年齢:49歳
松屋フーズホールディングス
牛丼3位。
「松屋」は牛丼だけでなく、定食も豊富です。
とんかつの「松のや」の出店を加速しています。
- 従業員数:1,580人
- 平均年齢:38歳
アークランドサービスホールディングス
かつ丼首位。
とんかつ店「かつや」を運営しています。
- 従業員数:638人
- 平均年齢:35歳
ファミリーレストラン
ファミリーレストランは総合的な品ぞろえの料理を提供する業態です。
洋食と和食を主体とした業態だけでなく、特定地域料理を扱うチェーンもあります。
外食消費は依然低調ですが、料理の専門性の高さや値ごろ感の強さを売りにしたブランド開発で生き残りを図っています。
人手不足対策に営業時間の見直しが進んでいます。
すかいらーくホールディングス
ファミレス最大手。
「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などを運営しています。
- 従業員数:6,161人
- 平均年齢:49歳
サイゼリヤ
低価格イタリアン「サイゼリヤ」を展開。
国内とオーストラリアの自社工場で食材を生産しています。
- 従業員数:4,164人
- 平均年齢:38歳
ロイヤルホールディングス
ファミレスの老舗。
「ロイヤルホスト」を中心に「てんや」「シズラー」「シェイキーズ」など多彩に展開しています。
- 従業員数:2,680人
- 平均年齢:44歳
ジョイフル
低価格ファミレス。
郊外型レストラン「ジョイフル」を運営しています。
- 従業員数:1,320人
- 平均年齢:42歳
ファミレス大手
- セブン&アイ・フードシステムズ:「デニーズ」など
- アレフ:「びっくりドンキー」など
- SRSホールディングス:「和食さと」など
回転ずし
寿司店には板前が直接客に配膳する寿司屋と、ベルトコンベアーで配膳する回転ずし、宅配専門寿司店があります。
回転ずしはラーメンなどのサイドメニューやデザートの強化でファミレスから家族客の流入を図り、縮小する外食業界のなかで成長を続けています。
FOOD&LIFE COMPANIES
業界首位。旧スシローグローバルホールディングス
都心型店舗を展開することで、従来の郊外型とは異なる利用動機、顧客層を取り込む計画です。
- 従業員数:2,863人
- 平均年齢:40歳
くら寿司
無添加のすし店を全国直営展開。
都市型店舗の展開も進めています。
- 従業員数:2,090人
- 平均年齢:31歳
回転寿司大手
- カッパ・クリエイト:「かっぱ寿司」
- 元気寿司:「元気寿司」「魚べい」
麺類
麺類は大きく和風と中華の業態に分かれます。
処遇改善に力を入れる動きが目立つようになっています。
トリドールホールディングス
セルフ式うどん「丸亀製麺」が主力。
- 従業員数:4,475人
- 平均年齢:40歳
リンガーハット
ちゃんぽん「リンガーハット」を全国展開。
- 従業員数:584人
- 平均年齢:42歳
王将フードサービス
「餃子の王将」を展開。
新業態を強化しています。
- 従業員数:2,258人
- 平均年齢:36歳
ハイデイ日高
低価格の中華料理「日高屋」が主力。
- 従業員数:858人
- 平均年齢:35歳
幸楽苑ホールディングス
中華そば「幸楽苑」を直営展開。
- 従業員数:814人
- 平均年齢:43歳
居酒屋
居酒屋はアルコールと一緒に料理を提供します。
居酒屋業界は若者のアルコール離れなどで低迷し、なかでも、幅広いメニューの総合居酒屋の苦戦が続いています。
専門性の高い業態は好調です。
コロワイド
多業態を運営。
居酒屋ブランドには「甘太郎」「北海道」などがあります。
「大戸屋」を買収しました。
- 従業員数:5,625人
- 平均年齢:44歳
モンテローザ
居酒屋大手。
「白木屋」「笑笑」「魚民」などを運営しています。
- 従業員数:2,661人
大庄
海鮮系居酒屋。
「庄や」「日本海庄や」などを全国展開しています。
- 従業員数:2,579人
- 平均年齢:45歳
ワタミ
居酒屋大手。
居酒屋から「焼肉の和民」などへ業態転換を進めています。
- 従業員数:2,642人
- 平均年齢:41歳
チムニー
海鮮系に強く、「はなの舞」などを運営しています。
- 従業員数:752人
- 平均年齢:42歳
SFPホールディングス
「磯丸水産」「鳥良商店」などを運営しています。
- 従業員数:1,158人
- 平均年齢:38歳
鳥貴族ホールディングス
低価格の焼き鳥チェーン。
- 従業員数:854人
- 平均年齢:33歳
肉業態
多店舗展開を続けてきましたが、不採算店舗の整理を進める動きが見られます。
レイズインターナショナル
コロワイド傘下。
「牛角」「温野菜」「土間土間」
- 従業員数:1,176人
木曽路
しゃぶしゃぶ最大手。
- 従業員数:1,237人
- 平均年齢:43歳
ペッパーフードサービス
「いきなりステーキ」を展開。
閉店が相次いでいます。
- 従業員数:478人
- 平均年齢:39歳
物語コーポレーション
「焼肉きんぐ」を展開。
ラーメン店や和食の食べ放題なども展開しています。
- 従業員数:1,224人
- 平均年齢:32歳
カフェ・コーヒーチェーン
コーヒーチェーンは喫茶店やカフェをチェーン運営し、店内でコーヒーやサンドイッチなどの軽食を提供します。
スターバックスをはじめとして、外資系のコーヒーショップが相次いで誕生しました。
コンビニエンスストアが低価格の入れたてコーヒーを強化し、顧客の奪い合いが激化。
コーヒーチェーンはコーヒー豆の選定などサービス力を高めて成長を目指しています。
スターバックスコーヒージャパン
国内カフェ業界の売上トップ。
- 従業員数:4,508人
ドトール・日レスホールディングス
カフェの老舗。
「ドトールコーヒー」「エクセルシオールカフェ」「星乃珈琲店」
- 従業員数:2,755人
- 平均年齢:40歳
タリーズコーヒージャパン
伊藤園グループ。
「ダリーズコーヒー」を展開しています。
- 従業員数:991人
サンマルクホールディングス
「サンマルクカフェ」「倉敷珈琲店」
- 従業員数:828人
- 平均年齢:43歳
コメダホールディングス
名古屋地盤。「コメダ珈琲」
- 従業員数:441人
- 平均年齢:50歳
外食業界の売上高ランキング
飲食業上位1~30位
順位 | 企業名 | 年商(百万円) |
1 | 日本マクロナルド | 288,351 |
2 | すかいらーくレストランツ | 254,326 |
3 | あきんどスシロー | 192,704 |
4 | スターバックスコーヒージャパン | 173,810 |
5 | くら寿司 | 123,160 |
6 | エームサービス | 104,557 |
7 | サイゼリア | 95,284 |
8 | 松屋フーズ | 94,042 |
9 | 日本ケンタッキー・フライド・チキン | 83,617 |
10 | 丸亀製麺 | 80,932 |
11 | 王将フードサービス | 80,310 |
12 | 物語コーポレーション | 55,871 |
13 | ワタミ | 53,663 |
14 | カッパ・クリエイト | 52,249 |
15 | セブン&アイ・フードシステムズ | 50,853 |
16 | 快活フロンティア | 48,574 |
17 | 吉野家 | 46,534 |
18 | ココスジャパン | 44,000 |
19 | レインズインターナショナル | 40,914 |
20 | 壱番屋 | 39,495 |
21 | モンテローザフーズ | 37,080 |
22 | 元気寿司 | 35,720 |
23 | 大庄 | 35,565 |
24 | グリーンホスピタリティフードサービス | 34,000 |
25 | アレフ | 33,227 |
26 | タリーズコーヒージャパン | 32,811 |
27 | アトム | 32,170 |
28 | ペッパーフードサービス | 31,085 |
29 | 木曽路 | 31,067 |
30 | ロイヤルフードサービス | 30,394 |
(帝国データバンク『全国企業あれこれランキング2022』より)
外食業界の採用市場
外食業界の職務
外食業界・飲食店は店舗から本部まで幅広い業務で成り立っています。
社内FC制度
社員からFC加盟店オーナーを募集する制度です。
経営者意識の高い社員を育成する人事制度として導入されています。
外食業界の職務
- 店舗開発
出店市場調査、店舗物件発掘、店舗設計、リニューアルなど - 商品開発
食材の安定供給先開発、食材の調理、加工法の研究、メニュー開発など - 食材調達
食材の物流とコストの研究、食材管理法の研究、食材別の管理、環境対策など - 営業・店舗管理
チェーン店の運営指導、競合店対策、FC展開の企画や管理、従業員の研修など - 店舗運営
店舗の運営管理、食品衛生管理、従業員の勤務管理、接客指導、売上管理、利益管理など
外食業界の職種
本部と店舗でさまざまな職種が重要な役割を担っています。
店長
担当する飲食店のトップです。
店の利益目標達成のために店舗運営に関わるあらゆる業務を行います。
販売計画、予算の作成と実行、販促計画、環境対策、店員の勤務管理と教育、クレーム対応、衛生・防火・防災・防犯などがあります。
店長には接客はもちろん、店員と信頼関係を構築できるコミュニケーション力やリーダーシップ、数字に強いことも求められます。
SV(スーパーバイザー)
SVとは本部に籍を置き、担当する店舗の巡回・管理・監督を行う店舗巡回指導員のことです。
店長やオーナーに本部の指示や情報を伝え、店舗運営や人材育成など店長の相談にのり、必要な助言や支援をします。
SVには高いコミュニケーション力が必要となり、本部と店長両者に信頼され、公平な立場で情報提供することが求められます。
指導は一方的とならないよう相手の話に真剣に耳を傾ける傾聴力も大切です。
バイヤー
バイヤーの仕事は、大きく食材調達計画を立てる、食材仕入れ、食材管理の3つに分けられます。
仕入れるだけでなく、新たな食材の発見と開発、粗利益高に対する数値責任を持つことも求められます。
商品知識や仕入先・産地に関する詳しい情報も欠かせません。
バイヤーには市場の動向を知るためのフットワークの軽さや情報収集力、取捨選択する能力が求められます。
売り手との交渉力や信頼関係を築く力も重要です。
店舗・メニュー開発
店舗開発の仕事は企画関連業務(出店計画やマーケティング調査を行うこと)と不動産物件関連業務(店舗物件取得や店舗設計を行うこと)に大きく分けられます。
交渉と調整力が求められます。
外食業界では季節や年間行事に合わせて、常に新しいメニュー開発に取り組んでいます。
メニュー開発担当者は、メニュー開発の目的や開発方針を把握して、調理の効率性や材料の原価率、客層、価格設定などを考えます。
市場動向や消費者のニーズを敏感にくみとり、メニューに反映して、売上につなげることが求められます。

外食業界の求人・転職
外食業界は全体として人手不足の傾向が続いています。
正社員以外のアルバイトなどパートタイマーが占める割合は他産業より高く、従業員の定着率が低いことが指摘されています。
業界では労働条件の改善や人材育成に積極的に取り組み、人材確保に動き出しています。
飲食店の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 41.4歳(平均) |
所定内労働時間 | 168時間 | 170時間 | 170時間 |
残業 | 9時間 | 11時間 | 10時間 |
月収 | 216,300円 | 241,600円 | 273,200円 |
年間賞与等 | 156,600円 | 269,500円 | 307,900円 |
年収 | 2,752,200円 | 3,168,700円 | 3,586,300円 |
(厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より)
20代の転職活動
人材紹介会社のサービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーが就職・転職をサポートしてくれます。
非公開・好条件の求人紹介だけでなく、専任のキャリアアドバイザーによる企業ごとの書類作成や面接対策などのサポートで、選考通過率のアップが期待できます。
キャリアごとの就職支援
まとめ
外食業界はコロナ以外にも人手不足や市場の飽和などの課題を抱えています。
人手不足の対策としては、パート・アルバイトから正規雇用に移行する人事制度を導入したり、研修教育を充実させるなど、定着率改善に向けて、積極的な取り組みを行っています。

