自動車業界は製造業をけん引する日本の基幹産業であり、多くの雇用が生み出されています。
自動車業界は環境対策や自動運転など大きな変革期にあります。
また世界的な半導体不足による影響が長期化するなど、当面は厳しい経営環境が続きそうです。
転職・就職で押さえておきたい自動車産業の業界動向、売上高ランキング、採用市場をご紹介します。
自動車業界の最新動向(2023年)
自動車業界とは
自動車製造業は、日本標準産業分類では「輸送用機械器具製造業」に分類されています。
二輪自動車を含む各種自動車の完成品および自動車シャシ―の製造、組み立ての事業を行います。
自動車1台に3万点に上る部品が使われるといわれる自動車産業では、多くの部品メーカーが完成車メーカーを支える構造になっています。
雇用創出の効果が大きく、製造業の中心を担っています。
日本の自動車メーカーは、サプライヤーをパートナーとして扱い、長期取引を行っています。
自動車部品メーカーは、多くの場合、特定の自動車メーカーの企業グループ「企業系列」に属しています。
今後、電気自動車などエコカーへのシフトが進むと、業界の構造は変化し、雇用維持など多くの課題を抱えています。
世界の自動車販売台数(2021年)
- トヨタ自動車グループ(日)
- フォルクスワーゲングループ(独)
- ルノー・日産・三菱自動車(仏・日)
- 現代自動車(韓)
- ゼネラル・モーターズ(米)
次世代技術
各社は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」と呼ばれる次世代技術への対応を進めています。
環境対策
電気自動車(EV)も燃料電池車(FCV)も電気でモーターを回して走ります。
EVは急速充電器などを通じてバッテリーに蓄えられた電気を使い、FCVは水素を燃料として、化学反応させて起こした電気を使います。
世界的な環境規制の強化で開発競争が進んでいます。
自動運転
自動運転の実現により、交通事故の減少、渋滞の回避、二酸化炭素の削減などが見込まれます。
ホンダが世界初のレベル3の自動運転機能搭載モデルを発売するなど、国内での取り組みが活発化しています。
- レベル1:運転支援
- レベル2:高度な運転支援
- レベル3:特定条件下で自動運転
- レベル4:特定条件下で完全自動運転
- レベル5:完全自動運転
カーシェア
新型コロナの影響でカーシェアの利用者は減少していましたが、観光目的などの需要が回復傾向にあります。
自動車(国内)
国内の自動車メーカーは、グループ化や提携関係などで連携しています。
自動車部品メーカーはブレーキや電線、ドア、ゴム部品などを自動車メーカーに供給しています。
一部の大手企業を除き、多くは中小企業で構成されています。
トヨタ自動車
国内最大で世界トップクラスのメーカー。
ハイブリット車に大きな強みがあります。
- 従業員数:372,817人
- 平均年齢:40歳
- 国内販売台数:139万台
- 世界販売台数:1,038万台
トヨタ自動車系部品メーカー
- デンソー(自動車部品国内最大手)
- アイシン(旧アイシン精機)
- 豊田自動織機
- トヨタ紡織
- ジェイテクト
- 豊田合成
- 東海理化
- フタバ産業
ホンダ
国内メーカー2位。
二輪車では売上世界トップです。
- 従業員数:204,035人
- 平均年齢:45歳
- 国内販売台数:57万台
- 世界販売台数:407万台
ホンダ系部品メーカー
- テイ・エス テック
- エフテック
- ユタカ技研
- 八千代工業
- 武蔵精密工業
- スタンレー電気(ホンダ中心)
スズキ
小型車、二輪大手。
軽自動車を主体として販売台数を伸ばしていましたが、登録者販売にも力を入れています。
- 従業員数:69,193人
- 平均年齢:41歳
- 国内販売台数:56万台
- 世界販売台数:270万台
日産自動車
登録車販売3位。
EVと自動運転技術に注力しています。
- 従業員数:134,111人
- 平均年齢:42歳
- 国内販売台数:42万台
- 世界販売台数:382万台
日産自動車系部品メーカー
- ジヤトコ
- 愛知機械工業
- ユニプレス(日産向けが中心)
ダイハツ工業
軽自動車のトップメーカー。
トヨタの完全子会社でトヨタの小型車戦略を担っています。
- 国内販売台数:54万台
- 世界販売台数:71万台
マツダ
クルーンディーゼルのトップメーカー。
エンジン技術に強みがあります。
- 従業員数:48,750人
- 平均年齢:42歳
- 国内販売台数:14万台
- 世界販売台数:125万台
SUBARU
4WDで高い技術。
アメリカ市場に強みがあります。
- 従業員数:36,910人
- 平均年齢:39歳
- 国内販売台数:8万台
- 世界販売台数:73万台
三菱自動車
東南アジアが主力。
実質的に日産の傘下に入っています。
- 従業員数:28,796人
- 平均年齢:41歳
- 国内販売台数:7万台
- 世界販売台数:93万台
自動車部品
電動化や情報関連の部品が増加し、エンジン関連が占める割合は減少傾向にあります。
独立系部品メーカー
- 矢崎総業
- マレリ
- 日本精工
- 小糸製作所
- ニッパツ
- NTN
- NOK
- トピー工業
- サンデン
- 曙ブレーキ工業
- 日立Astemo
トラック
次世代車両開発を推進。
グループ系列を超えたメーカー間の提携が進んでいます。
いすゞ自動車
トラック大手。
国内唯一の独立系メーカーです。
- 従業員数:36,224人
- 平均年齢:41歳
- 国内販売台数:7万台
- 世界販売台数:55万台
日野自動車
大型トラックに強み。
エンジン不正問題で行政処分を受けました。
- 従業員数:34,405人
- 平均年齢:39歳
- 国内販売台数:5万台
- 世界販売台数:15万台
三菱ふそうトラック・バス
三菱自動車からダイムラーの傘下に。
アジア戦略を担っています。
二輪車
日本メーカーが世界シェアの5割を占めています。
二輪車業界でも環境規制が進み、電動化の動きが出始めています。
ホンダ
世界首位。
アジアを中心に世界市場で高いシェアを占めています。
- 世界販売台数:1,731万台
ヤマハ発動機
世界3位。
売上の9割以上を海外が占めています。
- 従業員数:51,249人
- 平均年齢:44歳
- 世界販売台数:449万台
スズキ
販売の多くがインドや中国などのアジアです。
- 世界販売台数:163万台
カワサキモータース
川崎重工業から分社化。
中小型バイクに強みがあります。
- 従業員数:9,325人
- 世界販売台数:49万台
中古車
中古車業界は価格競争が激化し、個人から車を仕入れるなど小売り重視の流れが見られるようになっています。
中古車買い取り
従来の卸売中心から小売強化の流れが加速しています。
- IDOM
- カーチスホールディングス
- アップルオートネットワーク
- バイク王&カンパニー
カーオークション
競争激化で落札率は低下しています。
- ユー・エス・エス
- トヨタユーゼック
- オークネット
中古車販売
新車市場の成長可能性が低く、中古車市場も伸び悩むとみられます。
- ビックモーター
- ネクステージ
- ケーユーホールディングス
自動車業界の売上高ランキング
自動車・二輪車製造
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | トヨタ自動車 | 31,379,507 |
2 | 本田技研工業 | 14,552,696 |
3 | 日産自動車 | 8,424,585 |
4 | スズキ | 3,568,380 |
5 | マツダ | 3,120,349 |
6 | SUBARU | 2,744,520 |
7 | いすゞ自動車 | 2,514,291 |
8 | 三菱自動車工業 | 2,038,909 |
9 | ヤマハ発動機 | 1,812,496 |
10 | 川崎重工業 | 1,500,879 |
11 | 日野自動車 | 1,459,706 |
12 | ダイハツ工業 | 1,327,000 |
13 | 三菱ふそうトラック・バス | 657,357 |
14 | UDトラックス | 268,607 |
国産車・輸入車販売
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | メルセデス・ベンツ日本 | 419,074 |
2 | トヨタモビリティ東京 | 375,214 |
3 | ヤナセ | 364,437 |
4 | ビー・エム・ダブリュー | 220,000 |
5 | 神奈川トヨタ自動車 | 202,830 |
6 | フォルクスワーゲングループジャパン | 150,282 |
7 | 大阪トヨペット | 145,804 |
8 | 愛知トヨタ自動車 | 144,637 |
9 | 南関東日野自動車 | 137,490 |
10 | いすゞ自動車首都圏 | 123,213 |
11 | YPアセット | 116,756 |
12 | 埼玉トヨペット | 109,243 |
13 | 関東マツダ | 104,287 |
14 | 日産大阪販売 | 94,845 |
15 | 神戸トヨペット | 78,348 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
自動車業界の採用市場
自動車業界の業務
自動車メーカーでは、商品企画から開発・設計、生産、営業など、それぞれの部門で重要な役割を担っています。
主な業務
- 調査・企画
・市場調査
・商品企画 - 開発・設計
・研究開発
・デザイン
・車両設計
・システム設計
・部品設計
・評価 - 試作・試験
- 生産
・プレス、溶接
・塗装、組み立て
・検査、出荷 - 営業・販売
・国内営業
・海外営業
・ディーラー
自動車業界の求人・転職
自動車業界では次世代技術の研究開発に力を入れています。
自動運転やIoTなど新しい技術開発が急務となっているため、組み込み・ソフト系エンジニアのニーズが一段と高くなっています。
生産性向上を目的とする「工場のスマート化」にも力を入れ始めていますので、生産技術開発の技術者や生産のプロセス全体や工場内のシステムを設計するエンジニアが求められるようになっています。
輸送用機器製造業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 41.4歳 (平均) |
所定内労働時間 | 165時間 | 165時間 | 165時間 |
残業 | 24時間 | 25時間 | 20時間 |
月収 | 252,700円 | 294,500円 | 361,400円 |
年間賞与等 | 520,300円 | 800,100円 | 1,160,200円 |
年収 | 3,552,700円 | 4,334,100円 | 5,497,000円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
自動車業界の転職活動
エージェントサービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーのサポートを受けることができます。
非公開・好条件の求人紹介だけでなく、書類作成や面接対策のアドバイスなどで選考通過率のアップが期待できます。


まとめ
市場規模も働く人も桁違いの自動車業界の動向は、労働市場にも大きな影響を及ぼします。
各社は生き残りをかけて、次世代技術の研究開発を進めています。
自動車産業の大きな転換期ともいえる時代に、価値観の変化にも対応した新たな取り組みが求められています。




【参考】
・国土交通省ウェブサイト
・経済産業省ウェブサイト
・一般社団法人日本自動車工業会「統計・資料」
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』