鉄道は生活に欠かすことのできない社会インフラとして重要な役割を担っています。
日本の鉄道業界は、世界最高水準の技術を誇っています。
鉄道会社の転職・就職で押さえておきたい業界の動向、売上高ランキング、採用市場をご紹介します。
鉄道業界の最新動向(2022年)
鉄道業界
鉄道業とは、鉄道による旅客や貨物の運送、運送施設の維持補修など一括した事業のことです。
JR各社は旧国鉄が1987年に分割・民営化されて発足しました。
鉄道が主力事業のJRとは異なり、私鉄各社は鉄道事業のほか、百貨店・スーパーなどの流通、不動産、ホテル・レジャーなど経営の多角化を進めています。
訪日外国人観光客の増加で需要が伸び、都心の再開発を受けて、通勤利用も増えていましたが、新型コロナウイルスの影響で、インバウンド需要には期待できず、テレワークなど働き方にも変化が見られるようになっています。
大手私鉄では、人口減少が進むなか、将来にわたる収入確保のため沿線人口の定着を図っています。
鉄道の種類
- 普通鉄道
- 懸垂式鉄道
- 跨座式鉄道
- 案内軌条式鉄道業
- 無軌条電車
- 鋼索鉄道
- 浮上式鉄道
- その他
JRグループ
JRグループは北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州の旅客6社と貨物会社です。
新型コロナウイルス感染拡大による長距離旅客需要の打撃が大きく、厳しい経営環境は続く見通しです。
東日本旅客鉄道(JR東日本)
業界最大手。
東北から甲信越地方、首都圏を営業エリアとし、運行キロ数は世界トップクラス。売上は2兆円超という巨大企業です。
- 従業員数:71,973人
- 平均年齢:39歳
- グループ企業:ルミネ、アトレ、ホテルメトロポリタンなど
東海旅客鉄道(JR東海)
東海道新幹線の東京~新大阪間と中部地方の在来線を営業。
東海道新幹線が収益の大半を占めています。
リニア中央新幹線は2027年の開業が延期になっています。
- 従業員数:30,153人
- 平均年齢:37歳
- グループ企業:ジェイアール東海高島屋、ジェイアール東海ホテルズなど
西日本旅客鉄道(JR西日本)
山陽新幹線と近畿圏中心。
北陸地方と中国地方を営業エリアとしています。
不動産や流通など非鉄道事業の展開を進めています。
- 従業員数:47,984人
- 平均年齢:38歳
- グループ企業:ジェイアール西日本伊勢丹、ホテルグランヴィア大阪、日本旅行など
北海道旅客鉄道(JR北海道)
北海道新幹線を2016年に一部開業。
札幌都市圏以外は旅客数が少ない不採算路線です。
- 従業員数:6,317人
- グループ企業:札幌駅総合開発、JR北海道ホテルズなど
四国旅客鉄道(JR四国)
四国最大の交通網。
JR発足以降高速道路の整備が進み、高速バスが開設されました。
対抗する都市間輸送を強化しています。
- 従業員数:2,119人
- グループ企業:ジェイアール四国バス、讃岐うどん「めりけんや」など
九州旅客鉄道(JR九州)
九州新幹線の開業が鉄道需要に貢献。
寝台列車「ななつ星」も人気です。
- 従業員数:15,661人
- 平均年齢:39歳
- グループ企業:ジェイアールバス九州、九州高速船など
日本貨物鉄道(JR貨物)
全国ネットワークを持つ貨物鉄道会社。
マンションの分譲など経営の多角化に力を入れています。
- 従業員数:5,472人
- グループ企業:ジェイアール貨物・不動産開発、東京貨物開発
関東私鉄
関東大手は、定期利用客の減少が目立っています。
働き方や生活スタイルの変化などから、コロナ収束後もコロナ前の鉄道利用レベルへ完全に回復するのは難しいと見られています。
東急(旧東京急行電鉄)
東急グループの鉄道会社。「東急」に社名を変更。
東京の高級住宅地を通る鉄道で強いブランド力があります。
地域開発と鉄道建設を連携させる独自の経営モデルです。
- 従業員数:24,655人
- 平均年齢:43歳
- グループ企業:伊豆急行、東急百貨店、東急ホテルズ、東急不動産など
東武鉄道
伊勢崎線と東上線二つの路線系統。
スカイツリーの効果を追究し、ホテルや観光列車を強化しています。
- 従業員数:20,345人
- 平均年齢:47歳
- グループ企業:東武バス、東武タウンソラマチ、東武タワースカイツリーなど
小田急鉄道
新宿を拠点とする神奈川方面の路線。
首都圏でも随一の混雑路線です。
複々線化完了で利便性向上が期待されます。
- 従業員数:13,960人
- 平均年齢:40歳
- グループ企業:小田急バス、箱根登山鉄道、江ノ島電鉄など
西武ホールディングス
傘下の西武鉄道は東京と埼玉南西部を結ぶ鉄道。
複線で過密運転を実施しています。
- 従業員数:22,844人
- 平均年齢:40歳
- グループ企業:伊豆箱根鉄道、プリンスホテル、横浜八景島など
京王電鉄
新宿と東京・多摩地区を結ぶ路線が主体。
収益力が安定しています。
- 従業員数:13,542人
- 平均年齢:41歳
- グループ企業:京王電鉄バス、京王百貨店、京王プラザホテルなど
京浜急行電鉄
東京と横浜、三浦半島の路線。
羽田空港アクセスの強みが成長の柱になっています。
- 従業員数:9,055人
- 平均年齢:39歳
- グループ企業:京浜急行バス、京急不動産、京急ストアなど
京成電鉄
千葉県と東京を結ぶ通勤路線。
成田空港のアクセスに強みがあります。
- 従業員数:11,150人
- 平均年齢:41歳
- グループ企業:新京成電鉄、京成バスなど
相鉄ホールディングス
傘下に相模鉄道。
ビジネスホテルにも進出しています。
- 従業員数:5,085人
- 平均年齢:49歳
関西私鉄
私鉄各社は全国各地の輸送手段として機能しています。
コロナ禍でのダメージは大きく、固定費削減を進めるなど、経営の立て直しを急いでいます。
近鉄グループホールディングス
私鉄最長の路線距離。
名古屋を大阪を名阪特急、奈良、京都、伊勢・志摩、吉野を近鉄特急が結んでいます。
あべのハルカスを建設。
- 従業員数:30,343人
- 平均年齢:46歳
- グループ企業:近畿日本鉄道、近鉄百貨店、近鉄・都ホテルズなど
阪急阪神ホールディングス
傘下に阪急電鉄、阪神電気鉄道。
阪急阪神ホールディングスは、不動産やホテルなど多角経営を展開しています。
- 従業員数:22,800人
- 平均年齢:42歳
- グループ企業:阪急阪神交通社、阪急阪神不動産、阪急阪神ホテルズなど
京阪ホールディングス
大阪-京都間の路線が中心。
中之島地区の開発を推進しています。
- 従業員数:6,967人
- 平均年齢:44歳
- グループ企業:京阪電気鉄道、京阪百貨店、ホテル京阪など
南海電気鉄道
大阪南部、和歌山が地盤。
関西空港へのアクセスに強みがあります。
- 従業員数:9,133人
- 平均年齢:44歳
私鉄大手
私鉄大手は従来から多角経営を進めています。
鉄道事業は効率化、非鉄事業の育成に力を入れています。
名古屋鉄道
名古屋周辺に路線網を展開。
名鉄名古屋駅前の再開発を推進しています。
- 従業員数:29,309人
- 平均年齢:44歳
- グループ企業:名鉄バス、名鉄百貨店、名鉄グランドホテルなど
西日本鉄道
九州北部の鉄道路線。
主力はバス事業です。国際物流にも強みがあります。
- 従業員数:19,618人
- 平均年齢:45歳
地下鉄とその他の鉄道
JRや私鉄以外にも多くの鉄道会社があります。
東京地下鉄(東京メトロ)
都心の地下鉄を運営。
株式上場を目指しています。
- 従業員数:9,881人
地下鉄
- 東京都交通局
- 大阪市交通局
- 名古屋市交通局
- 札幌市交通局
- 仙台市交通局
- 横浜市交通局
- 京都市交通局
- 神戸市交通局
- 福岡市交通局
モノレール
- 東京モノレール
- 湘南モノレール
- 千葉都市モノレール
- 大阪高速鉄道大阪モノレール
- 多摩都市モノレール
路面電車
- 札幌市交通局
- 函館市交通部
- 東京都交通局
- 豊橋鉄道
- 富山地方鉄道
- 万葉線
- 福井鉄道
- 京福電気鉄道
- 阪堺電気軌道
- 岡山電気軌道
- 広島電鉄
- 伊予鉄道
- 土佐電気鉄道
- 長崎電気軌道
- 熊本市交通局
- 鹿児島市交通局
鉄道業界の売上高ランキング
鉄道会社
順位 | 企業名 | 収入高(百万円) |
1 | 東日本旅客鉄道(JR東日本) | 1,764,584 |
2 | 東急 | 935,927 |
3 | 西日本旅客鉄道(JR西日本) | 898,172 |
4 | 東海旅客鉄道(JR東海) | 823,517 |
5 | 近鉄グループホールディングス | 697,203 |
6 | 阪急阪神ホールディングス | 568,900 |
7 | 東武鉄道 | 496,326 |
8 | 名古屋鉄道(名鉄) | 481,645 |
9 | 小田急電鉄 | 385,978 |
10 | 西日本鉄道(西鉄) | 346,121 |
11 | 西武ホールディングス | 337,061 |
12 | 京王電鉄 | 315,439 |
13 | 東京地下鉄(東京メトロ) | 295,729 |
14 | 九州旅客鉄道(JR九州) | 293,914 |
15 | 京阪ホールディングス | 253,419 |
16 | 京浜急行電鉄(京急) | 234,964 |
17 | 相鉄ホールディングス | 221,136 |
18 | 京成電鉄 | 207,761 |
19 | 南海電気鉄道 | 190,813 |
20 | 北海道旅客鉄道(JR北海道) | 111,944 |
(帝国データバンク『業界動向2022-Ⅰ』より)
鉄道業界の採用市場
鉄道会社の主な職種
鉄道業界には、特有の職種があり、専門性を活かして活躍しています。
運転士
運転士は駅員、車掌等鉄道の現場経験を経て、適性検査を受けて教習課程に進むのが一般的です。
運転士になるには「動力車操縦者免許」の国家試験に合格する必要があります。
- 甲・乙種蒸気機関車運転免許
- 甲・乙種内燃車運転免許
車掌
車掌の業務は、ホームでの列車停止位置の確認、ドアの安全確認、運転士への出発合図など多岐にわたります。
鉄道営業法、鉄道営業規則などの知識、自社だけでなく接続する他社線の知識まで必要となります。
駅員
駅員の業務は、発券業務、構内巡視、ホーム整理などをローテーションで行っている会社が多いようです。
乗客との対応を主とする「コンシェルジュ」や「アテンダント」の制度を採用している駅もあります。
保線
保線の業務は、常に線路の安全を維持することです。
軌道検測車を走らせて状態を確認し、夜間に作業を行います。定期的にレールの取替え、バラストの突き固めなども行います。
ダイヤグラム作成
ダイヤグラムは「列車運行図表」とも呼ばれ、時間を横軸に駅を縦軸に列車の動きを図にしたものです。
列車の安全を確保した上で、運行を効率化するのが主な作成目的です。
鉄道会社の求人・転職
新卒採用のほかに、中途採用を随時実施しています。
鉄道以外の社会人経験を業務に活かすことが期待されますので、リベンジ転職のチャレンジも可能です。
鉄道業の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 39.9歳(平均) |
所定内労働時間 | 154時間 | 152時間 | 152時間 |
残業 | 10時間 | 12時間 | 13時間 |
月収 | 238,400円 | 289,600円 | 397,800円 |
年間賞与等 | 642,300円 | 1,094,600円 | 1,578,200円 |
年収 | 3,503,100円 | 4,569,800円 | 6,351,800円 |
(厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」より)
キャリアごとの転職支援
転職・就職のスキルアップ
鉄道業界でも英語の重要性は高まっています。
TOEICテスト対策はしておきましょう。
TOEICのスコアアップには、毎日の英語学習が欠かせません。
TOEICのスコアアップを目的としたプログラムを活用して、効率的に学習することをおすすめします。

まとめ
コロナ禍で普及したテレワークによって減少した通勤利用は、コロナ後も回復しない可能性が高まっています。
座席指定列車を導入するなど、鉄道各社はこれまでの戦略の見直しを始めています。
採用は基本的に、正社員、契約社員などの募集、契約社員から正社員への登用が行われています。

