キーワード解説
人事評価制度
人事評価制度とは、従業員による一定期間の働き(能力・勤務態度・組織への貢献度など)に対して、評価者が客観的に評価して処遇に反映する仕組みのことです。
人事評価の情報は、昇進や昇格、昇給、賞与などの基準として、また能力開発、人材育成にも活用されています。
これまでの人事評価制度は、主に査定手段として使われてきましたが、人事評価制度の目的は、従業員が能力を最大限に発揮できる仕組みとして運用することに変わってきています。
昇進・昇格
組織の序列システムです。
昇進は組織において上位のポジションに進むことで、昇格は資格等級が上がることをいいます。
人事評価の情報をもとにした従業員の能力や成果によって格付けされます。
昇給・賞与
資格等級制度では等級と給与テーブルがリンクしています。
等級が上がると昇給することになります。
賞与は対象期間の評価をもとに、定期的に支給される給与とは別に一時金として支給されます。
配置転換
適正は配置転換を行うために、従業員の能力や成果の判断材料として人事評価の情報が活用されます。
人材育成
人事評価の内容は、従業員に効果的な教育を行うために必要となる研修などのニーズを把握することに役立てられます。
人事評価制度の動向
日本の人事制度は終身雇用のもと、「年功序列制」で運用されてきました。
年功序列の賃金制度では、本人の能力にかかわらず年齢とともに賃金が上昇するため、従業員の高齢化や低成長時代を迎え、年功序列は見直しが進みました。
企業では、人事評価制度を組織の生産性向上のための手段として使うようになり、貢献度の高い従業員には、高い評価を与える人事施策を取り入れるようになっています。
人事評価の主な目的
- 従業員の能力や成果を客観的かつ公正に昇格・昇進、昇給・賞与などに反映することで、公平な処遇を実現する
- 業務を遂行するうえで必要な能力を明確にして、従業員の能力開発に役立てる
- 従業員の能力や成果を把握して、人事異動など適材適所の配置を行い、組織運営の効率化を図る
人事評価の主な方法
人事評価には、代表的な方法として「情意評価」「能力評価」「行動評価」「業績評価」があります。
それぞれの評価項目を組み合わせて作成した人事評価の基準が使われます。
- 情意評価:仕事に取り組む姿勢や勤務態度
- 能力評価:保有する能力、発揮した能力
- 行動評価:成果を出すために取った行動、コンピテンシー
- 業績評価:一定期間における仕事の成果、目標達成度
目標管理制度
目標管理制度は、経営方針や経営計画などに基づいて個人の目標を設定して、その達成度を評価する制度です。
- 組織の方針・計画と個人の目標を合わせる
- 個人の職務・役割を明確にする
- 具体的な目標を立てる
- 評価される成果を特定する
目標設定の課題
目標を設定するには、多くの課題がありますので、まずは適正な目標を設定することが必要になります。
- 短期的に達成できる目標を設定して、中長期的な目標は設定しない
- 成果を出しやすい目標ばかり設定する
- 結果に注目しすぎて、プロセスは軽視される
- 個人の成果のため組織的な目標を設定しない
- 部下の指導など人材育成の関心が薄れる
評価結果のフィードバック
人事評価が従業員から信頼される制度として機能するためには、評価者が公正な評価をして、その結果を評価対象者にフィードバックすることが重要になります。
評価結果のフィードバックは、評価対象者の成長につなげるために行われます。
評価結果が悪かった場合には、その理由と同時に改善の方向性を示して、そのための指導、支援が必要です。
人事評価の公平性や透明性を保ち、評価に対する納得性を高めることが組織や企業への信頼感にもつながります。
- 客観的な基準に基づいて評価する
- 評価の要素と評価の基準を公開する
- 業務上の行動・事実を評価する
- 評価結果をフィードバックする
評価者のエラー
人事評価制度は、公正に運用されなければなりませんが、評価者には陥りやすいエラーがあります。
評価者は自分が陥りやすい傾向を理解して、評価者研修などトレーニングを十分に行うことが必要です。
- ハロー効果
際立った特徴に引きずられて、他の要素も高く評価してしまうこと - 寛大化傾向
評価が甘く、全般的に高く評価してしまうこと - 中心化傾向
差をつけず、中心的な評価に偏ってしまうこと - 対比誤差
自分の経験や能力と比較して対象者を評価をしてしまうこと - 論理的誤差
関連のありそうな要素についてつながりがあるとして同じような評価をしてしまうこと
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・一般社団法人日本能率協会