キーワード解説
経歴詐称
経歴詐称とは、企業に採用される際に提出する履歴書や面接等において、年齢や学歴、職歴、犯罪歴などを偽ったり、隠したりすることです。
採用時に最終学歴や職歴などを偽る経歴詐称は、採否の決定や採用後の労働条件の決定に重大な影響を与えます。
経歴詐称を理由とする懲戒処分や内定取り消しが有効とされるのは、「重要な経歴」を詐称したと認められる場合です。
「重要な経歴」の詐称とは、最終学歴、職歴、犯罪歴などの詐称であり、詐称の内容や職種、地位などに応じて判断されます。
重要ではない経歴の詐称を理由とする懲戒処分は無効となります。
年齢詐称
年齢を限定して募集・採用を行うことは原則禁止されていますので、年齢の詐称で大きな問題になることはあまり多くはないといえます。
しかし、一定の年齢以上であることが求められる業種もありますので、そのような業種の採用で年齢を偽ると大きな問題となります。
また以下のケースでは、例外的に年齢制限を行うことが認められる場合があります。
- 定年年齢を上限とした募集
- 法令による年齢制限がある場合
- 長期キャリア形成を前提とした若年者の募集
- 技能・ノウハウの継承を目的とした募集
- 伝統芸能や子役など
- 60歳以上の高齢者に限定した募集
学歴詐称
学歴の詐称に関しては、労働力の適正な配置を誤らせたり、人事管理等の企業秩序に混乱を生じさせるなどの理由がある場合に、懲戒処分は有効とされるのが一般的な傾向です。
最終学歴を高く詐称する場合も、短期大学卒業を高卒とするように低く詐称する場合も懲戒処分の事由になるとされています。
募集が学歴不問の場合には、原則として応募者に告知義務はないと考えられています。
能力・資格詐称
能力や資格があることを採用の条件としている求人において、能力・資格を詐称することは懲戒処分の対象となります。
採用条件になっているわけではない能力・資格を詐称して、実際の職務遂行に問題が生じていないようなケースでは、処分の対象とならないことも考えられます。
職歴詐称
職歴の詐称には、一部の職歴を偽り、隠すものから、全部または長期的なものまでさまざまなケースがあります。
一般的には、重要な部分を占める職歴詐称について、厳しい判断がされています。
犯罪歴詐称
履歴書の賞罰は、一般的には確定した有罪判決をいうものとされています。
起訴され裁判中であることは含まれず、起訴猶予等の犯罪歴まで記載する義務はないと考えられています。
経歴詐称を理由とする懲戒権の濫用
懲戒処分が有効と認められるためには、就業規則の懲戒規定とその周知、具体的な懲戒理由が規定に該当し、懲戒権の濫用でないことなどが必要となります。
経歴詐称を理由とする懲戒権の濫用については、詐称の内容・程度、入社後の勤続年数、調査の程度・方法などの事情を考慮して、懲戒処分もやむを得ないかどうかで判断されます。
懲戒処分が、経歴詐称の行為その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないような場合は、懲戒権の濫用として無効になります。
【参考】
・労働新聞社
・労働基準判例検索