秘密保持義務とは

キーワード解説

秘密保持義務

秘密保持義務(守秘義務)とは、業務で知り得た企業の営業上の秘密(営業秘密)を不正に使用したり、承諾なしに第三者に開示したりしない義務のことです。

従業員は、在職中、労働契約の附随義務として、企業の営業上の秘密を保持する義務を負います。

秘密保持義務の具体的な内容については、通常、就業規則などに定められていて、実際に違反行為があった場合には、規定に基づく処分が行われます。

多くの企業では、入社時のリスク回避として、秘密保持義務を確認する内容を含んだ誓約書の提出を求めています。

誓約書には法律的な効力はありませんが、従業員の自覚を促し、意識を高めることが期待されています。

在職中の秘密保持義務は当然と考えられ、違反すれば、懲戒処分を受けたり、解雇される可能性があります。

また不正競争防止法には「営業秘密」の規定もあり、不正に利益を得るなどの目的で営業秘密を第三者に漏洩した場合は、民事上の損害賠償責任だけでなく、刑事罰の対象となります。

営業秘密

営業秘密とは、企業の事業活動において、他社に秘密にしておきたい情報のことです。

製造ノウハウ、顧客情報、新製品情報などが該当します。

営業秘密は秘密保持義務だけでなく、不正競争防止法によって法的にも保護されます。

不正競争防止法で保護される営業秘密は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義されています。

  1. 秘密管理性(秘密として管理されていること)
    ・情報にアクセスできる社員を制限していること
    ・情報にアクセスした社員がそれを秘密であると認識できること
  2. 有用性(有用な営業上または技術上の情報であること)
  3. 非公知性(公然と知られていないこと)

秘密保持義務の誓約書

秘密保持誓約書の提出が業務遂行上、必要不可欠と認められる場合には、誓約書を提出しないことを理由として、採用取り消し(解雇)となる可能性があります。

秘密保持義務を負うことについて確認する内容に合意することが難しい場合には、まず企業に内容の説明を求めましょう。

秘密保持誓約書を提出しないことで、企業の秘密情報を開示することができず、通常の業務が行えないような場合には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として、採用が取り消される可能性があります。

秘密とされる情報が通常の業務で知ることができるような内容であれば、秘密保持義務を負うことにはならず、企業は採用を取り消すことはできません。

秘密保持義務違反

秘密保持義務違反による懲戒処分については、開示された秘密情報が守秘義務の対象となるかどうか、開示されたと評価できるのかどうかなどによって判断されます。

使用者責任

使用者責任とは、従業員が事業の活動を行う上で、第三者に損害を与えた場合、企業が第三者に対して、その損害を賠償する責任を負うことです。

退職後の秘密保持義務

在職中の秘密保持義務は当然ですが、退職した後にも、在職中に知り得た営業上の秘密を保持する義務については、特別な根拠が必要だと考えられています。

秘密保持義務に必要性や合理性があり、公序良俗違反にならない場合には、退職後も秘密保持義務を負うことになります。

  • 不正競争防止法の規定(競業に関連する営業秘密の使用・開示)
  • 就業規則による規定
  • 誓約書など秘密保持義務の個別特約 など

転職者の秘密保持義務

転職者が秘密保持義務に違反して、転職先の企業へ秘密情報を開示・漏洩した場合、本人が契約違反を問われるだけでなく、転職先の企業も不法行為責任を問われ、競業行為の差し止め請求をされる可能性があります。

中途採用では、企業のリスク回避対応のひとつとして、秘密保持義務や競業避止義務などコンプライアンスに関する誓約書の提出を求められることが多くなっています。

不合理な内容であれば、誓約書は無効となりますので、就業規則の規定とともに内容をよく確認して提出するのがよいでしょう。

副業の秘密保持義務

従業員は企業の業務上の秘密を守る義務を負っていますが、副業先で自社の秘密を漏らしたり、副業先の秘密を自社で漏らす可能性があります。

副業を希望する人が年々増えていることから、副業の秘密保持義務について、リスクが懸念されるようになっています。

誠実義務に基づき、従業員は秘密保持義務、競業避止義務を負うほか、企業の名誉・信用を傷つけることなく誠実に行動することが求められます。

参考:厚生労働省ウェブサイト

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従業員は在職中には原則として秘密保持義務を負い、退職してからは特別な根拠が必要となる
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