労働契約とは

キーワード解説

労働契約

労働契約とは、労働者が使用者に労務を提供し、これに対して使用者が賃金を支払うことを約束する契約のことです。

労働契約は、必ずしも書面による必要はなく、口頭でも成立します。

従業員を募集した企業が応募者に対して採用する旨を本人に伝えたところ(内定通知)から、労働契約は始まっていることになります。

採用の内定は、始期付・解約権留保付労働契約が成立するとされています。

始期付・解約権留保付労働契約では、実際に就業する入社日まで(始期付)の内定期間であれば、内定を取り消すこと(解約権留保付)が認められています。

ただし、内定の取り消しが認められるのは、客観的に合理的で社会通念上相当といえる場合に限られています。

雇用契約も基本的には、労働契約とほぼ同じ意味ですが、労働基準法の適用が除外されるケースでは、労働契約ではなく、雇用契約にあたるとされます。

労働契約の内容である労働条件は、企業と従業員の合意によって決定します。

労働契約では、明示すべき労働条件が定められていて、明示された労働条件と実際の条件が異なる場合は、労働契約を即時解除することができます。

明示が必要な労働条件のうち、書面による明示が義務付けられているものと書面以外でもよいものがあります。

書面による労働条件を明示した書類が労働条件通知書です。

労働条件は通知書の形式で示せばいいことになっていますが、企業と従業員双方の合意を明確にするために、雇用契約書を作成して、それぞれが1通ずつ保管する方法もあります。

書面による労働条件の通知は、明示義務がある項目であっても、就業規則に条件が具体的に規定されていれば、契約締結時に就業規則を一緒に交付すればよいことになっています。

労働者

労働基準法では労働者を「職業の種類を問わず、事業または事業所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。

企業と雇用関係にある従業員は、正社員、契約社員パートタイマー、アルバイト、派遣社員など雇用形態に関わらず、労働者になります。

請負・業務委託契約で働くフリーランスなどは、労務の対価として賃金を受け取っているわけではないので、労働法の対象とはなっていません。

労働契約の期間

労働契約には正社員など期間の定めのないもの(無期労働契約)と期間を定めるもの(有期労働契約)があります。

有期労働契約は期間が満了すると、自動的に契約が終了します。

有期労働契約を更新することもできます。

有期労働契約を反復更新して、通算5年を超えたときは、労働者からの申込みにより無期労働契約に転換されます。(無期転換ルール

労働契約法

労働契約法は、労働契約(雇用契約)に関する使用者と労働者の間のルールを定めた法律です。

雇用形態の多様化など社会が変化するなか、従来の労働基準法や判例などで個別に対応してきたルールについて法律として施行されることになりました。

労働契約法では、労働契約の基本原則を明確化しています。

  1. 労使の実質的平等の下での合意
  2. ワーク・ライフ・バランスへの配慮
  3. 信義則の遵守
  4. 権利行使の濫用の禁止
  5. 契約内容の理解の促進
  6. 労働条件の明確化
  7. 安全配慮義務

労働に関するルールの優先順位

労働に関する条件が優先する基準に達していない部分があった場合、その部分は無効となります。

  1. 法令:労働基準法など労働に関する法律や通達
  2. 労働協約:企業と労働組合が団体交渉によって合意したもの
  3. 就業規則:企業が定めた基本的なルール
  4. 労働契約:企業と従業員の個別の契約

労働契約と労働基準法

労働基準法に違反する労働条件を定めた労働契約は無効となり、違反する部分については、労働基準法で定める基準まで引き上げられます。

労働契約と労働協約

労働協約の労働条件や待遇に関する基準に違反する労働契約は、その部分について無効となります。

無効となった部分は、労働契約に定めがない部分についても、労働協約の定めるところによります。

労働契約と就業規則

就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分については無効となります。

無効となった部分は、就業規則で定める基準になります。

就業規則より有利な条件の労働契約は有効です。

労働契約の終了

  • 期間の満了:有期労働契約期間の終了
  • 定年:定年制の年齢に到達
  • 死亡:労働者の死亡
  • 法人の解散:清算手続きの完了で法人が消滅
  • 解雇:使用者からの労働契約の解約
  • 辞職:労働者からの労働契約の解約
  • 合意退職:双方の合意による解約

参考:厚生労働省ウェブサイト

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労働契約は、契約の形式ではなく、実質的に当事者が指揮監督されて、労務の対価として賃金が支払われている場合に適用される
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