キーワード解説
有期労働契約
有期労働契約とは、期間を定めて結ぶ労働契約のことです。
所定労働時間の長さにかかわらず、契約期間に定めがあれば、有期労働契約となります。
有期労働契約で働く人(有期契約労働者)には、期間の定めのない正社員と同じようにフルタイムの契約社員や期間従業員、短時間勤務のパートタイマーやアルバイトなどの従業員がいます。
期間に定めがない契約で働いている場合は、社内で契約社員と呼ばれていても、有期契約労働者ではありません。
有期労働契約の1回の契約期間は、原則として3年が上限(一定要件に該当する場合は5年)と定められています。
一定の事業の完了に必要な期間を定めて締結される契約(有期の建設工事等)については、その期間にすることができます。
多くの場合、1回に上限の3年契約をするのではなく、1年以内の契約期間を定めて雇用契約を結び、適宜、契約を更新しています。
有期労働契約では、試用期間を設けないのが原則です。
試用期間以外にミスマッチを防ぐ方法として、6ヵ月程度の有期労働契約を結ぶことは可能とされています。
契約期間があるという理由だけで、正社員と異なる待遇をすることは認められません。
契約期間の原則
有期労働契約の期間について、労働基準法では上限を3年と定めています。
ただし、有期契約労働者が契約期間の初日から1年を経過してからは、企業に申し出て、いつでも退職することができます。
契約期間の特例
高度の専門的知識などをもつ有期契約労働者とは上限を5年にすることができます。
- 博士の学位を持つ人
- 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
- システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している人
- 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
- 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を持つ技術者、エンジニア、デザイナーなど
- システムエンジニアとして5年以上の実務経験があるシステムコンサルタント
- 上記と同等と厚生労働省労働基準局長が認める人
有期労働契約の労働条件の明示
有期労働契約を締結する際は、通常の労働条件の明示のほか、以下の内容について明示しなければなりません。
- 契約更新の有無
・自動的に更新する
・更新する場合がある得る
・契約の更新はしない など - 更新がある場合には更新有無の判断基準
・契約満了時の業務量により判断する
・従業員の勤務成績、態度により判断する
・従業員の能力により判断する
・会社の経営状況により判断する
・業務の進捗状況により判断する など - 内容を変更する場合には速やかにその内容を明示しなければならない
雇い止めの予告
雇い止めとは、有期労働契約を繰り返し更新して、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、企業が期間の満了を理由に以後の契約を更新せずに終了させることです。
有期労働契約が3回以上更新されているか、雇い入れ日から1年を超えて継続している有期契約労働者の契約を更新しない場合には、企業は少なくとも契約が満了する日の30日前までに、雇い止めの予告をしなければなりません。
雇い止めの理由の開示
雇い止めの予告をしてから従業員が雇い止めの理由について、証明書を請求したときは、企業は遅滞なく証明書を交付しなければなりません。
雇い止めをした後の場合も同じです。
- 契約をしたときから更新回数に上限があったから
- 担当していた業務が終了したから
- 事業縮小のため など
無期転換権
有期労働契約が同一の企業との間で、反復更新されて通算5年を超えたときには、従業員が希望すれば、期間の定めのない労働契約(無期労働契約または無期雇用)への転換が可能です。(無期転換ルール)
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件することはできません。
無期労働契約への転換後は、正社員にしなければならないわけではありません。
業務内容や賃金、労働時間などの労働条件は転換前と同じでもかまわないことになっています。
転換後の形態として限定正社員が導入されるなど、働き方の多様化が進んでいます。
正社員への転換
企業には有期労働契約の従業員を正社員に転換するための措置を講じることが義務づけられています。
- 正社員を募集する場合、その募集内容を有期契約労働者に周知する
- 正社員のポストを社内公募する場合、有期契約労働者にも応募する機会を与える
- 有期契約労働者が正社員へ転換するための試験制度を設ける
- その他正社員への転換を推進するための措置を講じる
期間途中の解雇
有期労働契約(有期雇用契約)については、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまで、企業は従業員を解雇(契約解除)することはできません。
契約期間中の解雇は、原則として残りの契約期間分の賃金を支払う必要があります。
期間途中の退職
有期労働契約の場合、従業員はやむを得ない事由があれば契約の途中でも退職することができます。
期間の定めのない契約と比べると、退職の自由について一定の制約があるといえます。
3年を上限とする有期労働契約の場合は、1年を経過すれば、いつでも、いかなる理由でも退職することができます。
参考:厚生労働省ウェブサイト