実務者研修は、国家資格の介護福祉士になるために必須となる資格です。
実務者研修は、介護福祉士を目指す人はもちろん、介護業界で働きたい人、介護職員としてステップアップしたい人などにとっても有利な資格です。
実務者研修は、指定を受けた実施機関で受講することができ、教育訓練給付制度対象の講座もありますので、介護業界で働く人には積極的な受講をおすすめします。
実務者研修の資格
実務者研修とは
実務者研修は、介護職のキャリアパスを明確にして、介護の知識や技術の向上を目的として導入されました。
以前の「訪問介護員養成研修(ホームヘルパー1~3級)」と「介護職員基礎研修」は終了し、入門資格は介護職員初任者研修に移行・一元化されました。
実務者研修は、介護職員初任者研修の上位に位置付けられる研修です。
国家資格である介護福祉士になるために必要となる基礎知識や技術を学びます。
実務者研修の内容
介護福祉士の養成施設や実務経験だけでは修得できない知識や技術を中心に450時間で構成されています。
介護福祉士国家試験を受験するためには、実務者研修の受講が必須となっています。
実務者研修の概要
実務者研修は、幅広いニーズに対応するための基本的な介護提供能力の修得を目標としています。
通信教育を活用した通信・通学併用コースが多く、働きながらでも受講しやすい環境が整備されています。
受講資格
学歴・実務経験などの制限はありませんが、介護職員初任者研修の修了を前提としている講座もあります。
実務者研修の修了と3年の実務経験で介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。
受講内容
実務者研修のカリキュラムは20科目、450時間です。
「医療的ケア」については50時間の学習内容とは別に12時間の演習(スクーリング)を修了する必要があります。
受講期間
カリキュラムは決まっていますが、通学や通信、保有資格による免除科目により受講期間は異なります。
通学では6ヵ月、通信では1ヵ月程度の講座が標準的になっています。
介護福祉士国家試験を受験する場合、申込みの際に実務者研修修了書(修了見込書含む)を提出しなければなりませんので、それまでに研修を修了する必要があります。
修了評価
介護職員初任者研修はカリキュラム修了後に筆記試験が実施されますが、実務者研修では筆記試験の実施は義務づけられていません。
スクールによっては修了試験を実施している場合もあります。
実務者研修の科目免除
実務者研修はこれまでに取得した資格や受講した研修を実務者研修に読み替え、受講時間を短縮することができます。
研修科目と受講時間
- ―の科目:実務者研修で免除になる科目
- ○の科目:実務者研修で受講が必要な科目
科目 | 時間数 | 介護職員 初任者研修 | ヘルパー 1級 | ヘルパー 2級 | ヘルパー 3級 | 介護職員 基礎研修 |
人間の尊厳と自立 | 5 | ― | ― | ― | ― | ― |
社会の理解Ⅰ | 5 | ― | ― | ― | ― | ― |
社会の理解Ⅱ | 30 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
介護の基本Ⅰ | 10 | ― | ― | ― | ○ | ― |
介護の基本Ⅱ | 20 | ○ | ― | ― | ○ | ― |
コミュニケーション技術 | 20 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
生活支援技術Ⅰ | 20 | ― | ― | ― | ― | ― |
生活支援技術Ⅱ | 30 | ○ | ― | ― | ○ | ― |
介護過程Ⅰ | 20 | ― | ― | ― | ○ | ― |
介護過程Ⅱ | 25 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
介護過程Ⅲ(スクーリング) | 45 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
発達と老化の理解Ⅰ | 10 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
発達と老化の理解Ⅱ | 20 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
認知症の理解Ⅰ | 10 | ― | ― | ○ | ○ | ― |
認知症の理解Ⅱ | 20 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
障害の理解Ⅰ | 10 | ― | ― | ○ | ○ | ― |
障害の理解Ⅱ | 20 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
こころとからだのしくみⅠ | 20 | ― | ― | ― | ○ | ― |
こころとからだのしくみⅡ | 60 | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
医学的ケア | 50 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
実務者研修受講時間数 | 450 | 320 | 95 | 320 | 420 | 50 |
実務者研修の受講メリット
実務者研修を受講することで、より専門的な知識が身につき、仕事の質が向上しますので、介護職としてのキャリアアップを期待できます。
介護福祉士の受験資格を得られる
介護福祉士の資格を取得する場合には、実務者研修の修了が必須となっています。
介護福祉士の実技試験は免除されます。
サービス提供責任者になれる
実務者研修の修了者は、実務経験に関わらず、サービス提供責任者になることができます。
サービス提供責任者は訪問介護事業所に必ず配置しなければなりませんが、資格者は不足していますので、転職・就職、キャリアアップなどにも有効です。
収入アップが期待できる
実務者研修の資格手当や好待遇など条件のよい求人が多く、収入アップが期待できます。
実務者研修の受講方法
実務者研修の通学・通信講座
介護の実務者研修は、指定を受けた実施機関の通学・通信講座で受講することができます。
通信コースであっても、実技講習などはスクーリング(通学)が必要になりますが、研修の大部分は通信講座で受講できますので、働きながらでも受講しやすいカリキュラムになっています。
スクールが実施する実務者研修講座のなかから自分に合ったコースを選ぶことができます。
実務者研修の費用
実務者研修の受講料は、通学と通信、保有資格により異なります。
通信コース(通信講座+スクーリング)では、無資格の場合で7万円程度から、介護職員初任者研修修了者の場合で5万円程度から受講できる講座があります。
通学コース(学習内容+実技スクーリング)では、通信コースより受講料は高めとなり、10万円から20万円程度が標準的になっています。
また通学では交通費もかかりますので、スクールの立地により費用が変わってきます。
条件を満たせば教育訓練給付制度を利用してお得に受講することもできます。
実務者研修の受講期間
実務者研修の受講期間は、受講料と同様に通学と通信、保有資格により異なります。
通信コースであってもスクーリング(通学)が必要な科目がありますので、スケジュールが合わずに受講できないと、修了までの期間が想定より長くなる可能性があります。
保有資格により免除科目が多ければそれだけ受講期間を短縮することができます。
実務者研修の選び方
- 受講料などかかる費用
- コースの種類
- フォロー体制の有無や内容
- スクーリングの場所
- 就業サポートの有無 など
実務者研修のスクール
実務者研修は、同じカリキュラムであっても、スクールによってさまざまなコースが用意されています。
それぞれのコースには特徴がありますので、自分に合った講座を見つけることが大切です。
指定を受けたスクールは資料を請求することができますので、講座の内容を確認して、自分に合ったスクールを選ぶことをおすすめします。
資格支援のあるサービス
介護職員初任者研修や実務者研修を無料で受講できる派遣サービスなどを利用すると、実務経験を積みながら資格を取得することができます。
まとめ
実務者研修は学歴や実務経験の制限なく受講できて、実務者研修を修了することで「サービス提供責任者」や「施設長候補」になることができます。
未経験や無資格から介護業界へのキャリアチェンジ、介護職としてのステップアップにおすすめの資格です。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・研修実施機関ウェブサイト