監査法人は企業の財務諸表に誤りや不正がないかを確認して、証明します。
会計不正の発覚により制度改革が進み、監査法人には厳格監査が求められるようになり、業務量が増加しました。
多くの人材が必要になるなか、会計士不足は深刻で、大手でも人材獲得に苦戦する状況です。
転職・就職で押さえておきたい監査法人の基礎知識、業界動向、採用市場をご紹介します。
監査法人業界の最新動向(2024年)
監査法人
監査法人は企業の決算や財務状態が適切かを見極める監査集団で、全国に多数あります。
企業の不適切な会計処理が発覚して、監査法人にはより時間をかけた厳格監査が求められるようになりました。
監査法人では、採算を重視した監査先の選別や監査仕訳にAIを導入するなど対策を進めています。
EY新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらたの4大監査法人が上場企業の7割を監査していますが、大手の監査先選別により、準大手や中堅監査法人の担当も増えています。
監査法人の人材不足は深刻で、人材獲得競争は激化しています。
国内監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- 有限責任あずさ監査法人
- EY新日本有限責任監査法人
- PwCあらた有限責任監査法人
- 太陽有限責任監査法人
- PwC京都監査法人
- 東陽監査法人
- 仰星監査法人
- 三優監査法人
世界10大会計事務所
- デロイト・トウシュ・トーマツ(米)
- プライスウォーターハウスクーパース(英)
- アーンスト・アンド・ヤング(英)
- KPMG(蘭)
- BDO(ベルギー)
- RSMインターナショナル(英)
- グラントソントン・インターナショナル(英)
- クロウ・グローバル(米)
- ベーカーティリー・インターナショナル(英)
- HLBインターナショナル(英)
国内4大監査法人
上場企業の監査では、4大監査法人が6割を担当しています。
大手による監査先選別で準大手・中堅監査法人が担当する上場企業も増加しています。
有限責任監査法人トーマツ
- 売上高:1,388億円
- 公認会計士:2,967人
- 主なクライアント:三菱UFJFG、ソフトバンクグループ、キヤノン
- 提携グループ:デロイト・トウシュ・トーマツ(DTTL)
有限責任あずさ監査法人
- 売上高:1,110億円
- 公認会計士:2,960人
- 主なクライアント:NTT、三井住友FG、ホンダ
- 提携グループ:KPMG
EY新日本有限責任監査法人
- 売上高:1,064億円
- 公認会計士:2,902人
- 主なクライアント:ENEOSホールディングス、日立製作所、みずほFG
- 提携グループ:アーンスト・アンド・ヤング(EY)
PwCあらた有限責任監査法人
- 売上高:564億円
- 公認会計士:1,013人
- 主なクライアント:トヨタ自動車、ソニーグループ、東京海上HD
- 提携グループ:プライスウォーターハウスクーパース(PwC)
国内準大手監査法人
4大監査法人の監査先選別により、準大手への監査依頼が増加しています。
太陽有限責任監査法人
- 売上高:142億円
- 公認会計士:383人
- 提携グループ:クラント・ソントン
PwC京都監査法人
- 売上高:67億円
- 公認会計士:118人
- 提携グループ:プライスウォーターハウスクーパース(PwC)
東陽監査法人
- 売上高:46億円
- 公認会計士:267人
- 提携グループ:クロウ・グローバル
仰星監査法人
- 売上高:41億円
- 公認会計士:153人
- 提携グループ:ネクシア・インターナショナル
三優監査法人
- 売上高:37億円
- 公認会計士:122人
- 提携グループ:BDOインターナショナル
公認会計士の採用市場
公認会計士の求人・転職
採用市場における公認会計士のニーズは高まり続け、リベンジ転職やキャリアアップ、キャリアチェンジのチャンスが広がっています。
監査法人の人材不足は深刻で、会計監査以外にIFRS導入の支援や内部統制の再構築、管理会計制度の見直し、日系企業の海外進出に係る会計アドバイザリーなどの案件増加により、公認会計士試験合格者の採用が活発になっています。
公認会計士・税理士の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 42.4歳 (平均) |
所定内労働時間 | 159時間 | 159時間 | 157時間 |
残業 | 16時間 | 20時間 | 13時間 |
月収 | 317,200円 | 370,400円 | 476,800円 |
年間賞与等 | 948,400円 | 1,235,300円 | 1,744,800円 |
年収 | 4,754,800円 | 5,680,100円 | 7,466,400円 |
(厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より)
公認会計士のキャリア
公認会計士の主な就業先は監査法人ですが、専門性を活かして活躍の場を広げています。
コンサル業界や一般企業への転職も増えています。
監査法人
監査法人には4大監査法人、準大手~中堅監査法人、中小監査法人があります。
4大監査法人は、専門性を高めスキルを磨きたい人に向いています。
準大手~中堅監査法人では、総合的なキャリアを積むことができます。
中小監査法人は、独立を目指す人にとって独立の準備期間として経験しておくことが有効といえます。
コンサルティング
財務会計をベースとしたコンサルティング領域のことをFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)と呼びます。
FAS会社では公認会計士の採用ニーズが高まっています。
税理士法人
税理士法人(会計事務所)の領域でも公認会計士の採用ニーズが高まっています。
一般的な税務顧問業務以外にも中小企業のM&Aや事業再生、組織再編、連結決算、IPO支援など財務会計分野のアドバイザリー案件などを扱うことが多くなっています。
金融機関
公認会計士の有力な転職先となっているのか金融機関です。
メガバンクを中心とした大手金融機関では社内の経理ポジションを中心に公認会計士の採用を進めています。
一般事業会社
上場企業や外資系企業、ベンチャー企業内で活躍する公認会計士が増えています。
経理・財務、内部監査、M&A、IPOなどで専門性が活かせます。
公認会計士の転職活動
公認会計士の人材獲得競争は激化しています。
監査法人をはじめとしてさまざまな可能性があります。
希望のキャリアを実現するために、公認会計士のキャリアに精通した転職エージェントを利用して、チャンスを広げることをおすすめします。
若手会計士の転職
20代の転職では、多くの選択肢があるといえます。
大手・準大手・中堅の監査法人やコンサルティングファーム、金融機関、一般企業などへの転職が見られます。
20代は経験以上にポテンシャルが重視されますので、英語力やコミュニケーション能力などが評価されます。
転職活動の期間
一般的に書類選考から内定が出るまでに1ヵ月~2ヵ月程度かかっています。
転職準備や現職の引継ぎなどの期間を考慮すると、転職活動には3ヵ月~5ヵ月の期間が必要となるでしょう。
内定が出てからの回答期限
中途採用の内定が出てからの回答は、新卒とは異なり、早めにすることが求められます。
期間にすると、1週間~10日程度になります。
回答期限が1ヵ月であったとしても、早めに意思表示する方がよいでしょう。
転職エージェントを利用するメリット
- すぐに転職するのではなくてもキャリアについて相談できる
- 非公開・好条件の求人情報を多く保有している
- 応募書類の添削、面接日の調整などサポートを受けられる
- 給与などの条件や入社日の交渉を代行してもらえる
- 各種の転職支援サービスを利用できる など

まとめ
監査法人業界が直面している課題は会計士不足です。
公認会計士の採用市場は20代や公認会計士試験合格者の採用にも積極的ですので、キャリアチェンジ、キャリアアップのチャンスが豊富です。


【参考】
・日本公認会計士協会ウェブサイト
・各監査法人ウェブサイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2024年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2024年版』