キーワード解説
無断欠勤
無断欠勤とは、従業員が勤務日に無届けで出勤しないことです。
給与は従業員が提供した労働の対価として支払われますので、労働しなかった分について企業は給与を支払う必要がありません。(ノーワーク・ノーペイ)
また無断欠勤は職場秩序を乱す行為として、就業規則の定めにより懲戒処分の対象となり得ることが認められています。
無断欠勤や遅刻・早退、出勤不良、職場離脱など勤怠不良における懲戒処分の判断は、その度合いが重要な判断要素となります。
懲戒処分の対象としての無断欠勤について、無届欠勤を指すのか、届出はあるが、正当な理由がない欠勤を含むのかについては、裁判でも結論が分かれています。
逮捕や勾留されたことで、出勤できなくなったり、精神的な不調により出勤できなくなっている場合にも、無断欠勤に当たるといえるのかどうか争われることが多くあります。
本人からの書面、あるいは家族や弁護士から休暇申請が提出された場合には、休暇として承認されたわけではなくても、無断欠勤には該当しないと判断されています。
無断欠勤の懲戒処分にはいくつか方法がありますが、給与を減額する減給も制裁のひとつです。
無断欠勤が懲戒処分として最も重い懲戒解雇の対象となるのは、職場の秩序を乱し、他の従業員に悪影響を与える場合などに認められています。
ノーワーク・ノーペイ
ノーワーク・ノーペイの原則として、欠勤や遅刻、早退など労働力を提供していない分についての給与を支払う必要はないとされています。
控除額は就業規則や給与規程などで企業が独自にルールを定めています。
懲戒処分
懲戒処分とは、従業員の職場秩序や服務規律の違反に対して、企業が何らかの処分を行うことです。
懲戒処分の種類や内容は、就業規則の必要記載事項の一つとして、具体的に明示しておくことが必要とされています。
就業規則の懲戒事由には、一般的に無断欠勤や業務命令違反、犯罪行為、経歴詐称などが定められています。
- 戒告:比較的軽い違反行為に対して行われる処分
- けん責:始末書の提出が必要となる警告処分
- 減給:始末書の提出と給与を一定額差し引く処分
- 降格:始末書の提出と役職を下げる処分
- 出勤停止:始末書の提出と一定期間の出勤を停止する処分
- 諭旨解雇:退職を勧告し、自己都合退職扱いとする処分
- 懲戒解雇:重大な違反や違法行為に対して行われる即時解雇処分
減給
制裁として減給を行う場合、労働基準法では①制裁1回の金額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない、②一給与支払期における制裁の総額は一給与支払期の給与の総額の10分の1を超えてはならない、と定めています。
開隆堂出版事件
事前の届出をせず、欠勤の理由や期間、居所を具体的に明確にしないまま2週間欠勤したことは、正当な理由のある欠勤であるとは認められないとして、就業規則の規定に基づき、無断欠勤による懲戒解雇が有効と判断されました。
日経ビーピー事件
上司の承認なしに連続欠勤をして、早退の許可を受けるべきとの指示命令に違反した行為は、重大な非違行為であるとして、それまでにも段階的に懲戒処分を受けていて、懲戒解雇は相当な処分であると判断されました。
栴檀学園事件
正当な理由なく1ヵ月間無断欠勤したことを理由とする懲戒解雇について、業務に大きな支障がなかったこと、勤務成績が他の従業員と比較しても劣ることがなかったこと、上司が特に注意しなかったことといった事情から、無断欠勤による懲戒解雇は無効と判断されました。
ウサミ印刷事件
退職勧奨を受けた後の3日間の無断欠勤による懲戒解雇は無効と判断されました。
日本ヒューレット・パッカード事件
職場のいやがらせによる精神的不調を訴え、有給休暇を使い切った後の40日の欠勤は、正当な理由のない無断欠勤には該当しないとして、諭旨解雇は無効と判断されました。
退職代行
退職したくても、なかなか辞めさせてくれない上司やそもそも退職を言い出すことが難しい職場環境のなかで、本人に代わって退職の意思を会社に伝える退職代行のサービスが増えています。
どうしても出社することが難しい状況であれば、無断欠勤を続けるのではなく、退職代行を利用して、退職するのもひとつの選択肢といえるでしょう。
参考:国立国会図書館「リサーチ・ナビ」