看護師の多くは、病院や診療所などの医療現場で働いています。
最近では少しずつ福祉・介護施設などで働く人の割合が増え、看護師のキャリアが多様化してきています。
看護師の働く場所と役割についてご紹介します。
看護師の働き方
看護師の就業場所
看護師は、傷病者などの療養上の世話または診療の補助を行うことを業務とする国家資格です。
看護師、准看護師、助産師として働く人の就業場所は、「病院」が最も多く、次いで「診療所」となっています。
看護師の70%近くが「病院」で働き、「診療所」も合わせると80%が病院・診療所勤務です。
就業場所別の人員割合
就業場所 | 看護師 (%) | 准看護師 (%) | 保健師 (%) | 助産師 (%) |
病院 | 69.0 | 35.7 | 6.4 | 61.5 |
診療所 | 13.2 | 32.5 | 4.1 | 22.6 |
助産所 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 6.2 |
訪問看護ステーション | 4.9 | 1.9 | 0.6 | 0.1 |
介護保険施設等 | 7.9 | 24.8 | 2.9 | – |
社会福祉施設 | 1.7 | 3.7 | 0.9 | 0.1 |
保健所、都道府県・市町村 | 0.9 | 0.3 | 72.7 | 5.0 |
事業所 | 0.4 | 0.4 | 6.8 | 0.1 |
看護学校等・研究機関 | 1.4 | 0.0 | 2.1 | 4.1 |
その他 | 0.7 | 0.7 | 3.4 | 0.4 |
(厚生労働省「令和2年衛生行政報告例」より)
病院と診療所
病院は入院設備が20床以上の施設で、診療所は入院設備が19床以下、または入院設備がない施設です。
看護師の勤務先の多くは病院です。
病院や診療所の医療施設では、医師の診察や治療の介助、採血や検査、生活の援助などを行っています。
病院といっても診療科目は多岐にわたり、所属によって仕事の内容は大きく異なります。
診療科の種類
- 内科
- 小児科
- 外科
- 整形外科
- 脳神経外科
- 心臓血管外科
- 産科婦人科
- 眼科
- 耳鼻咽喉科
- リハビリテーション科
- 胃腸科
- 泌尿器科 ほか
病院での仕事
病院は専門の細分化・高度化が進み、病院で経験を積む看護師も専門分野を深める人が増えています。
外来
外来には、初めて病院に来る人、通院している人、健康診断を受ける人など、毎日、たくさんの人が訪れます。
看護師は、重い症状の人から軽い人まで、いろいろなケースに立ち会い、適切な対応力や判断力が求められます。
病棟
病棟には内科病棟、外科病棟、小児病棟、緩和ケア病棟などがあります。
病棟では所属する科や入院患者の状態によって求められる看護の内容が変わってきます。
症状の観察、医療処理や療養上の世話、心身のサポートなどを基本としてきめ細やかなケアが求められます。
手術室
病院には手術室専門の看護師がいます。
手術室の看護師には手術に直接関わる器械出しと手術全体の進行に関わる外回りの役割があります。
器械出しの看護師には機器や道具類の正確な扱いや緊急事態の冷静な対応、的確な動作が求められます。
外回りの看護師には病棟から患者の状態を引継ぎ、患者の状態に合わせて、冷静に手術を進行させることが求められます。
ICU(集中治療室)
ICUでは救急治療や手術をした重症患者を集中的に治療します。
24時間体制で急変にも迅速に対応できる確かな知識や技術が求められます。
診療所・クリニックの仕事
診療所・クリニックは地域医療を支える身近な施設です。
診療科目は1つであったり、複数であっても小規模で入院施設を持たないところが多く、診療は外来が中心です。
診療所・クリニックでのキャリア
- 地域医療に携われる
- 専門性を磨き、スキルアップできる
- 自分のキャリアプランに合わせて勤務先を選べる
- ワークライフバランスを大切にできる
訪問看護ステーションの仕事
訪問看護ステーションは高齢化が進むなか、年々増加しています。
看護師が出向いて療養上の世話や医療的なケアを行います。
訪問先には看護師が1人で行くケースが多いため、1人でも対応できる看護知識や技術、的確な判断力が求められます。
仕事内容は幅広く、健康チェックから病状の観察とアドバイス、かかりつけ医の指示による処置、リハビリテーションの指導、医療器具などの管理などまで行います。
訪問看護師としてのキャリア
- 社会貢献度の高い仕事ができる
- 患者や家族とじっくり向き合える
- 独立して訪問看護事業を始めることができる
社会福祉・介護施設の仕事
介護保険制度の施行により、医療、保健、福祉の連携が重視されるようになりました。
介護老人保健施設や看護・介護の訪問サービスを提供する事業が増え、病院以外での看護師のニーズが高まっています。
看護師には医療の専門職としてリハビリや介護など他の専門職とのチームワークが求められます。
社会福祉・介護施設等でのキャリア
- 生活に密着した看護が身につく
- 基本的に日勤が中心
- 大手企業や公務員としての採用がある
企業や学校の仕事
看護師以外にも看護師資格を活かして取得できる資格で、活躍の場を広げている人もいます。
保健師や養護教諭の資格は、企業や学校で活かすことができます。
一般事業所
企業には安全衛生の管理が義務づけられていています。
従業員の健康管理のために、健康管理室や産業保健部門を設けている企業があります。
企業の医療部門に勤める看護師は、企業の正社員として採用されていたり、健康保険組合から派遣されている場合があります。
保健師の資格を持っていれば、採用で有利になります。
学校の保健室
養護教諭は学校で児童・生徒の健康管理や保健指導を行う保健室の先生です。
健康診断の実施や指導、救急処置、健康相談などだけでなく、生徒の悩みやストレスを受けとめる役割も重要になっています。
看護師の資格を持っていれば、所定の科目を修得することで養護教諭になる資格が得られます。
行政・教育・研究の仕事
行政職、教育職、研究職として活躍する看護師もいます。
保健センター
保健所や市町村の保健センターなどに勤務する看護師もいます。
保健分野の転職・就職では保健師の資格が有利です。
養成校の教員
看護師養成校の教員として後進の育成に携わる看護師もいます。
看護師養成校ではそれぞれ独自の条件で教員を採用しています。
大学の研究室
医療の高度化や専門化が進み、看護師の仕事も専門化しています。
看護の専門分野のテーマを追究する研究職としての道もあります。
看護師のキャリアパス
看護師のキャリア
看護師のキャリアにはスペシャリストやマネジメント、独立まで幅広い可能性があります。
看護師のキャリアは多様化と専門化が進んでいます。
キャリアアップの方法
- 専門看護師や認定看護師の資格を取得してスペシャリストの道
- 組織内で昇進、昇格してマネジメントの道
- 新たな専門性を身につけて専門職の道
- ケアマネジャーなどの資格を取得して独立・開業の道
看護師の給与・待遇
看護師の給与は、地域や働く施設、働き方で大きく変わりますが、比較的高い収入といえます。
20代では他の仕事に就いている同年代より高額になる場合が多いでしょう。
准看護師の給与は、看護師に比べると高くはありませんが、職業全体からすると高水準といえます。
看護師・准看護師の給与
区分 | 看護師 | 准看護師 |
所定内労働時間 | 158時間 | 159時間 |
残業 | 6時間 | 3時間 |
月収 | 344,300円 | 286,700円 |
年間賞与等 | 854,600円 | 626,800円 |
年収 | 4,986,200円 | 4,067,320円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
まとめ
看護師の仕事はハードですが、ライフスタイルに合わせて働き方を選ぶことができます。
家族の転勤があっても、看護師の仕事は全国で可能ですし、保育所のある病院も多く、出産しても続けることができます。
また一度、看護師の仕事を離れたとしてもいつでも復職できます。
看護師の経験を積んで、新たな資格を取得したり、役職に就くなどキャリアアップの道も確立されています。
患者さんのお世話に役立つ介護初任者研修などの資格取得もおすすめです。


【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・公益社団法人 日本看護協会ウェブサイト