キーワード解説
誓約書
誓約書とは、内定や入社時、仮採用から正式に本採用となるときなどに、企業から提出を求められる書類のひとつです。
誓約書は法律的に必要な書類ではありませんが、多くの企業では、従業員を採用したときに、誓約書と身元保証書の提出を求めることが一般的になっています。
就業規則などの社内ルールを守り、誠実に勤務すること、企業の名誉を棄損するような行動をとらないこと、秘密保持義務や競業避止義務の違反がないこと、反社会的勢力との関わりの排除などを定め、従業員が企業に誓う内容になっています。
企業が従業員に誓約書の提出を求めることは認められていますが、入社の意思確認や規則を守らせ、自覚を高めることが主な目的であり、法律的な効力があるわけではありません。
誓約書の具体的な内容は就業規則で規定され、実際に違反行為があった場合は、就業規則に基づいて処分されます。
誓約書を提出するにあたり、合意することをためらうような不合理な内容があれば、提出する前に企業に説明を求めましょう。
誓約書の効力
誓約書に強制力はなく、合意する内容は原則として当事者の自由です。
誓約書には法律的な効力はありませんが、受け入れ企業が職業選択の自由や退職の自由を不当に制限するような内容の誓約書は無効とされることがあります。
内定者が他社の採用面接を受けることを制限したり、転職者が短期に退職することを制限するなどの内容について、誓約書を提出した場合であっても、職業選択の自由や退職の自由を制限するものであると判断される可能性があります。
転職者の誓約書
転職者が入社する際の誓約書は、転職者が秘密保持義務などを負う特定の情報について、転職先の企業がリスクを回避するための対応のひとつといえます。
トラブルが起きた際に、転職先の企業に不正競争防止法上の「重大な過失」はなかったことの理由として、秘密保持義務を確認する内容の誓約書を求められる可能性があります。
- 前職場で知り得た営業秘密を利用しない
- 他社で行った研究・発明などを(転職先の企業で)出願しない
- 秘密保持義務・競業避止義務に違反するような不都合はない など
身元保証書
身元保証書は、従業員の行為により企業が損害を受けた場合に、第三者の身元保証人が損害の賠償を約束する法律的な効力のある書面です。
身元保証契約は、企業と身元保証人との間で締結されます。
身元保証期間は、定めがなければ3年、定めがあっても5年が上限となっています。
5年以上の期間を定めても、5年に短縮されますが、5年以内の契約更新を繰り返すことは可能ですので、保証期間と更新の有無は確認する必要があります。
従業員の勤務態度が不誠実で身元保証人に責任が発生するおそれがあるとき、あるいは転勤や配置転換などにより、身元保証人の責任が重くなったり、監督が困難になったときには、企業はその旨を身元保証人に通知しなければなりません。
通知を受けた身元保証人は、契約期間中であっても、将来に向かって契約を解除することが認められています。
また従業員が退職すれば、身元保証契約も自動的に終了します。
入社時に提出を求められる書類(例)
入社時には誓約書や身元保証書以外にも、さまざまな書類の提出が求められます。
- 誓約書
- 身元保証書
- 住民票記載事項証明書
- 年金手帳
- 給与振込先口座
- 源泉徴収票
- マイナンバー
- 個人情報の取得および利用に関する同意書
- 通勤経路申請書
- 扶養控除等申告書
- 雇用保険被保険者証 など
必要書類の提出拒否
入社時に必要とされる書類について、業務や手続きで必要不可欠と認められるものであれば、書類を提出しないことを理由として、採用を取り消される可能性があります。
採用の取り消しは解雇と同様に、客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要とされます。
誓約書であれば、提出が採用条件になっていたり、手続きや雇用関係に重大な支障を及ぼす場合には、誓約書を提出しないことを理由として、採用取り消し(解雇)が認められる可能性があります。
参考:厚生労働省ウェブサイト
- 誓約書の提出は入社にあたっての心構えや自覚を高めることが主な目的
- 実際の違反行為は就業規則に基づいて処分が行われる