キーワード解説
出来高払い制
出来高払い制とは、労働時間(一定の期間、日、時間)を単位として賃金を決定する定額制(時給、日給、月給等)に対して、労務提供の結果である出来高に応じて賃金を支払う方法です。
出来高払い制では、売上高や生産量、販売実績など仕事の成果に応じて一定の基準で賃金が支払われます。
出来高払い制には、出来高給制、歩合給制、業績給制、能率給制、請負給制などの形態があります。
インセンティブを出来高給、歩合給と同じ意味で使うこともあります。
出来高払い制は仕事や成果の変動により賃金額も大きく変動します。
出来高給制や歩合給制は、労働時間に関係なく、仕事や成果に対して賃金が支払われますので、個人の成果が給与に反映され、モチベーションにつながる給与形態とされています。
しかし、運用によっては、従業員の健康を損なうような労働を強いることになりかねず、通常では、低額の固定給と上乗せ部分の変動給として、出来高給や歩合給が併用されています。
全部が出来高払い、歩合給ということもありますが、その場合でも企業は一定額の賃金(保障給)の支払いを保障することになっています。
仮に求人票に「完全出来高払い」「完全歩合給制」という記載があっても、成果がゼロであれば、給与もゼロという労働契約は無効です。
歩合給制
歩合給制の賃金は、販売高、契約実績、運賃収入などに基づいて決定されます。
ハイヤーやタクシー業、保険業、セールス関係の給与で多く採用されています。
歩合給制であっても、時間外労働・深夜労働をしたときには、割増賃金の支払が必要になります。
保障給
労働基準法では労働時間に応じて一定額の賃金を保障することを義務付けています。
保障給は労働時間1時間について定める時間給が原則となりますので、労働時間と関係なく一定額を保障するものは保障給とはなりません。
労働契約または就業規則などで保障給について定める際は、労働時間に応じたものにしなければなりません。
保障給は労働時間に応じた一定額の時間給ですので、実際の労働時間に関わらず、1ヵ月について一定額を保障することは労働基準法違反になります。
保障給の金額について規定はありませんが、休業手当では平均賃金の6割以上の支払いを義務付けていることから、同程度が目安とされています。
最低額も決まりはありませんが、最低賃金法の適用がある労働者の場合には、最低賃金額以上の支払いが義務付けられています。
保障給は時間給が原則ですので、最低賃金の時間額が適用されます。
最低賃金を下回る給与は無効となります。
成果がない場合に、給与は支払わないという労働契約も無効です。
完全出来高給制の禁止
出来高払い制その他請負制で働く労働者に対して、就業した以上は、その出来高が少ない場合であっても、使用者は労働した時間に応じて一定額の賃金を保障しなければならないことになっています。
出来高払い制では、労働者に責任がない事情により仕事が少なくなることもあり、仕事の繁閑に影響されると、賃金額が安定しません。
そこで、出来高払い制の労働者の生活の安定を図るために、労働時間に応じた一定額の賃金(保障給)を支払うことが使用者に義務づけられているのです。
完全歩合制であっても、保障給の定めのない労働契約は労働基準法違反となります。
保障給の支払い
保障給は労働者が就業したにも関わらず、労働者に責任がない事情により出来高が減少した場合に支払われるものですので、労働者が就業していない場合には、使用者に支払い義務は生じません。
参考:厚生労働省ウェブサイト
- 出来高払いであっても労働時間に応じて一定額の給与は保障される
- 完全歩合制であっても保障給のない契約は無効