給与は転職・就職活動で最も注目される条件のひとつです。近年、過去最大の最低賃金引き上げ、同一労働同一賃金の動き、配偶者手当の見直しなど給与を取り巻く状況が大きく変化しています。
その企業の給与制度を知れば、企業方針や方向性が見えてきます。
給与制度の基礎知識
給与のしくみ
給与は会社などで支給される給料・諸手当など賃金のことです。月給、賞与の形で支払われるのが一般的です。
基本給
日本の多くの企業では総合給を採用していますが、終身雇用の崩壊とともに年功的な属人的要素は縮小、廃止の動きが高まっています。
一般社員は総合給で、管理職は仕事給とする企業もあります。
- 仕事給:職能給、職務給、役割給、職種給、業績給など
- 属人給:年齢給、勤続給など
- 総合給:仕事的要素、属人的要素を総合的に決定する
各種手当
手当については、目的がはっきりしないものは廃止し、シンプルにする傾向です。通勤手当以外の手当を廃止する企業も多くなっています。
一方で子育て世帯への支援を厚くする流れから、大企業では家族手当・配偶者手当を子ども手当等へ振り替える動きがあります。
- 仕事手当:役職手当、技能手当など
- 生活手当:家族(配偶者)手当、住宅手当、通勤手当など
所定外労働に支払われる手当
時間外労働の割増賃金には法律で決められた計算方法があります。
労働時間の原則は1週間40時間、1日8時間以内ですので、この時間を超えた労働が法定外時間外労働になり、所定労働時間が8時間未満であれば、残業には法定内の時間外労働もあるということになります。
- 時間外手当
- 休日手当
- 深夜手当など
固定残業代支給制度
注意が必要なのは、固定残業代として予め毎月支給する固定給の中に時間外割増賃金も含まれているとする方式です。
求人情報には、給与を固定残業代方式で支給する場合、明示する必要があるとされています。
給与を固定することで、予算や支給事務を効率化したり、一定時間内に仕事を終了する習慣をつけることで生産性を向上させるメリットがあると考えられています。
以下の点がクリアされている場合のみ有効です。
- 固定残業代と基本給や他の手当の金額が明確にわかれていること
- 時間外割増賃金の代わりであることが明確になっていること
- 法定割増賃金額を上回った手当額になっていること
- 固定残業代分以上に残業した場合は差額を支給する規定になっていること
賞与
賞与とは定期または臨時に支払われるもので、支給額が予め確定していないものをいいます。
- 就業規則に規定がある場合は支払義務あり
- 毎月1回以上払いの原則の適用除外
- 一定期日払いの原則の適用除外
給与の支払い方法
給与を支払う方法は雇用形態が多様化するなか、複雑化しています。
月給制か日給月給制か、出来高制か完全出来高制かなどルールを確認しておくことが入社後のトラブルを避けるうえでも重要です。
定額制
- 時給制:時間単位の賃金で最低賃金の基準
- 日給制:1日単位の賃金
- 日給月給制:1日単位の賃金を1ヵ月まとめて支払うもの
- 週給制:週単位の賃金、または1日単位の賃金を1週間分まとめて支払うもの
- 月給制:月単位の賃金
- 年俸制:1年間の賃金額を設定し、毎月払いの原則から分割して支払うもの
出来高制
出来高を単位として支払うもの。出来高制であっても労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならないとされています。
給与の支払い原則
給与の支払いについては、労働基準法に原則が定められています。
通貨払いの原則
給与は現金支給が原則になっています。現物などで支払う場合は法令や労働協約に定めがなければなりません。
直接払いの原則
給与は本人に直接支払わなくてはなりません。本人以外の受領は親権者や法定代理人でも無効とされます。
全額払いの原則
給与は全額支給しなければなりません。ただし、社会保険料や所得税、住民税の源泉徴収などを法令の定めにより控除することは認められます。
月1回以上払いの原則
給与は毎月1日から月末までの間に1回以上支払わなければなりません。年俸制でも年俸を12等分するなどの方法で毎月支給する必要があります。
一定期日払いの原則
給与は一定の期日を定めて支払わなければなりません。臨時に支払われる賃金や賞与などは含まれません。
業界別の平均給料
20代の給料が高く、平均給料も高い業種、20代の給料は高くても、平均はそれほど高くならない業種、20代の給料が低くても、平均は高い業種など業界ごとに特徴があります。
転職するなら、一時的に給与が下がっても、トータルでアップできるかなど検討してみる必要があります。
産業別の所定内給与額(円)
産業 | 20~24歳 | 25~29歳 | 平均 |
産業計 | 209,700 | 240,300 | 306,200 |
鉱業・採石業 | 227,000 | 265,500 | 333,100 |
建設業 | 224,000 | 252,800 | 334,700 |
製造業 | 198,300 | 229,800 | 296,500 |
電気・ガス・水道業 | 219,400 | 263,600 | 417,500 |
情報通信業 | 235,100 | 268,000 | 377,500 |
運輸業、郵便業 | 211,400 | 237,600 | 280,800 |
卸売業、小売業 | 205,500 | 236,900 | 309,200 |
金融業、保険業 | 217,100 | 255,300 | 371,200 |
不動産業、物品賃貸業 | 218,200 | 245,300 | 326,600 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 224,600 | 268,500 | 383,600 |
宿泊業、飲食サービス業 | 191,600 | 216,800 | 245,300 |
生活関連サービス業 | 200,900 | 224,700 | 262,400 |
教育、学習支援業 | 208,600 | 247,800 | 381,500 |
医療、福祉 | 218,200 | 245,300 | 282,000 |
複合サービス事業 | 198,300 | 223,800 | 296,200 |
サービス業(他に分類されないもの) | 200,700 | 217,000 | 255,600 |
(厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より)
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まとめ
経営環境が変化するなか、給与制度を見直す企業が増えています。これまで以上に、給与にはその企業の重視していることが反映されています。
給与制度は企業研究するうえで、どのような会社かを知る重要なメッセージといえます。

