給与は転職・就職活動をするなかで、最も注目される条件のひとつです。
近年、過去最大の最低賃金引き上げ、同一労働同一賃金の動き、配偶者手当の見直しなど給与を取り巻く状況が大きく変化しています。
その企業の給与制度を知れば、企業の方針や方向性も見えてきます。
給与の基本を押さえておきましょう。
給与の基本
給与とは
給与とは、雇用契約にもとづき、労働の対価として従業員に支給される報酬のことです。
労働基準法では賃金を
「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」
と定義しています。
賃金にはさまざまな名称があり、労働基準法では「賃金」、健康保険法・厚生年金法では「報酬」、所得税法では「給与」などと呼ばれています。
月給+賞与などの形で支払われるのが一般的です。
給与に含まれるもの
- 所定内給与
・基本給
・各種手当 - 所定外給与
・時間外手当
・深夜手当
・休日手当 など - 賞与
- 退職金(定めがあれば) など
基本給とは
基本給とは、所定内労働に対する給与のうち、各種手当を含まない給与のことです。
日本の多くの企業では総合給を採用していますが、終身雇用の崩壊とともに年功的な属人的要素は縮小、廃止の動きが高まっています。
一般社員は総合給で、管理職は仕事給とする企業もあります。
基本給の内訳には、職務能力を重視しているか、働く人の成長を重視しているかなど、企業が社員に期待していることが表れています。
基本給の種類
- 仕事給:職務給、役割給、職種給、業績給 など
- 属人給:年齢給、勤続給、年功給 など
- 総合給:仕事的要素、属人的要素を総合的に決定する
各種手当とは
各種手当とは、役職手当などの仕事手当や家族手当などの生活手当のことです。
手当については、目的がはっきりしないものは廃止し、シンプルにする傾向です。
通勤手当以外の手当を廃止する企業も多くなっています。
一方で子育て世帯への支援を厚くする流れから、大企業では家族手当・配偶者手当を子ども手当等へ振り替える動きがあります。
各種手当の種類
- 仕事手当:役職手当、職務手当、資格手当 など
- 生活手当:家族(配偶者)手当、住宅手当、通勤手当 など
所定外給与とは
所定外給与とは、所定外労働に対する時間外手当や休日などの給与のことです。
基本給や各種手当は所定内給与(所定内労働に対する給与)に該当します。
所定労働時間(勤務時間)を超えて働けば、時間外手当(残業手当)が、休日に働けば休日手当が支払われます。
時間外手当は8時間を超えるものと8時間以内のものとで金額が違います。
労働時間の原則は1週間40時間、1日8時間以内ですので、この時間を超えた労働は法定外の時間外労働になります。
所定労働時間が8時間未満であれば、法定内の時間外労働になります。
割増賃金は法定外の時間外労働に対して支払われます。
割増賃金には法律で決められた計算方法があります。
所定外労働に対する給与
- 時間外手当・残業手当
- 休日手当
- 深夜手当 など
賞与とは
賞与(ボーナス)とは、定期または臨時に支払われる一時金で、支給額が予め確定していないものをいいます。
夏と冬の年2回の支給が多いですが、年1回や年3回の支給もあります。
就業規則などに賞与についての定めがなければ、支払義務はありませんので、賞与のない企業もあります。
賞与の支給額は、企業や個人の業績により変動します。
賞与の支払い
- 就業規則に規定がある場合は支払義務あり
- 毎月1回以上払いの原則の適用除外
- 一定期日払いの原則の適用除外
給与の形態
雇用形態が多様化するなか、給与形態は複雑化しています。
月給制か日給月給制か、出来高制か完全出来高制かなどルールを確認しておくことが入社後のトラブルを避けるうえでも重要です。
定額制
- 時給制
・時間単位の賃金で最低賃金の基準 - 日給制
・1日単位の賃金 - 日給月給制
・1日単位の賃金を1ヵ月まとめて支払うもの - 週給制
・週単位の賃金を定め、一定期間に支払うもの
・時間や1日単位の賃金を1週間分まとめて一定期間に支払うもの - 月給制
・月単位の賃金を定め、一定期間に支払うもの - 年俸制
・1年間の賃金額を設定し、毎月払いの原則から12回以上に分割して支払うもの
出来高払制
出来高を単位として支払うもの。
売上高や生産量などの成果に応じて賃金が決定される制度です。
出来高払制であっても労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならないとされています。
完全出来高払制なので、成果が出なければ、給与は支払わないということは認められません。
給与の支払い方法
- 日払い:労働日ごとに支払われるもの
- 週払い:1週間単位で支払われるもの
- 月払い:毎月支払われるもの
給与の支払い原則
給与の支払いについては、労働基準法に原則が定められています。
通貨払いの原則
給与は現金支給が原則になっています。
現物などで支払う場合は法令や労働協約に定めがなければなりません。
直接払いの原則
給与は本人に直接支払わなくてはなりません。
本人以外の受領は親権者や法定代理人でも無効とされます。
全額払いの原則
給与は全額支給しなければなりません。
ただし、社会保険料や所得税、住民税の源泉徴収などを法令の定めにより控除することは認められます。
月1回以上払いの原則
給与は毎月1日から月末までの間に1回以上支払わなければなりません。
年俸制でも年俸を12等分するなどの方法で毎月支給する必要があります。
一定期日払いの原則
給与は一定の期日を定めて支払わなければなりません。
臨時に支払われる賃金や賞与などは含まれません。
固定残業代支給制度
固定残業代支給制度とは、毎月支給する賃金額の中に一定額の残業代を含めて支給する制度です。
求人情報には、給与を固定残業代制で支給する場合、具体的な内容を明示する必要があるとされています。
給与を固定することで、予算や支給事務を効率化したり、一定時間内に仕事を終了する習慣をつけることで生産性を向上させるメリットがあると考えられています。
以下の点がクリアされている場合のみ有効です。
固定残業代の内容
- 固定残業代と基本給や他の手当の金額が明確にわかれていること
- 時間外割増賃金の代わりであることが明確になっていること
- 法定割増賃金額を上回った手当額になっていること
- 固定残業代分以上に残業した場合は差額を支給する規定になっていること
退職金とは
退職金とは、退職する従業員に対して企業から支給されるものです。
就業規則などで退職金について支給要件が明確になっていれば、給与の一部として支払われます。
退職金には給与の後払いとしての意味があり、終身雇用においては従業員の定着に有効でしたが、雇用形態が多様化し、退職金制度を導入しない企業や見直しを行う企業も増えています。
退職金の支払い時期
- 従業員が退職する場合、請求があったときは7日以内に支払わなければならない
- 就業規則等に退職金の支払い時期を定めている場合はその時期
まとめ
経営環境が変化するなか、給与制度を見直す企業が増えています。
これまで以上に、給与にはその企業の重視していることが強く反映されていくと考えられます。
どのような給与制度であるかということは、どのような企業であるかということを知るうえで重要なメッセージになっているのです。
参考:厚生労働省ウェブサイト



