キーワード解説
退職金
退職金とは、従業員の退職にあたって、企業から退職者に対して支払われる費用の総称です。
退職手当、退職一時金、退職給付などと呼ばれることもあります。
退職金制度は任意の制度ですので、退職金を支給するかどうかは企業が自由に決めることができます。
退職金制度がない企業もたくさんあります。
退職金は就業規則などで支給の条件が明確になっている場合に賃金とされ、企業には退職金の支払い義務があることになります。
慣習として退職金を反復継続して支払っている場合には、就業規則に記載がなくても企業は退職金を支払わなければならないと考えられています。
正社員として一定の期間勤務すれば、必ず退職金が支給されるというわけではありませんので、退職する前には就業規則や退職金規程を確認しておきましょう。
退職金規程
退職金制度がある場合には、就業規則に記載する必要があります。
就業規則とは別に退職金規程として作成されることも多くあります。
- 適用範囲
- 支給要件
- 支給額
- 勤続月数の計算
- 退職金の不支給・減額
- 支払の時期および方法
- 控除
- 遺族の範囲および順位
- 退職金の返還
- 改定
退職金の支給対象
退職金制度が任意の制度ですので、退職金を支給する対象者の範囲も企業が自由に決めることができます。
退職金制度を人材確保や早期離職防止のために設けている企業では、対象者の範囲を雇用期間の定めのない従業員(正社員)に限定しているケースが多くなっています。
退職金の支払い時期
退職金はあらかじめ就業規則などで支払時期を定めていれば、その支払時期に支給すればよいことになっています。
定められていない場合には、請求してから7日以内に支払われなければなりません。
退職金の支給額
退職金の支給額を計算する方法として代表的なものは、基本給などに勤続年数別の支給率を乗じて算定する方法です。
この方法は年功序列制など長く勤務することのインセンティブとなります。
中途採用の増加や雇用形態の多様化などを背景に、勤続年数別の計算方法から毎年ポイントを付与し退職金を決める方法に見直しを行う企業が増えています。
退職金の不支給・減額
退職金は自己都合退職や会社都合(退職)など退職事由によって金額に差があり、懲戒解雇の場合には支給されなかったり、減額されることがあります。
また同業他社への転職など競業避止義務違反にもとづき、退職金を不支給にしたり、減額する企業もあります。
退職金の相殺
企業に損害を与えたことを理由に退職金の支払いが拒否されるケースがあります。
退職金と損害賠償の相殺に従業員が同意した場合には、限度額の範囲内で相殺が認められることになります。
退職金の相談
賃金として支払われるはずの退職金が支給されないときには、労働基準監督署に賃金不払いの申告をすることができます。
労働基準監督署で解決できない場合は、各都道府県労働局の総合労働相談センターなどへ相談して、あっせんをしてもらうことができます。
労働組合や弁護士に相談することもできます。
退職金の税金
一定額以上の退職金には「退職所得」として所得税や住民税がかかります。
退職所得は他の所得と合計せずに退職所得に税率をかけて計算する分離課税です。
退職金にかかる所得税は、退職金の収入金額から勤続年数に応じて退職所得控除額を差し引いて計算されます。
退職所得控除額以下の退職金額であれば、所得税も住民税もかかりません。
退職金にかかる所得税は勤続年数が長くなるほど優遇されています。
退職金の所得税は、源泉徴収されます。
退職金を受け取るときに退職所得控除額を差し引いて計算された後に源泉徴収されれば、確定申告の必要はありませんが、控除額を差し引かずに計算されている場合には、多く支払った分については確定申告が必要となります。
住民税は退職した年の1月1日の住所で課税されます。
退職所得の計算方法
(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額
勤続年数 | 退職所得控除 |
20年以下 | 40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には80万円) |
20年を超える | 800万円+70万円×(A-20年) |
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・国税庁ウェブサイト
- 退職金は支給条件が明確なものは賃金として保護される
- 退職金には賃金の後払い的性格もある
- 勤続年数制からポイント制などに見直される傾向にある