希望退職や早期退職について聞いたことはあっても、どのような制度なのか、詳しいことは知らない人が多いのではないでしょうか。
希望退職・早期退職の募集は、基本的には企業の人員削減の手段といえます。
事業規模に合った人員構成を目指して、経営再建中の企業だけでなく、業績が好調な企業でも実施されるようになっています。
20代で希望退職や早期退職を検討する機会は少ないかもしれませんが、自分のキャリアで活用できるかどうか判断できる情報は必要です。
希望退職・早期退職について、押さえておきたい基礎知識をご紹介します。
希望退職・早期退職制度の基礎知識
希望退職とは
希望退職とは、業績不振など企業経営上の必要性から余剰人員を削減するために緊急的に行われる臨時的な措置のことです。
通常、退職金の加算や再就職先の斡旋など通常の退職より有利な条件を提示して、退職希望者を募ります。
早期退職制度との違い
早期退職制度に希望退職を含める考え方もあります。
一般的には、希望退職が一時的な措置であるのに対して、早期退職は退職金加算などを行い、定年前の退職を促すことを目的とした常設の制度です。
早期退職制度を導入する企業が増え、対象とする年齢も低くなってきています。
区分 | 希望退職 | 早期退職制度 |
目的 | ・余剰人員の削減など経営上の必要性 ・整理解雇の回避 | ・人員構成の最適化や組織活性化 ・定年前の退職・独立支援 |
期間 | 一時的(募集期間3ヵ月以内など) | 原則、制度として常設 |
対象 | 職種、勤務地、勤続年数などで限定 | 年齢要件に該当する全社員 |
雇用保険 | 特定受給資格者の対象 | 特定受給資格者の対象とならない |
希望退職の実施
希望退職は経営上の必要がある場合に行われます。
リストラを回避するためやリストラを行う前に実施されることがあります。
整理解雇の基準
整理解雇は経営上の理由により行われる解雇のことで、リストラといわれるものです。
整理解雇を行うには相当の理由が必要とされています。
整理解雇を行う理由に該当しない解雇は不当解雇になります。
- 経営上、人員整理の必要性があること
- 解雇を避けるために十分な努力をしたこと
- 解雇対象者の人選に合理性・公平性があること
- 対象となる従業員や労働組合との協議や説明を行ったこと
整理解雇を回避するための努力
企業は人員整理として従業員を解雇する前に、解雇を避けるために十分な努力として可能な措置をできるだけ行わなければなりません。
そのための措置のひとつとして、希望退職者の募集があります。
希望退職以外の例としては、配置転換や出向などの対応、新規採用の中止、賞与の減額・支給停止、昇給の停止などがあります。
希望退職に応じるべきかの判断
希望退職の対象者に対して、退職勧奨するケースは少なくありません。
しかし、本人が希望退職に応じるかどうかは自由であり、応じる義務はありません。
「転職したい」と考えている人であれば、希望退職の優遇措置を受けて、退職できる機会はチャンスといえるかもしれません。
希望退職が認められないケース
希望退職の募集があっても、全員の退職を認めるのではなく、会社の承認を必要とするケースがあります。
20代など若手社員は、会社に残ってもらいたいということで、適用対象外とされる可能性もあります。
希望退職のメリット
- 希望する業界や職種にチャレンジできる
- 退職金が加算される
- 再就職・転職支援を受けることができる
- 特別休暇などが付与されることがある など
希望退職の決断ポイント
- 会社の存続の見通し
- 経営再建の計画
- 会社に残った場合の自分の立場
- 会社に残ってできる仕事 など
法律違反になる解雇
本人の意思に反して会社を辞めさせられるのは、解雇となります。
法律で禁止されている解雇は撤回を求めることができます。
知らないと泣き寝入りしてしまうことになりかねませんので、注意が必要です。
差別的解雇
- 従業員の国籍、信条、または社会的身分を理由とする解雇
- 労働組合の組合員であること、または労働組合への加入・結成をし、労働組合の正当な活動をしたことの故をもってする解雇
- 性別を理由とする解雇
- 女性従業員の婚姻、妊娠、出産、産前産後の休業を理由とする解雇
権利行使に対する報復的解雇
- 企画業務型裁量労働において、その対象業務に就かせてみなし労働時間の適用を受けることに同意しないことを理由とする解雇
- 労基署等に労基法違反の事実を申告したことを理由とする解雇
- 労働安全衛生法違反の事実を申告したことを理由とする解雇
- 賃金の支払確保に関する法律違反の事実を申告したことを理由とする解雇
- 男女雇用機会均等法に関する紛争の解決について援助を求めたことを理由とする解雇
- 産前産後休業したことを理由とする解雇
- 育児休業・介護休業の申し出をし、休業したことを理由とする解雇
- 労働委員会に不当労働行為の救済申し立て等をしたことを理由とする解雇
- 労働者派遣法違反の事実を申告したことを理由とする解雇
- 個別労働紛争解決促進法上の援助を求めあっせんの申請をしたことを理由とする解雇
- 公益通報をしたことを理由とする解雇
解雇制限
- 業務上の負傷・疾病による休業期間とその後30日間
- 産前・産後休業中の期間とその後30日間
転職市場・市場価値の調査
転職市場・市場価値とは
転職市場における市場価値とは、経歴、職務内容、スキル、適性などから現在の労働(人材)市場での年収相場を示したものです。
人材が不足し、労働市場が売り手市場になれば、賃金が上昇し、景気が後退し、人材が過剰となると、賃金の上昇は鈍くなる傾向があります。
希望退職・早期退職をするかどうかの判断は、転職市場や自分の市場価値を事前に調査してからでも遅くはありません。
転職市場が厳しい時期に、転職先が決まる前に退職することはあまりおすすめできません。
給与の水準
給与の額は、企業の業績や労働市場、物価の上昇率など複数の要因によって決定されます。
- 企業の業績
- 賃金の世間相場
- 消費者物価の上昇率
- 労使間の交渉 など

20代の転職活動
転職活動をする人の多くが、在職中から求人サイトや転職エージェントなどの転職支援サービスを利用しています。
さまざまな転職支援サービスがあり、転職市場の動向や求人情報を収集することに役立ちます。
自分の希望や目的に合った転職支援サービスを上手に活用することをおすすめします。
転職サービスのメリット
- キャリアの可能性を広げるカウンセリング
- 非公開・好条件の求人紹介
- 転職動向に精通したキャリアアドバイザー
- 書類作成・面接対策のサポート
- 転職スキルアップのセミナー など
まとめ
希望退職を募っても、余剰とならない世代や職種は適用対象外となる可能性があります。
対象となった場合でも、退職後のキャリアプランを明確にしなければ、制度を活かせないリスクもあります。
希望退職および早期退職制度の利用は、自分のキャリアと照らし合わせて、慎重に判断することが大切です。
既に転職を考えている人にとっては、得して転職できる滅多にないチャンスともいえるかもしれません。
参考:厚生労働省ウェブサイト