大企業であれば倒産の心配はないという時代ではなくなりました。
突然、勤務先が倒産するということは誰でも遭遇する可能性のある時代です。
会社が倒産したり、解雇されたりしたら頭は真っ白。
次の仕事を探す転職活動はもちろん重要ですが、その前に必ず受けられる手当・給付の確認や手続きをして、離職中に活用しましょう。
倒産や解雇で受けられる失業保険の優遇
会社都合の退職・解雇
自分の意思で会社を辞めるのは、自己都合退職ですが、会社が倒産したり、会社の事情で辞めたり、解雇された場合は、会社都合(退職)になります。
自己都合で会社を辞める場合に対して、会社の都合で辞めざるを得ない場合には、自己都合より手厚い雇用保険のサポートを受けられるようになっています。
雇用保険とは
雇用保険は働く人や働きたい人の生活と雇用をサポートする制度です。
失業したときには求職者給付が支給され、再就職・転職活動をしたときには就職促進給付が支給されます。
ほかにも雇用保険には、育児や介護などで働くことができないときの雇用継続給付、教育訓練を受けたときの教育訓練給付があります。
雇用保険の求職者給付
失業したときには雇用保険から求職者給付が支給されます。
- 基本手当(いわゆる失業保険)
- 技能習得手当
- 受講手当
- 通所手当
- 寄宿手当
- 傷病手当
雇用保険の就職促進給付
再就職・転職活動をしたときには雇用保険から就職促進給付が支給されます。
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 就業手当
- 常用就職支度手当
- 移転費
- 広域求職活動費
倒産・解雇で受けられる給付
失業したときに支払われる基本手当(いわゆる失業保険)は、求職者給付で最も中心的な給付です。
基本手当は、失業者の年齢、離職理由、被保険者期間の長短、再就職の難易度などに応じて給付日数が定められています。
倒産や解雇などで離職を余儀なくされた「特定受給資格者」およびやむを得ない理由により離職した「特定理由離職者」については、受給条件を満たせば、一般の自己都合退職者よりも手厚い給付が受けられます。
受給期間を過ぎていると、たとえ所定給付日数が残っていても給付を受けられないことがありますので、受給の申請手続きは遅れないようにすることが重要です。
特定受給資格者
特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇などにより再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた人のことです。
特定理由離職者
特定理由離職者とは、有期労働契約の期間満了による雇い止めや正当な理由のある自己都合などで退職した人のことです。
特定受給資格者の範囲
倒産や解雇で会社を辞めた人は特定受給資格者に該当しますが、特定受給資格者かどうかを決定するのは本人ではなく、ハローワークが離職理由により個別に判断します。
倒産などによる離職
- 倒産(破産、民事再生、会社更生などの各倒産手続きの申立てまたは手形取引の停止など)に伴い離職した人
- 事業所において大量雇用変動の場合(1ヵ月に30人以上の離職を予定)の届出がされたことによる離職およびその事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える離職があったために離職した人
- 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みがない場合も含む)に伴い離職した人
- 事業所の移転により、通勤することが困難となったことにより離職した人
解雇などによる離職
- 解雇(自己の責に帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した人
- 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した人
- 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が支給期日までに支払われなかった月が引続き2ヵ月以上となったこと、または離職の直前6ヵ月にいずれか3ヵ月あったことなどにより離職した人
- 賃金が、支払われていた額に比べて85%未満に低下した(または低下することになった)ために離職した人
- 離職の直前6ヵ月のうちに、
①いずれか連続する3ヵ月で各月45時間
②いずれか1ヵ月で100時間または
③いずれか連続する2ヵ月以上を平均して1ヵ月で80時間を超える時間外労働が行われたことにより離職した人
または事業主が危険もしくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されていたにもかかわらず、事業所においてその危険もしくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったことにより離職した人 - 事業主が法令に違反して、育児や介護を行う労働者を就業させたり、不利益な取扱いをしたことにより離職した人
- 事業主が労働者の職種転換などに際して、職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないことにより離職した人
- 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引続き雇用されるに至った場合においてその労働契約が更新されないことにより離職した人
- 期間の定めのある労働契約の締結に際しその労働契約が更新されることが明示された場合においてその労働契約が更新されないこととなったことにより離職した人
- 上司、同僚などからの故意の排斥または著しい冷遇もしくは嫌がらせを受けたことによる離職および事業主が職場におけるセクシャルハラスメントの事実を把握していながら、雇用上の措置を講じなかったことにより離職した人
- 事業主から直接もしくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した人
- 事業所において使用者の責に帰すべき事由により行われた休業が引続き3ヵ月以上となったことにより離職した人
- 事業所の業務が法令に違反したために離職した人
特定受給資格者の優遇
特定受給資格者と一部の特定理由資格者は、基本手当の受給条件が自己都合退職より優遇されています。
受給資格
基本手当の受給資格は、離職前の2年間に通算して12ヵ月以上の被保険者期間が必要ですが、特定受給資格者の受給資格は、離職前の1年間に6ヵ月以上の被保険者期間に緩和されます。
給付制限
自己都合退職であれば基本手当が支給されるまでに給付制限がありますが、特定受給資格者など会社都合であれば給付制限がありません。
所定給付日数
30歳未満の所定給付日数は最大で120日ですが、特定受給資格者は最大で180日の受給が可能です。
基本手当の受給手続き
基本手当を受給するには、ハローワークへ行き、求職の申し込みをする必要があります。
一般の自己都合退職の場合には、2ヵ月の給付制限期間がありますが、会社の倒産や解雇などによる会社都合(退職)の場合には、給付制限期間がありません。
基本手当受給の流れ
- 管轄のハローワークで求職の申し込みをする
- 必要書類を提出し、受給資格の確認を受ける
- 受給説明会に参加する
- 失業認定日が指定される
- 失業認定日にハローワークへ行く
- 再就職か所定給付日数の終了まで失業認定日にハローワークへ行く
まとめ
心の準備をする時間もなく起こってしまう倒産や解雇。
当然、転職の準備などできていないでしょう。
それだけで大変なことですが、優遇されるはずの手続きをせず、あとで後悔するのは、本当に踏んだり蹴ったり。
次のステップにつなげるためにも特定受給資格者、特定理由離職者の手続きは迅速に確実に行いましょう。


【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・ハローワークインターネットサービス