保育サービスの代表的なものは保育所です。保育所は0歳から小学校入学前までのこどもが集団で過ごす場所のことです。
就活・転職で押さえておきたい保育サービス業界の概要と動向についてご紹介します。
保育所とは
保育所とは、「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者のもとから通わせて保育を行うことを目的とする施設(児童福祉法)」のことです。
保育所の認可は都道府県等の自治体が行います。
運営はほとんどが自治体や社会福祉法人ですが、企業主導型保育や自治体が独自に認証した保育施設もあります。
共働き家庭の増加とともに保育サービスは市場を拡大しています。
保育サービスの需要は今後も続くと見込まれますが、サービスを担う保育士の待遇改善が課題となっています。
行政からの支援を含めて、業界全体の改革が必要とされます。
こども家庭庁が2023年に発足し、国による子育て支援が期待されています。
【保育サービスの種類】
- 施設保育
認可保育所、認可外保育所、認定こども園、幼稚園、小規模保育など - 在宅保育
ベビーシッター、保育ママ(家庭的保育)、訪問型保育など - 一時的
一時預かり、病児保育など
保育事業者
民間企業の参入は少数ですが、受け皿は広がっています。
待機児童の問題は大幅に改善しましたが、地方では定員割れする施設も出てくるなど、保育サービスの競争は激しくなっています。
保育各社はサービスの付加価値を高めることに力を入れています。
JPホールディングス
業界最大手の上場企業です。
首都圏の認可保育所を中心に施設を増やし、地方主要都市へも進出しています。
英語、クッキング、体操、リトミックの教育プログラムを実践し、食育にもこだわった保育をしています。
総合保育サービス企業として業界をけん引する存在です。
- 設立:1993年3月31日
- 本社:愛知県
- 売上高:378億円
- 従業員数:4,021人
- 平均年齢:42歳
ライクキッズ(ライク)
事業所内保育施設(企業・病院・大学等)の運営を受託しています。
また認可保育園をはじめ、学童クラブや児童館など、さまざまな形態の保育施設も運営しています。
- 設立:1989年12月
- 本社:東京都
- 売上高:304億円
- 従業員数:5,724人
こどもの森
業界大手の老舗企業です。
首都圏を地盤に認可保育所をメインとして、東京都認証保育所、児童館、学童保育所などを展開し、安定的に事業を拡大しています。
施設型保育に特化し、法人ではなく、個人の保護者を対象とした保育所事業を続けています。
- 設立:1992年1月
- 本社:東京都
- 従業員数:3,600人
グローバルキッズCOMPANY
創業10年でマザーズに上場した旧グローバルグループ。
認可保育所の開設を重点的に行っています。
グループ中核のグローバルキッズでは保育士、栄養士、看護師などの専門家がチームとして取り組む「チーム保育」を実践しています。
- 設立:2015年10月
- 本社:東京都
- 売上高:251億円
- 従業員数:2,693人
ポピンズ
ベビーシッター派遣、認可保育所、東京都認証保育所の運営、事業所・大学・病院・商業施設・ホテル内託児所の運営、学童クラブの運営、受験教室、インターナショナルスクールなどの事業を展開しています。
大手企業や病院などの取引が多く、ポピンズのブランド力を高めています。
- 設立:2016年10月
- 本社:東京都
ソラスト
医療・介護・保育事業を展開し、全国に拠点があります。
首都圏で保育所を運営しています。
- 設立:1965年10月
- 本社:東京都
- 売上高:1,351億円
- 従業員数:33,884人
ヒューマンホールディングス
グループ企業のヒューマンスターチャイルドで保育事業を行っています。
認可保育所を中心として、事業所内保育所や院内保育所も運営しています。
- 設立:2002年8月
- 本社:東京都
- 売上高:256億円
- 従業員数:4,480人
- 平均年齢:45歳
ピジョンハーツ
ピジョングループの保育サービスです。
認可保育所などを展開し、特に企業内・院内保育所で圧倒的な実績があります。
- 設立:1999年2月
- 本社:東京都
介護系
- ニチイ学館:保育所「ニチイキッズ」を展開
- ベネッセスタイルケア:首都圏中心に保育所、学童保育を展開
教育系
- 小学館集英社プロダクション:保育所、幼児教室を展開
- 学研ココファン・ナーサリー:子育て支援事業を展開
その他
- アートチャイルドケア:アートコーポレーション傘下の保育所
- タスクフォース:法人向けサービスを展開
幼児教育
認定こども園は増加傾向にあります。
認定こども園が増えるということは、幼児教育が充実するということでもあります。
認定こども園
幼保一体化施設として認定こども園は増加していくことが予想されています。
施設の種類により定義や条件が異なります。
- 幼保連携型
認可幼稚園と認可保育所の基準を満たす施設 - 幼稚園型
認可幼稚園が保育所的な機能を備える施設 - 保育所型
認可保育所が幼稚園的な機能を備える施設 - 地方裁量型
幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が必要な機能を果たす施設
幼稚園
幼稚園は保育所とは対照的に経営環境が厳しくなっています。
幼稚園から認定こども園への移行も増加しています。
- 私学助成認可幼稚園
- 施設型給付認可幼稚園
- 幼稚園型認定こども園
- 幼保連携型認定こども園
保育サービスの採用市場
保育士は保育の専門家として、専門知識と技術を持って児童の保育を行い、指導します。
保育士の資格を取得するには、指定の養成校を卒業する方法と保育士国家試験に合格する方法があります。
養成校を卒業しなくても、受験資格があれば保育士試験に合格することで、資格を取得できますので、社会人からでも目指しやすいといえます。
国家試験の受験資格
- 4年制大学を卒業した人
- 4年制大学に2年以上在学し、62単位以上を修得した人
- 短期大学や専修(専門)学校を卒業した人
- 児童福祉施設で5年以上児童の保護に従事した人
- 高等学校卒業者の場合は、児童福祉施設で2年以上児童の保護に従事した人
- 幼稚園教諭免許の取得者 など
保育士の求人・転職
保育士不足は続いていて、有効求人倍率は他の職種と比較して高い水準を維持しています。
特に都市部での不足が深刻です。保育所の運営会社は、保育士の待遇改善や業務負担の削減、福利厚生の充実などに力を入れています。
保育サービスは景気に左右されにくい業界ですので、保育士のニーズは今後も続くと考えられます。
保育士の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 38.0歳 (平均) |
所定内労働時間 | 169時間 | 168時間 | 167時間 |
残業 | 3時間 | 3時間 | 3時間 |
月収 | 230,900円 | 260,800円 | 271,400円 |
年間賞与等 | 438,000円 | 695,700円 | 712,200円 |
年収 | 3,208,800円 | 3,825,300円 | 3,969,000円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
保育士の転職活動
保育士の転職市場は活発ですので、一般の転職サイトでは業界の動向に追いつけない傾向があります。
保育士専門の転職サービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーのサポートを受けることができます。
非公開・好条件の求人紹介だけでなく、求人情報からだけでは知ることのできない職場環境などを聞くことができます。
まとめ
少子化は進んでいますが、保育所のニーズは高く、保育士は足りていません。
保育士の待遇改善が進められていますので、これまで以上にやりがいをもって働き続けられる環境が整備されていくと考えられます。
保育士は子どもの保育に関するスペシャリストとして、人に感謝され、自分も成長できる社会的にも意義のある仕事です。
保育サービスは質や付加価値の向上が求められるようになっていますので、やる気のある人にとっては、活躍の場が広がっていくといえるでしょう。
【参考】
・厚生労働省
・こども家庭庁
・各企業ウェブサイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2025年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2025年版』