公務員の受験者数は景気の動向を反映して、大きく変動します。
民間企業の求人数が多いと、地方公務員試験の受験者数は減少する傾向ですが、安定した職業として高い人気を維持しています。
20代・第二新卒の社会人経験者が地方公務員試験を目指すケースも少なくありません。
地方公務員の種類、採用試験、勉強法について、ご紹介します。
地方公務員とは
地方公務員は都道府県庁、市区役所、町村役場、地方公共団体の組合およびその地方機関などで立法事務、地方行政事務を行います。
地方公務員の職種
地方公務員の職種は細かく分かれていて、採用試験の区分にもなっています。
試験区分の種類や呼称は地方自治体により異なります。
通常、都道府県の警察官、市町村の消防官などは、別に採用試験が行われています。
行政・事務
多様な一般行政事務を担当します。
福祉・保健医療、教育・文化、産業・労働、環境、都市づくりなどの事業に関する総合的な企画調整、人事・財務管理など、さまざまな業務に携わります。
【配属先】各部局、各事業所
土木
道路、橋梁、河川、港湾、上下水道の整備や管理、市街地再開発・土地区画整理事業の実施、都市計画決定などを担当します。
【配属先】建設局、土木課、道路課、建設事務所など
建築
建築指導、都市整備に関する企画や、公共住宅建設などの計画及び設計監督、建築物の確認及び許可などを担当します。
【配属先】都市整備局、建築課、土木課など
機械
機械設備の維持管理や、道路、河川、公園緑地などにおける機械設備建設、環境保全対策に関する規制や指導などを担当します。
【配属先】交通局、水道局、建築課など
電気
電気設備の維持管理や、道路、河川、公園緑地などへの電気設備建設などを担当します。
【配属先】交通局、水道局、建築課など
化学
環境衛生に関する試験研究、検査などを担当します。
【配属先】保健所、衛生センター、環境センターなど
農業
農業技術の普及指導、農業に関する調査研究を担当します。
【配属先】農林部、土地改良事務所など
農業土木
土地改良事業などの企画、設計、施工管理などを担当します。
【配属先】農林部、土地改良事務所など
水産
水産業の振興計画の策定や漁業調整、漁業経営の安定に向けた施策の実施や漁業者・一般都民に対する各種情報提供、調査研究などに携わります。
【配属先】水産部、水産試験場など
林業
森林計画の策定、森林の育成・保護、林業の経営指導、水道水源林の管理運営、治山工事の設計及び実施などに携わります。
【配属先】農林部、農林課、森林事務所など
造園
公園、児童遊園地、緑地などの計画、設計、施工、管理、緑化計画などを担当します。
【配属先】建設局、公園課、環境課など
食品衛生監視
飲食店、食品製造業、販売業などの設備、食品、添加物、容器などの衛生状態について立ち入り検査、業者の指導などを担当します。
【配属先】福祉保健局、保健所など
環境衛生監視
ホテル、旅館、理・美容院、公衆浴場、興行場などの環境衛生状態について立ち入り検査、指導などを担当します。
【配属先】保健所など
衛生(検査)
一般検査、細菌、水質、食品検査などを担当します。
【配属先】保健所など
福祉
児童福祉に関する相談・指導、児童施設における生活指導、高齢者施設における介護業務などを担当します。
【配属先】福祉センター、児童館など
心理
児童福祉に関する相談業務、児童相談所・福祉施設などでの心理判定・心理治療、障害者手帳の判定・交付などを担当します。
【配属先】児童相談所、児童福祉施設など
公安
警察官や交通巡視員は基本的に都道府県の公務員、消防官は市町村等の公務員になります。
地方公務員になるには
地方公務員になるには、自治体の採用試験を受ける必要があります。自治体にはそれぞれ特徴があり、採用人数も毎年変わります。
地方公務員試験
地方公務員試験は、各自治体の採用人数や試験科目、受験倍率、求める人物像などを考慮して、どの自治体を受験するかを決めます。
第一志望以外にもいくつか併願するのが一般的です。
職員の採用を退職者の補充にとどめている自治体が多く、毎年必ず採用試験があるとは限りません。
受験者の割合(令和4年度)
- 大学卒業程度試験:58.9%
- 短大卒業程度試験:8.6%
- 高校卒業程度試験:28.1%
- その他の試験:4.4%
年齢制限
公務員試験には年齢制限が設けられています。
受験可能年齢は自治体により違い、変更されることもあります。
受験できる年齢は上がってきています。
大学卒業程度の試験についての上限は29歳など20代とするところが多いようです。
スケジュール
- 受験案内、申込書入手
- 受験の申し込み
- 受験票の受領
- 第一次試験
- 第一次試験合格
- 第二次試験
- 最終合格
- 採用候補者名簿への登載
- 採用内定
- 正式採用
試験内容
- 第一次試験:教養試験、論文試験、専門試験など
- 第二次試験:口述試験、面接、適性検査など
- 第三次試験:実施する自治体もある
職務経験者の採用
地方公務員の採用には、定期採用以外に不定期に職務経験者採用を実施する自治体もあります。
経験者採用は技術系の職種に多くみられます。
地方公務員試験の動向
地方公務員試験について、総務省の「地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」から実施状況を知ることができます。
地方公務員試験の受験者総数は、大学卒業程度の上級試験の受験者数が多く、全体の5割超を占めています。
次いで高校卒業程度の初級試験の受験者となっています。
受験者数はやや減少傾向ですが、合格者数に大きな変化は見られません。
令和4年度の実施状況は以下のとおりとなっています。
都道府県
区分 | 受験者数 (人) | 合格者数 (人) | 採用者数 (人) | 競争率 (倍) |
大卒業程度 | 81,091 | 19,422 | 12,838 | 4.2 |
短大卒業程度 | 6,829 | 1,717 | 1,265 | 4.0 |
高校卒業程度 | 44,874 | 8,843 | 5,693 | 5.1 |
その他 | 3,513 | 566 | 450 | 6.2 |
計 | 136,307 | 30,548 | 20,246 | 4.5 |
市区
区分 | 受験者数 (人) | 合格者数 (人) | 採用者数 (人) | 競争率 (倍) |
大卒業程度 | 167,638 | 27,175 | 20,163 | 6.2 |
短大卒業程度 | 28,691 | 8,349 | 6,928 | 3.4 |
高校卒業程度 | 62,377 | 9,220 | 7,135 | 6.8 |
その他 | 14,594 | 2,405 | 2,022 | 6.1 |
計 | 273,300 | 47,149 | 36,248 | 5.8 |
町村
区分 | 受験者数 (人) | 合格者数 (人) | 採用者数 (人) | 競争率 (倍) |
大卒業程度 | 9,439 | 2,114 | 1,674 | 4.5 |
短大卒業程度 | 2,404 | 876 | 753 | 2.7 |
高校卒業程度 | 15,845 | 3,640 | 2,939 | 4.4 |
その他 | 1,356 | 477 | 426 | 2.8 |
計 | 29,044 | 7,107 | 5,792 | 4.1 |
合計
区分 | 受験者数 (人) | 合格者数 (人) | 採用者数 (人) | 競争率 (倍) |
大卒業程度 | 258,168 | 48,711 | 34,675 | 5.3 |
短大卒業程度 | 37,924 | 10,942 | 8,946 | 3.5 |
高校卒業程度 | 123,096 | 21,703 | 15,767 | 5.7 |
その他 | 19,463 | 3,448 | 2,898 | 5.6 |
計 | 438,651 | 84,804 | 62,286 | 5.2 |
中途採用試験
団体数 | 実施団体数 | 受験者数 (人) | 採用者数 (人) | |
都道府県 | 47 | 47 | 17,727 | 1,652 |
指定都市 | 20 | 20 | 11,293 | 1,016 |
市区町村 | 1,722 | 935 | 50,907 | 6,506 |
合計 | 1,789 | 1,002 | 79,927 | 9,174 |
(総務省「令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」より)
社会人の試験対策
地方公務員試験のうち、都道府県・政令指定都市・特別区で実施されるものは「地方上級」(大学卒業程度)、「地方中級」(短大卒業程度)、「地方初級」(高校卒業程度)に分類されています。
公務員試験には独特の出題があり、試験科目にはそれぞれ合格基準があります。
科目の特性を踏まえて、出題ウエート、専攻・得意分野、不得意分野などを考慮して、勉強を進めることが重要です。
面接も民間企業の面接とは対策が異なりますので、公務員試験のための対策が必要になります。
社会人が働きながら勉強するには、自分の状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
独学
公務員のテキストや問題集はたくさんありますので、独学でも合格を目指すことができます。
自分のペースで経済的に勉強できますが、わからないところは基本的に自分で解決しなくてはなりません。
通信講座
通信講座では公務員試験に対応したカリキュラムで効率的に勉強することができます。
独学では難しい最新情報の入手や質問回答・相談もできます。
予備校
直接講師の授業を受けられるのが、予備校の魅力です。
ただし、時間や場所の制約があり、費用は少し高めになります。
公務員試験の対策・通信講座
リンクアカデミー | 大栄の公務員受験対策講座では、公務員試験合格をトータルでバックアップ。1次試験から2次試験までをサポートする戦略的な試験対策指導に力を入れています。 |
資格の大原 | 大原の公務員講座では、多彩な各種講義・コースが用意されていて、筆記試験対策・面接試験対策・個別指導を受けることができます。 |
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まとめ
地方公務員は職種の幅が広く、学歴の制限がほとんどありません。
20代であれば、多くの人がチャレンジできる試験ですが、採用されて一生の仕事としていくには、明確な志望動機が必要になるでしょう。
地域に貢献する職業としての意識が常に求められます。
【参考】
・総務省ウェブサイト
・総務省「令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」
・「日本標準産業分類」