キーワード解説
年俸制
年俸制とは、賃金形態のひとつで、1年間単位で賃金を設定する制度のことです。
賃金額は個人の業績目標と達成結果に基づいて決定されます。
日本企業の正社員の多くは月単位で賃金を定める月給制ですが、年功制を廃して個人の能力や成果を重視する企業などでは年俸制の導入が増えています。
年俸制の対象は、管理職が中心ですが、専門職や技術職、営業職、企画職、契約社員など一般社員にも対象範囲は広がっています。
企業規模が大きいほど、年俸制の導入率が高く、業種では、情報通信業、金融・保険業での導入率が高くなっています。
年俸制の支給方法
賃金額は1年単位であっても、労働基準法による月1回以上の支払いの原則から12回以上(賞与も含めて14回など)に分割して毎月支払います。
定期昇給という概念はなく、毎年、年俸を更改します。
年俸制の残業代
年俸制であれば残業代が支払われないというのは、間違いです。
年俸制の場合でも管理監督者の適用除外がされず、裁量労働制や事業場外労働のみなし時間制が適用されない限り、企業には時間外労働に対する割増賃金の支払い義務があります。
管理職のみに年俸制を適用していたり、裁量労働制の適用者などに年俸制を適用するケースが多いことで、誤解が生じるようになったと考えられます。
年俸制の割増賃金
雇用契約書に「年俸のなかには時間外手当が含まれる」という記載があったとしても、それだけで割増賃金が発生しないということにはなりません。
年俸に割増賃金が含まれていると認められるには、①割増賃金部分が通常の賃金部分と明確に区別されていること②実質的に時間外労働としての対価になっていること、が必要です。
年俸額に定額の時間外労働手当を含むとした場合は、各月に分割して支払われる年俸額についても、それに含まれる定額の時間外労働手当額を明確にすることが望ましく、その際、実際の時間外労働から計算される時間外手当が定額の時間外手当を上回るときには、その差額を支給しなければなりません。
年俸制の平均賃金
年俸の16分の1を毎月支給し、16分の4を年2回に分けて支給する年俸制の場合、年俸総額を12で除した額を1ヵ月の賃金として、平均賃金を計算することになります。
16分の4を賞与として支給していても、事前に特定されているものであり、労働基準法上の賞与とはみなされないことになります。
年俸制の契約途中の退職
年俸制の対象者が契約期間の途中で退職した場合、特段の定めがなければ退職月の給与は日割りとなります。
退職後の給与については、年俸制であっても労働契約が終了して、労働の提供がなければ賃金の請求権はないと解されています。
年俸制の欠勤
年俸制の対象者が欠勤、遅刻、早退した場合、欠勤等には賃金を支給しないと定めている場合には、賃金は発生しないことになります。
年俸制と退職金
退職金制度は、就業規則等により定めなければなりません。
退職金制度をポイント制などに変更する場合にも、その決定や計算の方法は就業規則の変更が必要となります。
就業規則の変更による労働条件の一方的な不利益変更は原則として認められていません。
変更内容が合理的なものである場合に限り、個々の労働者が同意しなくても適用できるとされています。
年俸制のメリット
年齢や勤務年数にかかわらず、個人の業績や成果が年俸に反映されるので、実力に応じた給与アップにつながるのがメリットです。
明確な目標を設定することで、社内の活性化や業務能力の向上に効果があると考えられています。
年俸制のデメリット
年俸制では、1年で支払われる金額が決まっていますので、多くの場合、その年の賞与に評価が反映されないのがデメリットです。
また、個人や当面の業績のみに関心が集まり長期的視点に欠けたり、組織内の協調性が低下するなどの問題点が指摘されています。
参考:厚生労働省・東京労働局