調剤薬局は、医師の処方せんが必要な処方薬(医療用医薬品)を販売します。
調剤薬局では、調剤特化から業務を拡充する動きが進んでいます。
全国の薬剤師数の約半数が調剤薬局で働いていて、新卒薬剤師の就職先としてもトップクラスです。
最近ではドラッグストアの調剤参入が目立ち、競争が激化しています。
転職・就職で押さえておきたい調剤薬局業界の動向、売上高ランキング、採用市場をご紹介します。
調剤薬局業界の最新動向(2023年)
調剤薬局とは
調剤薬局は、医療機関から発行された処方せんを受け取り、調剤を行う薬局のことです。
医薬分業の推進に伴い、全国各地に調剤薬局が誕生しました。
厚生労働省は医薬分業により医療機関から独立した調剤薬局に対し、薬の管理を通じて、地域の生活者のかかりつけ薬局としての役割を期待しています。
薬剤師が薬のエキスパートとして医療を監視し、サポートする高度な専門職として地位を高め、より質の高い医療サービスが可能になると考えられています。
調剤薬局の種類
- 門前薬局
病院に隣接した場所で、その病院からの処方箋を主として取り扱う薬局 - マンツーマン薬局
診療所に隣接した場所で、一医院一薬局で対応する薬局 - 地域薬局
住宅街や商店街に設置して、様々な医療機関からの処方箋に対応する薬局
薬局・ドラッグストアの区分
業態 | 調剤 | 医薬品 | 資格者 |
薬局 | 可 | すべての医薬品 (調剤薬、一般用医薬品) | 薬剤師 |
店舗販売業 | 不可 | 一般用医薬品 (薬剤師がいない場合は第1類医薬品以外) | 薬剤師または 登録販売者 |
※店舗販売業:薬局以外の医薬品小売
調剤薬局大手
調剤薬局は、新規出店などで規模の拡大に力を入れています。
薬局認定制度や調剤報酬改定などへの対応が課題となっています。
各社は、「かかりつけ薬剤師・薬局」「健康サポート薬局」への対応を急いでいます。
アインホールディングス
調剤薬局最大手。
ドラッグストアも展開しています。
- 従業員数:8,912人
- 平均年齢:42歳
- 店舗数:1,177店
日本調剤
調剤薬局大手。
門前薬局が中心です。
ジェネリック医薬品の製造にも力を入れています。
- 従業員数:5,552人
- 平均年齢:35歳
- 店舗数:697店
クオールホールディングス
大手調剤チェーン。
門前薬局中心から複数の病院に対応できる地域薬局へシフトしています。
- 従業員数:5,602人
- 平均年齢:44歳
- 店舗数:834店
メディカルシステムネットワーク
医薬品ネットワーク事業や地域薬局事業を展開。
全国に店舗を拡大しています。
- 店舗数:433店
総合メディカル
九州地盤。
中部や東日本にも店舗を拡大しています。
- 従業員数:16,806人
- 店舗数:744店
アイセイ薬局
「マンツーマン型」あるいは「医療モール型」の地域密着薬局を展開しています。
- 従業員数:4,100人
- 店舗数:397店
ファーマライズホールディングス
ファミリーマートと提携。
「かかりつけ薬剤師制度」に対応しています。
- 従業員数:1,546人
- 平均年齢:46歳
- 店舗数:350店
調剤薬局業界の売上高ランキング
調剤薬局
順位 | 企業名 | 売上高 (百万円) |
1 | 日本調剤 | 299,392 |
2 | アインホールディングス | 297,305 |
3 | クオールホールディングス | 166,199 |
4 | メディカルシステムネットワーク | 106,685 |
5 | 総合メディカル | 96,957 |
6 | I&H(阪神調剤薬局) | 92,822 |
7 | ファーマみらい | 63,925 |
8 | アイセイ薬局 | 62,273 |
9 | ファーマライズホールディングス | 52,324 |
10 | フロンティア | 51,552 |
11 | たんぽぽ薬局 | 46,563 |
12 | ユニスマイル | 38,391 |
13 | メディカル一光グループ | 33,595 |
14 | なの花北海道 | 29,543 |
15 | 薬樹 | 29,420 |
16 | 大賀薬局 | 26,230 |
17 | 日本メディカルシステム | 24,110 |
18 | なの花西日本 | 22,683 |
19 | なの花東日本 | 22,319 |
20 | ミアヘルサホールディングス | 19,510 |
(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)
調剤薬局業界の採用市場
調剤薬局の業務
調剤は薬剤師だけが行える業務ですが、調剤薬局には、調剤以外の業務も数多く存在します。
調剤業務
- 処方せん鑑査
- 薬歴・お薬手帳との照合
- 疑義照会
- 後発医薬品の希望有無の確認
- 服薬指導
- 調製(調剤)
- 調剤鑑査
- 薬袋印字
- 医薬品の受け渡し、会計
調剤以外の業務
- 薬歴、調剤録、処方せんの保管・管理
- 調剤報酬請求明細書(レセプト)作成
- 医薬品の発注
- 医薬品の在庫管理
調剤薬局の資格
調剤薬局では、薬剤師以外にも専門性を必要とする業務が多く、資格を活かすことができます。
薬剤師
医療分業が進み、調剤薬局に勤務する薬剤師は増えています。
薬剤師の社会的なニーズは高まり、キャリアも多様化しています。

登録販売者
登録販売者は、医薬品の一部を販売することができる専門資格です。
医薬品の販売は薬剤師のみに許可されていましたが、登録販売者が一定の範囲で行えるようになっています。

調剤薬局事務
調剤薬局事務は、調剤薬局で処方せんの受付や会計、調剤報酬明細書の作成を行います。
資格がなくても仕事はできますが、転職・就職には資格取得が有利です。

調剤薬局の求人・転職
病院に代わって増えているのが調剤薬局やドラッグストアの求人です。
薬剤師は調剤薬局とドラッグストアとの獲得競争が激化しています。
よりよい条件を求めて調剤薬局の転職市場は非常に活発です。
調剤薬局(その他の小売業)の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 42.2歳 (平均) |
所定内労働時間 | 166時間 | 164時間 | 165時間 |
残業 | 7時間 | 9時間 | 7時間 |
月収 | 217,100円 | 262,200円 | 289,700円 |
年間賞与等 | 244,600円 | 484,200円 | 542,200円 |
年収 | 2,849,800円 | 3,630,600円 | 4,018,600円 |
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)
調剤薬局の転職活動
エージェントサービスを利用すると、業界や職種に精通したキャリアアドバイザーのサポートを受けることができます。
非公開・好条件の求人紹介だけでなく、書類作成や面接対策のアドバイスなどで選考通過率のアップが期待できます。
- キャリアの可能性を広げるカウンセリング
- 専門性の高いアドバイザー
- 日程調整・条件交渉の代行 など

まとめ
調剤薬局で働く薬剤師には、医薬品の専門家としての知識やスキルだけでなく、コミュニケーション能力も求められています。
地域密着の調剤薬局では、実際に患者と向き合い、かかりつけ薬剤師として頼られる存在になるために、信頼関係を築く姿勢が重要になっています。

【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』