理学療法士は、疾患の発症早期から、⾃立⽀援、社会復帰といった幅広い場面で状態や時期に応じた理学療法を提供しています。
理学療法士が活躍しているのは、主に病院や診療所などの医療施設ですが、福祉や保健サービスに携わる人も増えています。
理学療法士として、資格を活かせる仕事とキャリアアップについてご紹介します。
理学療法士の資格を活かせる仕事
理学療法士とは
理学療法士はPhysical Therapist(PT)とも呼ばれます。
ケガや病気など身体に障害のある人などに、基本動作能力の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気、水、光線等)などを用いて、自立した日常生活が送れるように支援する医学的リハビリテーションの専門職です。
キャリアでの活かし方
- 医療分野
- 介護・福祉分野
- 保健分野
- 教育分野 など
理学療法士が働く施設
理学療法士は主に医療施設に所属していましたが、介護保険制度が導入された2000年前後から、介護領域に所属する人数が増え始めています。
また、1990年代に導入された規制緩和により養成校数が急増し、教育・研究施設の所属数は大幅に増加しています。
働く施設と会員数
施設 | 会員数 |
病院・センター | 72,790 |
診療所(クリニック) | 11,770 |
介護サービス施設・事業所 | 15,569 |
障害福祉施設 | 1,115 |
障害福祉サービス事業所 | 278 |
教育研究施設 | 2,935 |
行政等 | 711 |
法人本部等 | 338 |
企業、起業等 | 1,336 |
その他 | 29 |
(日本理学療法士協会統計情報「会員の分布(2023年3月末)」より)
医療分野
理学療法士の職場として、圧倒的に多いのは病院や診療所などの医療施設です。
日本理学療法士協会会員の7割近くが医療施設で働いています。
病院では早期治療が目標となり、理学療法は機能の回復、合併症の予防が中心になります。
リハビリテーションセンターでは、回復期の理学療法を実施して、日常生活での自立を目指します。
医療施設
- 一般病院
- 総合病院
- リハビリ専門病院
- 整形外科の診療所 など
介護・福祉分野
老人ホームなどの介護施設で、身体機能の維持・回復のためのリハビリや予防に取り組む理学療法士も増えています。
福祉サービスの提供者としてだけでなく、サービスを選ぶためのアドバイスやコーディネートができる専門家としての活躍が期待されています。
介護関連施設
- 介護老人保健施設
- 通所リハビリテーション
- 介護老人福祉施設
- 通所介護
- 訪問看護ステーション など
身体障がい者福祉施設
- 身体障がい者療護施設
- 身体障がい者福祉センター
- 身体障がい者更生養護施設
- 身体障がい者更生相談所 など
児童福祉施設
- 障がい児入所施設
- 児童発達支援センター など
保健分野
地域の人々の健康を保つためのサービスに携わる分野にも理学療法士の活躍の場は広がっています。
指導は保健所や健康増進施設などで行われます。
行政関係施設
- 保健所
- 保健センター
- 国・都道府県・市町村 など
健康増進施設
- スポーツ関連施設
- フィットネス施設 など
教育分野
理学療法士のニーズが増加し、理学療法士の養成校も急増したことから、教育・研究施設で後進の指導にあたる理学療法士も増えました。
大学や短期大学で学生を指導しながら、専門分野の研究をしている人もいます。
教育機関
- 4年制大学
- 専門学校
- 短期大学
研究機関
- 大学院
- 研究所
- 理学療法関連企業
理学療法士のキャリアアップ
理学療法士のキャリアパス
日本理学療法士協会では、多様化する理学療法士のニーズに対応するために、生涯学習制度を設けています。
専門職として生涯にわたる知識・技術の維持、向上が可能となる制度です。
登録理学療法士制度
登録理学療法士制度では、前期研修、後期研修の受講を通じて、多様な障害像に対応できる「ジェネラリスト」の育成を行っています。
- 前期研修・後期研修の修了者を「登録理学療法士」とする
- 5年ごとの更新を目安に自己研鑽を続ける
- 理学療法士の質の担保の証とする
認定・専門理学療法士制度
認定・専門理学療法士制度は、「登録理学療法士」を基盤として、より専門性の高い「スペシャリスト」を育成するプログラムです。
認定理学療法士と専門理学療法士は階層性ではなく、並列性です。
【認定理学療法士】
- 指定研修カリキュラムの受講
- 臨床認定カリキュラムの受講
- 日本理学療法学術研修大会の参加
申請をして、認定試験に合格すると「認定理学療法士認定証」を取得できます。
【専門理学療法士】
- 指定研修カリキュラムの受講
- ブロック学会参加
- 都道府県学会参加
- 日本理学療法学会連合の会員団体が主催の学術大会での発表
- 点数基準に該当する査読付き原著論文1編
申請して口頭試問に合格すると「専門理学療法士認定証」を取得することができます。
理学療法士の給与・待遇
理学療法士の給与は、施設の種類や地域によって異なります。
また同じ施設でも職種により別の給与体系が設定されています。
理学療法士は平均年齢が若いため給与の平均は他の医療職より若干低めですが、基本的には年々高くなる傾向があります。
病院などでは認定・専門理学療法士の資格を持っていると、資格手当がつく場合もあります。
理学療法士の給与
区分 | 20~24歳 | 25~29歳 | 35.6歳 (平均) |
所定内労働時間 | 164時間 | 161時間 | 162時間 |
残業 | 4時間 | 5時間 | 5時間 |
月収 | 251,700円 | 270,300円 | 300,900円 |
年間賞与 | 394,600円 | 628,100円 | 714,400円 |
年収 | 3,415,000円 | 3,871,700円 | 4,325,200円 |
(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より)
理学療法士の転職活動
理学療法士など医療技術者の有効求人倍率は高水準が続いています。
特に介護保険施設の求人が急増しています。
今後は、訪問リハビリなど在宅医療に関連した仕事も求められるようになっていくことが考えられます。
理学療法士の活躍の場は新しい分野でも増えていくでしょう。
理学療法士の活躍の場は広がっていますので、自分だけで転職活動するよりも、業界・職種に精通した専門のサポートを受けてキャリアの可能性を広げることをおすすめします。
理学療法士の転職支援
各地の医療機関や施設に精通した専門の転職アドバイザーが、希望に合った理学療法士の求人を紹介してくれます。
まとめ
理学療法士の活躍の場は多いですが、資格取得者も増えていますので、人気の職場や求人の競争率は高くなっていくことが考えられます。
これまではリハビリの専門家として役割りが大きかった理学療法士ですが、これからは予防分野で働く人も増えていくでしょう。
理学療法士としての知識と技術は新しい分野を開拓し、活かしていくことが求められています。
【参考】
・厚生労働省ウェブサイト
・公益社団法人日本理学療法士協会サイト