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旅行会社の業界研究【概要・動向】

旅行業界は、訪日外国人観光客の増加により成長を続けてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限の影響で、甚大な打撃を受けました。

国内旅行から海外旅行、訪日旅行の再開で、徐々に回復を目指すことになりそうです。

転職・就職で押さえておきたい旅行業界の概要と動向についてご紹介します。

旅行業界の最新動向(2023年)

旅行業とは

旅行業とは、交通または宿泊等のサービスの提供について、サービスの提供者または旅行者のいずれか一方を代理して契約を締結するための行為を行う事業のことです。

旅行会社は、国内・海外旅行、パッケージツアー、受注型企画旅行、宿泊交通手配などのサービスを個人や企業・団体向けに提供します。

コロナ禍で団体旅行は減り、個人手配・自由旅行が主流となっています。

ネット予約の拡大で、オンライン系は伸びが大きく、店舗系は苦戦しています。

需要回復が期待されますが、感染再拡大の可能性や円安、燃料高騰など不安材料も多く、予測が難しい状況です。

旅行会社の種類

  • 総合旅行系
  • 商品造成自社販売系
  • メディア・通信販売系
  • リテーラー
  • インターネット販売系
  • 業務性旅行特化系
  • ホールセラー
  • 海外旅行ディストリビューター
  • 海外ランドオペレーター

旅行会社

個人手配の増加、オンライン系の拡大により、パッケージを主力としてきた旅行会社にとって、事業環境は厳しさを増す見込みです。

店舗系もネット販売の拡大を目指しています。

JTBグループ

国内首位。(非上場)

国内旅行、海外旅行ともにトップで総合的な強さがあります。

人員や店舗の削減、デジタル化など構造改革を進めています。

  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:6,944億円
  • 従業員数:19,510人

エイチ・アイ・エス

海外旅行中心の大手。

手配業務やホテルなど事業の多角化を進めています。

  • 設立:1980年12月19日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:308億円
  • 従業員数:10,618人
  • 平均年齢:36歳

KNT-CTホールディングス

近鉄グループの旅行会社。

近畿日本ツーリストとクラブツーリズムが経営統合し、グループ会社を再編しました。

  • 設立:1947年5月26日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:1,551億円
  • 従業員数:3,711人
  • 平均年齢:46歳

日本旅行

国内最古の老舗旅行会社。

JR西日本の子会社で、鉄道旅行に強みがあります。

  • 設立:1949年1月28日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:1,163億円
  • 従業員数:4,414人

阪急交通社

阪急阪神ホールディングス傘下の旅行会社。

新聞広告や情報誌などのメディア型旅行商品を販売し、シニアの海外旅行に強みがあります。

  • 設立:2007年10月1日
  • 本社:大阪府
  • 旅行取扱額:493億円
  • 従業員数:2,545人

東武トップツアーズ

東武鉄道傘下の旅行会社。

  • 設立:2015年4月1日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:393億円
  • 従業員数:2,698人

名鉄観光サービス

名古屋鉄道傘下の旅行会社。

海外旅行「パノラマツアー」「トライ」、国内旅行「マーチ」など。

  • 創立:1961年4月1日
  • 本社:愛知県
  • 旅行取扱額:385億円

ビッグホリデー

JRグループ委託販売会社。

国内外旅行・ツアーを扱っています。

  • 創業:1964年4月1日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:126億円
  • 従業員数:287人

エアライン系

エアライン系は航空会社が出資する旅行会社です。

ANA X

ANAグループの旅行会社。

ANAセールスの旅行事業を会社分割により承継しました。

国内外旅行の企画・販売を行っています。

  • 設立:2016年10月21日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:428億円
  • 従業員数:759人

ジャルパック

JAL系の旅行会社。

国内外旅行の企画・販売を行っています。

  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:491億円
  • 従業員数:927人

OTA(オンライン旅行会社)

オンライン旅行会社のシェア拡大は続いています。

人件費などのコストが少なく、店舗に比較して利益率が高くなっています。

楽天グループ

オンライン旅行会社の国内大手。

国内予約中心の「楽天トラベル」を運営しています。

  • 設立:1997年2月7日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:非公開
  • 従業員数:28,261人
  • 平均年齢:34歳

リクルートホールディングス

オンライン旅行会社の国内大手。

国内宿泊予約の「じゃらんネット」、海外旅行比較の「エイビーロード」を展開しています。

  • 設立:1963年8月26日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:51,757人
  • 平均年齢:39歳

Zホールディングス

ポータルの集客の生かして「ヤフートラベル」を運営しています。

直接販売は買収した「一休」で行っています。

  • 設立:1996年1月31日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:23,705人
  • 平均年齢:42歳

エアトリ

DeNA傘下の旅行会社。

航空券の予約サイト「エアトリ」を運営しています。

  • 設立:2007年5月11日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:336億円
  • 従業員数:418人
  • 平均年齢:36歳

アドベンチャー

航空券予約中心の旅行商品販売サイト。

「スカイチケット」を運営しています。

  • 設立:2006年12月21日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:217人
  • 平均年齢:34歳

オープンドア

比較サイト。

「トラベルコ」を運営しています。

  • 設立:1997年4月21日
  • 本社:東京都
  • 従業員数:183人
  • 平均年齢:37歳

旅工房

ネット専業、海外旅行予約中心の旅行会社。

同名サイト「旅工房」を運営しています。

  • 設立:1994年4月18日
  • 本社:東京都
  • 旅行取扱額:14億円
  • 従業員数:225人
  • 平均年齢:35歳

海外オンライン系

円安や不安定な国際情勢の影響もあり、日本人の海外旅行の見通しは厳しくなっています。

エクスペディア

オンライン旅行会社の世界最大手。

傘下にはホテルズドットコム、ホームアウェイ、トリバゴなど。

ブッキング・ホールディングス

エクスペディアと並ぶオンライン旅行会社大手。

傘下にはブッキングドットコム、アゴダ、カヤックなど。

バス旅行

国内旅行の需要を喚起し、近場の観光に力を入れています。

バス会社

  • はとバス
  • WILLER
  • みちのりホールディングス

旅行業界の収入高ランキング

旅行業

順位企業名収入高
(百万円)
1JTB(連結)582,323
2KNT-CTホールディングス(連結)139,957
3エイチ・アイ・エス(連結)118,563
1日本旅行97,314
2近畿日本ツーリスト77,993
3ビッグホリデー74,058
4ジェイアール東海ツアーズ37,116
5エイチ・アイ・エス26,694
6クラブツーリズム20,660
7ビッグホリデー13,541
8HTB-BCDトラベル7,249
9エムハートツーリスト6,082
参考ジャルパック(21/3)55,559

オンライン旅行会社

順位企業名収入高
(百万円)
1アドベンチャー36,239
2エアトリ17,524
3オープンドア1,201
参考リクルートホールディングス2,871,705
参考Zホールディングス1,567,421
参考楽天グループ783,268

(帝国データバンク『業界動向2023-Ⅰ』より)

旅行業界の採用市場

旅行会社の業務

旅行会社には、商品の企画から仕入れ、オペレーション、販促、各店舗で商品を提案・販売する業務などがあります。

国内・海外旅行のアウトバウンド業務

アウトバウンド業務では、日本に住んでいる人を対象に日本国内や海外旅行の商品を販売しています。

訪日外国人旅行のインバウンド業務

インバウンド業務では、海外に住んでいる人を対象に、日本への旅行を提供しています。

関連業務

  • 企画業務
    旅行者のニーズを調査し、商品企画を担当
  • 仕入業務
    サプライヤーとの契約、料金決定などを担当
  • オペレーション業務
    実際の予約や海外旅行に必要な旅券や査証などの書類作成などを担当
  • 販売促進業務
    販売支援のための広告宣言やパンフレット、チラシの制作、Webサイトの管理などを担当

旅行業務取扱管理者

旅行会社の日常業務は、資格がなくてもできますが、業界内でのキャリアアップには資格取得が必要になってきます。

旅行業務取扱管理者は旅行会社の支店や営業所に1人以上置くことが法律で定められている国家資格です。

旅行業務取扱管理者は新卒より転職でアピール材料になる資格といえます。

「異業種からの転職」であれば、実務経験がなくても一定の知識はあることを示すことができます。

旅行業界でキャリアアップするには早めに取得しておきたい資格です。

受験資格

制限なし

試験科目

  • 国内
    ①旅行業法及びこれに基づく命令
    ②旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
    ③国内旅行実務
  • 総合
    ①②③の科目プラス海外旅行実務
  • 地域限定
    ①②③のうち②航空運賃約款③全国地理及び航空運送関係を除く

合格率

  • 国内:30~40%
  • 総合:10~20%
  • 地域限定:45%程度

取得の難易度

独学でも観光地理などの分野は対応できますが、旅行業法や運賃計算などは実務経験がないと難しいかもしれません。

旅行業務取扱管理者の資格を取るには
旅行業務取扱管理者は旅行業務を扱う営業所に必要とされる資格です。旅行業界で唯一の国家資格である旅行業務取扱管理者についてご紹介します。

旅行業界の求人・転職

基本的に旅行業界の採用市場は活発で、関連業界からの転職も目立ちます。

ホテルや航空会社、観光会社などさまざまなキャリアが見られます。

ネット販売を強化するため、店舗スタッフから電話やメールによるコールセンタースタッフを増員する旅行会社が増えています。

新型コロナの影響で業績が悪化した企業では、リストラの動きも見られるようになっています。

旅行・生活関連サービス業の給与

区分20~24歳25~29歳42.7歳
(平均)
所定内労働時間168時間168時間165時間
残業2時間8時間7時間
月収228,100円249,800円298,300円
年間賞与等151,300円234,500円384,200円
年収2,888,500円3,232,100円3,963,800円

(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より)

まとめ

業界内や関連業界での転職が活発な旅行業界。

経験者優遇の傾向があります。

業界で働く若手社員にとって、旅行業務取扱管理者は20代で取得する資格という認識があり、転職だけでなく、キャリアアップにもプラスに働く資格です。

実務経験を重視する業界ですので、資格を取得するだけでなく、どのように活用するかで活躍の場が広がります。

旅行・観光業界で有利なおすすめ資格
旅行・観光業界の転職やキャリアアップでは専門性を証明できる資格や文化・歴史に精通していること、語学力などがアピールになります。
業界天気図一覧(2025年)
採用市場と密接に関わる企業の業績。業界の動向は転職・就職活動を進めるうえで、重要な情報のひとつです。2025年度の主要業界天気予想を一覧にしました。
生活関連サービス業とは(種類と分類)
生活に関連したサービスには、クリーニングや理美容・サロンなどの事業があります。日常生活をよりよく過ごすためのサービスが分類されるといえます。

 

【参考】
・観光庁ウェブサイト
・日本政府観光局(JNTO)ウェブサイト
・総務省「日本標準産業分類」
・日本経済新聞出版『日経業界地図2023年版』
・東洋経済新報社『四季報業界地図2023年版』